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2020.02.10 Mon ブラン弦楽四重奏団・京都市立芸術大学で出会った4人の旅立ちのリサイタル

 1月17日のヴァイオリニスト・木田雅子さんのチャリティコンサートにつづき、2月2日は阪急大宮駅のJEUGIA大宮アマデウスサロンで開かれたブラン弦楽四重奏団のリサイタルに行きました。
 ブラン弦楽四重奏団(Blanc Strings Quartetto)は、京都市立芸術大学で出会った4人、勝森菜々(Vn)、辰巳眞子(Va)、舘野真梨子(Vc)、田尻彩乃(Vn)が2016年10月に結成したカルテットです。1年生のときに「第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawa」オーディションに合格、翌年の同演奏会(2017/2/11)に出演。2年生の夏には「第13回ルーマニア国際音楽コンクール」でセバスチャン賞を受賞、 ルーマニア・シビウで開催される音楽セミナーに招待されました。3年生では「第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクール&セミナー」に参加。「ブラン」はフランス語で真っ白という意味で、純粋な姿勢で音楽を学ぼうという想いが込められているようです。
 カルテットとしても個人としても、音楽の道をめざしてひたすら努力してきた4年が過ぎ、graduation recital(卒業リサイタル)として開かれた今回のリサイタルが、公式に4人が演奏する最後の公演とのことでした。
 京都市立芸術大学の学生さんたちの卒業リサイタルに行く機会など、通常はないはずなんですが、第二ヴァイオリンの田尻彩乃さんのお母さんに地域のうたごえサロンでお世話になっていて、娘さんも時々参加してくださる関係で案内をいただいたのでした。

 この日のプログラムは次の3つの楽曲でした。
1. グラズノフ「5つのノヴェレッテ op.15 1.スペイン風」
2. スメタナ弦楽四重奏曲第1番 ホ短調「わが生涯より」
(休憩をはさんで)
3. ドヴォルザーク「弦楽四重奏第12番作品96 アメリカ」

 もとより、クラシックを聴く力のないわたしなので感想を述べるのは心許ないのですが、おそらく専門的に聴けばまだ稚拙な演奏だったのかも知れないですが、若い彼女たちの演奏には今まで聴いたプロの演奏家の完成された演奏とはちがう瑞々しくも凛としたものがありました。
 一曲目は少し緊張していたのかやや硬くぎこちなく感じました。二曲目からはお互いの演奏を聴きながら演奏する余裕が生まれ、休憩をはさんだ三曲目は4人の心が重なりあった素敵な演奏でした。
 私の心に響いた演奏はスメタナの「弦楽四重奏第1番~わが生涯より」でした。というのも、スメタナの「わが祖国」は有名で、わたしのようなものでもレコートで聴いたことがあるのと、この楽曲が、一時は革命運動にも参加したスメタナの、オーストリア=ハンガリー帝国によって支配されていたチェコの独立国家への強い願いから生まれたことをおぼろげながら知っていたからでした。
 弦楽四重奏曲第1番 ホ短調「わが生涯より」は、「わが祖国」と同じ時期の1876年に作曲されました。1874年には失聴の他、健康状態の悪化に苦しむ一方、さまざまな軋轢はあったものの、チェコ国民楽派を代表する音楽家としてその名声も高まっていきました。
 わたしは「わが祖国」という壮大な音楽と時を同じくして、彼の生涯を象徴する半自叙伝の様相を持つ弦楽四重奏がつくられたことはとても感慨深いと思うのです。
 52歳のスメタナが人生の節目節目を邂逅し、日記を書くように決して幸せとは言い難い自分の人生を音楽に刻印していく様子はある意味とても自虐的で残酷でもあり、一方で稀有な宿命を背負うことになったわが生涯を「わが祖国」の極私版として、聴く者の心を切なく締め付けるのでした。
 第一楽章・ヴイオラの切ないメロディーの反復がスメタナの生涯を暗示するように始まり、第二楽章・楽しかった青春の日々、第三楽章・妻となる少女との初恋と幸福な思い出、そして、第四楽章では音楽家としての名声と共に仕事が軌道に乗り始めた最中に耳が聞えなくなってしまう…、第一楽章の不安が現実のものとなります。一抹の希望もむなしく深い絶望が第一楽章のメロデイーを呼び起こします。
 それから8年後、眩暈や痙攣、言葉や記憶の喪失と共に鬱や不眠、幻覚などの症状に苦しみながら、精神病院で亡くなることとなるスメタナの「わが生涯」に宿るものは何だったのでしょうか。
 桜の庄兵衛ギャラリーでヴィオラ奏者の吉田馨さんが演奏してくれたブラームスの「ヴィオラソナタ第1番ヘ短調作品120-1」もまた、ブラームスが亡くなる3年前の作品で、報われぬ恋や友情に彩られた人生を振り返り、死と隣り合わせに生きようとする切ない情熱にあふれた楽曲と感じましたが、スメタナの「わが生涯」も彼の早すぎる遺言のように思います。
 わたしは音楽の道のとば口に立ち、巣立っていく22歳の4人の女性が52歳のスメタナのたどった人生をかみしめるように演奏する、その若々しい音楽がスメタナの邂逅と奇妙にマッチングし、スメタナのかなしみや絶望をいとおしく掬い上げながら音楽の墓碑銘に可憐な花束をささげる姿に感激しました。
 彼女たちの音楽人生は始まったばかり、音楽を愛し音楽に導かれる世界中の彼女彼らとともに、彼女たちが今はばたく瞬間に立ち会えたことをとてもうれしく思いました。

Dvořák / String Quartet "American(アメリカ)" 第1楽章 Blanc String Quartet (ブラン弦楽四重奏団)

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