fc2ブログ

ホーム > 障害者事業所制度

2020.12.25 Fri 豊能障害者労働センターのリサイクル事業は、箕面市民のコモンウェルス(共的な富)

 ずいぶん前になりますが、豊能障害者労働センターの障害者スタッフとその親御さんなど、箕面の友人たちと滋賀県の余呉湖へ旅行に行ったことがあります。その時、わたしはすでに労働センターを退職し、妻の母親と同居していました。妻の母親は車いすを利用していて、そのうえ家のガレージで妻が始めたリサイクルショップが思いのほか繁盛し、母親もわたしたちも長い間旅行に行けないのを見かねて、箕面の友人たちが誘ってくれたのでした。
 その時に、豊能障害者センターと一般企業の違いを教えてほしいと言われました。福祉作業所との違いもふくめて、福祉行政と労働行政の問題から話すとますますわからなくなりそうで、どう説明したらいいか迷いました。
 豊能障害者センターは一般企業から排除された障害者が自ら経営を担いながら、障害者の就労を進めるためだけに事業をします。それをつきつめれば一般企業では人件費は経費・コストで、もちろん収益は人件費を含むコストを差し引いて計算されますが、豊能障害者労働センターでは障害者の人件費は最終的な利益で経営成果になるのです。
 友人たちはそれぞれ一般企業で働いていて、中には経営陣に参加しているひともいたのですが、「あっ、そうか。やっとわかった」と言ってくれました。人件費をコストではなく、経営成果ととらえることは、豊能障害者労働センターを含む箕面の障害者事業所制度の根幹にかかわることなのです。
 もともと、豊能障害者労働センターは1981年の国際障害者年を機に、障害者市民の奪われた人権を取り戻し、障害者が当たり前の市民として受け入れられる地域社会をめざす市民運動の中から誕生しました。そして、障害者の就労が困難な現実を変えていくために、市役所の福祉の窓口に応援してもらえないかと話をしに行きました。すると「素晴らしい取り組みだけど、それは福祉ではありません」という返事が返ってきました。「障害者の就労問題を考えるのは福祉ではなく労働行政で(当時は)、市町村行政ではないんです」。
授産施設(現在の障害者就労継続支援事業A型、B型)では、指導するされるの関係であっても一緒に仕事をしているのに、健全者職員は指導員として給料を得て、障害者はそのころで月1万円ほどの工賃(授産分配金)しか手に入らないのはおかしいのではないか。
 障害者も健全者も指導するされる関係ではなく、給料を分けあってみんなで助け合って給料を分け合い暮らしていこうという考え方はまっとうだと思うのですが、その当時も今も、障害者を保護訓練指導する健全者の給料やその他の管理費にしか福祉助成金は出ないだけでなく、そのお金を障害者に配ると違反行為になります。
 従来の福祉施設ではない豊能障害者労働センターは、当初は行政からの助成なしで活動をはじめました。脳性まひで車いすを利用している2人の障害者を含む5人で粉せっけんの配達から始め、たこ焼き屋から衣料品の店、お好み焼きと定食の店、ファンシーグッズの店、箕面市広報の点訳、そして一大事業となったリサイクル事業とカレンダーやTシャツの通信販売、国際NGOと自然災害の被災地と人たちとの提案型コラボ商品開発、畑事業などなど業態を拡大、変化させながら箕面市内を中心とした地域社会に認知され、現在では45人の障害者スタッフがどの事業においても働くだけでなく、事業経営に参加しています。
 1990年の箕面市障害者事業団の設立を経て、ほかの障害者事業所も合わせて障害者の就労を進めるためだけに活動する障害者事業所制度が誕生し、現在に至っています。
 前回の記事でも書きましたが障害福祉制度としては独自かつ画期的な制度で、国の労働政策が変わらない中で箕面市ひとりが背負うのが限界だというのも理解できないわけではありせん。しかしながら障害者事業所の活動は障害者が運営をにない、地域の生活の場のただ中で市民と直接つながることで生まれる助け合い経済は、生活支援の事業所や福祉的就労の場では実現しない社会的な波及効果を生んでいることもまた事実なのです。
 その波及効果を、例えば豊能障害者労働センターのリサイクル事業について検証しようと思います。
 リサイクル事業においては市民からのリサイクル商品の提供にはじまり、それらを仕分けし、値つけをし、それを各店舗に展示し、販売するプロセスのどの分野においても障害者スタッフがその役割を果たし、売り上げ金は4000万円に達しています。
 その波及効果は
1. 市民からの提供品は日常で使用せずゴミとして放出されるものも多く、リサイクル事業はごみ収集の軽減とデッドストックを市民経済によみがえらせる二重の効果がある。
2. 市外からの提供品も数多く、それらは送料まで提供者が負担する良質の品物で、換金率の高い品物が多く、収益に寄与している。
3. 四か所のお店と移動販売と、今年は断念したが春の大バザーなど、市民がもたらした売り上げは4000万円にのぼる。市民がゴミになってしまう寸前の品物を提供し、それらの品物を市民が買うことで生み出した4000万円は、市民参加の事業で「無」から生み出されたものである。
4. お店や倉庫の家賃も総額500万円を越えていて、障害者の事業所への協力を惜しまない地主、家主に還元している。
5. 以上のことから、市民の貴重な税金が投じられた障害者事業所への助成金は、単なる障害者の賃金を保障するだけでなく、リサイクル事業への参加によって税金とはちがう市民の直接投資により地域経済の原資を生み出す。

 リサイクル事業で動く大きなお金は、どこから生まれるのでしょう。ここには一般経済にはない、多様なかけがえのないひとびとが共に働き、共に生きる地域経済、顔の見える助け合い経済がもたらす果実が小さいながらも実を結んでいます。
 箕面市行政は福祉施策として障害者の就労をすすめる障害者事業所への助成金を出していますが、直接障害者に給付される個人給付や生活支援の助成金と違い、障害者事業所への助成金はそれ自体が社会的投資の意味を持っています。事業所の経営主体でもある障害者はその助成金をそのまま受け取るのではなく、自らの事業資金として市民社会に投資します。その事業によって市民はデッドストックを地域経済に生かし、ごみを減らし、その商品を買うことで障害者の給料をつくりだすのです。その事業にかかわるコストは障害者の給料の他、共に働く健全者の給料までつくりだし、さらには家賃など地域経済に貢献します。そして、残ったお金はさらに市民事業に再投資されるのです。
 こここから生まれるコストも再投資する事業資金も、行政から出る助成金から生まれた、いわば市民社会全体の富・財産、つまり「コモンウェルス」(共的な富)と言えるのではないでしょうか。
 ここ数十年の間、地域社会の共有財産はことごとく私有化と公的化に奪われてきました。民間委託や民間の活力を生かすといわれる公共政策は私有化されてはいけないものまで、時にはいのちにかかわるものまで私有化され、一方では私的な富から共的な富まで、強力な国家が公的な富として奪ってきました。
 わたしは、箕面市の障害者事業所制度が市民社会の共通の富を生み出し、その富を市民社会に生かす結果になっていることを、リサイクル事業が証明していると思います。
 ただ、残念なのはその大切な富の一部を、障害者の労働施策を遅々として進めない国によって奪われていることです。もし、今自立生活している障害者が別の手段で生活費を得るとすれば、福祉的就労では生活できず、一般企業はやとわないのですから生活保護を受けるしかありません。その金額はかなりのものだと思います。また、家主もまた家賃収入による所得税を国に納めますし、そのうえ、豊能障害者労働センター自身が所得税を収めているのです。
 わたしは、箕面市はこの制度を見直す前に、箕面市の長年の努力を何もしない国が吸い上げることに抗議し、「障害者就労特区」を要求すべきではないかと切実に思います。

web拍手 by FC2

2020.12.20 Sun 民間委託による コスト削減の犠牲になるのは誰か? 箕面市の改革プラン

 新型コロナウイルス感染症はここ冬場に至って世界的に深刻な状況になっています。高齢者としては、ほんとうに早く収まってほしいと思いながら、急ごしらえのワクチン接種には臆病になってしまいます。

 わたしがかつて住んでいた大阪府箕面市では大阪維新の会の新市長が誕生し、早速(仮称)箕面市新改革プランを発表し、コロナ禍により市税収入が減り、財源不足になることから行財政改革を進めると宣言しました。
 その骨子は
改革の柱1 新アウトソーシング計画
改革の柱2 施設の再配置構想
改革の柱3 市有財産の活用
改革の柱4 全事業の点検
改革の柱5 各種団体の見直し
 ということで、公立の保育所や幼稚園の民営化、ゴミ収集の100%民営化、新市立病院の民営化、病院跡地の学校建設の見直し、公共施設の再配置計画、公益財団法人国際交流協会とメイプル財団の統廃合など多岐にわたり、全事業をゼロベースで見直し、障害者団体への助成金もその対象になっているようです。前市長時代の「改革」で持ち直したもののコロナ禍もあり財政が危機的状況であるとその理由を説明しています。
 12月16日に70名ほどの市民が参加し、説明会を開きましたが、その1回とパブリックコメントだけで決定するということですが、多様な市民の声に耳を傾け、丁寧に議論し実行することを強く望みます。
 わたしは財政のことがよくわからないですが、今もなお民間委託がコスト削減の切り札とされていることに大きな違和感を持ちます。古くは中曽根政権に始まり、小泉政権で大きく日本の針路を新自由主義へと舵をとり、安倍前政権へとつづいた自民党政権や大阪維新の会がほこる実績として、「構造改革」や「規制緩和」のもと、民間委託によって公務員の給料の減額や人員削減によってコストが大幅に削減されただけでなく、民間の活力と知恵によってサービスが向上したと言われています。
 それを信じるといいことずくめのようですが、事業委託された企業が公的サービスにかかっていた人件費も人員も減らし、また使い捨てになる非正規のひとをどんどん増やし、結局のところたくさんの労働者の過酷な犠牲の上にコスト削減が成り立っていて、イノベーションとかAI革命とかDXとかのカタカナ英語にごまかされた「成長神話」の裏側で着々と進められる国内植民地政策に命までも追いつめられていく恐怖を感じます。
 今回の新型コロナ感染症による恐怖はその奥に広がる真の恐怖をあぶりだし、最終段階にまで来てしまった新自由主義の暗闇がとても深いことを教えてくれていると思うのです。
 もちろん、未知のウイルスの脅威と立ち向かうことは様々な失敗や後悔を伴い、無数の犠牲を生み出してしまうことの責をすべて内外の政権や行政に押し付けられるとは思いませんが、民間委託や公的機関の統廃合などで実現したとされるコスト削減の裏側で、目先の成果を求めて削ってはいけないものをけずってしまった医療体制や保健体制の脆弱性がより深刻な事態を招いたこともまた事実だと思います。
 箕面市の「改革」が.箕面市民にとってとりかえしのつかないことにならないか心配です。特に国際交流協会とメイプル財団の統廃合は、これからますます外国人市民が増え、多様な市民社会を共につくりだす拠点として実績豊富で大きな影響力を持ち、たくさんの市民が参加している国際交流協会は地域経済を活性化するものして行政としてさらなる力を注ぐべきで、一方で箕面市独自の市民文化を育ててきたメイプル財団との統廃合はどちらにとってもよくない結果をもたらすと思います。

 それはさておき今回の改革ではわたしが在職していた豊能障害者労働センターなど「障害者雇用助成事業所」(箕面市独自の社会的雇用事業所)への助成見直しも検討されるとのことで、かかわりのあった者として記事を書いておきたいと思います。
 1990年に設立された箕面市障害者事業団の事業対象となる障害者の社会的雇用とは、一般企業への就労を拒まれる障害者は、日中活動のひとつといえる福祉的就労の場ではおおむね3万円以下の工賃(労働の報酬ではなく、就労指導による福祉分配金)で年金と合わせても自立生活を送るには程遠く、その現実を変えるために一般企業が雇わない障害者を雇用し最低賃金を保障する福祉事業所に対して助成し、障害者の自立を進めるためのものです。この制度により、たとえば豊能障害者労働センターの障害者スタッフは、近年活動をはじめたグループホームに数多く入所し、親元から自立した生活を送っています。
 この助成制度の最大の特徴は、福祉的就労の場のように障害者を指導訓練するのではなく、共に働く仲間として雇用するだけでなく、その経営に障害者が参加することが求められ、そのうえで最低賃金を保障する事業所としての経営努力と共に、障害者問題など人権・福祉問題の啓発を求めるなど一般.の企業に流用されないようにハードルを高くしています。
 障害者の自立をすすめるために福祉政策として一般就労をこばまれる障害者の雇用を実現する箕面市の試みは当時も今も画期的で、たとえばこの制度のもとで豊能障害者労働センターの障害者スタッフは生活保護を受けなくても親元から独立し、グループホームで自立生活をしているひとが数多くいます。
 ただ、国も時代もまだまだこの画期的な試みに追いつけず、現在でも単独事業になっていて、箕面市は国の予算を獲得するために一見よく似た障害者就労支援継続事業のA型へと移行したいと考えているようで、今回の改革ではいよいよその方向へと舵を切ることになるかも知れません。
 障害者就労支援継続事業のA型は最低賃金を保障する雇用契約を結ばなければならず、箕面市の障害者雇用制度と変わらないように見えますが、障害者事業所の助成は障害者スタッフの給料を保障するためのものですが、障害者就労支援継続事業のA型の助成は他のの福祉事業所と同じように指導員の給料などのための管理費として助成するもので、障害者の所得補償に使用すると制度違反になります。
 つまり、A型事業所では障害者は共に働く仲間として雇用されているのではなく、あくまでも福祉サービスの利用者でしかありません。この違いはとてもおおきなもので、もちろん事業所の経営に参加することも、共に働く仲間としての身分保障もありません。
 もともと、ひとりの市民として自立生活を送るために所得を得る権利を保障するための障害者雇用制度は、障害者を市民生活の場から切り離された領域に閉じ込めることになる障害者就労継続事業A型とは制度の方向が真逆で、国のお金を得るためにA型へと移行すれば、1990年代から継続してきた箕面市の画期的な試みはここで終わってしまうのです。いわゆる「世を忍ぶ仮の姿」として旧来の福祉制度を受け入れたとしても、結局は制度がめざす「器」がかわれば、必ず器通りになることは今までの歴史が証明してきたことです。
 ともあれ、この制度は人権福祉施策として継続してきたもので、今回の「改革」も福祉施策の見直しという次元で決定されることでしょう。しかしながら、この福祉制度が地域経済にもたらしたものは計り知れず、最近話題の渦中にある斎藤幸平氏も提言する「コモンウェルス」(共的な富)、私的資源でも公的資源でもない富を生み出す市民事業の視点から箕面市の障害者雇用制度と豊能障害者労働センターの冒険の足跡を、次回の記事にしたいと思います。

(報道資料)「(仮称)箕面市新改革プラン」について

箕面市における障害者事業所が行う社会的雇用の今後のあり方について 最終報告
web拍手 by FC2

2011.10.19 Wed 箕面の社会的雇用制度が読売新聞に紹介されました。

 10月18日の読売新聞夕刊に箕面の社会的雇用制度と豊能障害者労働センターが大きく紹介されました。NHKの「きらっと生きる」と朝日新聞でも大きく取り上げられましたが、一連の報道には自立支援法の廃止に伴う障害者総合福祉法制定のための障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において、同部会の委員である箕面市長の提案により、箕面の社会的雇用制度を国の制度とするかどうかが検討されていることが背景にあります。
 このブログでも書いてきましたが、箕面の社会的雇用制度を国の制度にするべきだという箕面市長の提案はまったく同感です。
豊能障害者労働センターが活動を深めて行くほど、この制度のもとでは生活保護を必要としないか、必要としても保護費が減額され、またリサイクル事業の広がりによる5つの店舗と2つの倉庫の家賃支払い、所得を得た障害者スタッフの消費と、どれをとっても直接もしくは間接的に国の福祉コストの軽減と税金という収入増が実現します。
箕面市が障害者の生活と労働を確立するために投入する資金が国の生活保護費を減らすだけでなく、そこから生まれる経済的な利益までも国に吸い上げられる結果となる矛盾を解決するためには、この制度を国の制度にする以外にはありません。さらに、この制度が国の制度になることにより、一般企業への就労をこばまれてしまう障害者が福祉的就労に押し込められ、経済的自立が進まない積年の課題の解決の一つとしても有意義なことです。

 朝日新聞もそうでしたが、今回の読売新聞の記事はこの制度のことをきっちりととらえていて、わかりやすい内容でした。
 一般就労が困難な障害者が3割以上いることや、中見出しにも大きく書かれていますが、障害者が経営に参加していること、そして労働保険に加入していることなどが制度の対象になります。そして、図で説明されているのですが、一般企業への就労でもなく福祉的就労(作業所、授産施設など、生きがいづくりや訓練的な側面が多い)でもない、中間的就労の場として社会的雇用の場はあり、障害者と健常者が対等な立場で最低賃金を保障する場として紹介されています。
 その具体的な場として、豊能障害者労働センターのことがとてもくわしく書かれていて、ぜひみなさんにも読んでいただきたいと思います。

 このブログでも書きましたが、箕面市長はこの提案が通らなければ、この制度もこれからも箕面市独自に継続することが困難であるとブログに書いていますが、わたしはこの制度が健全者の労働市場にも適用すれば、障害者に限らず就労の困難な人々のための画期的な制度としてとてもすばらしいものになると思っています。
 震災以後、被災地をふくめて雇用政策をどうすすめていくのかが問題となる中、アメリカウール街から世界中に広がる反格差社会デモ、ヨーロッパの経済問題と、グローバル化によりわたしたちの日常にすぐ跳ね返ってくる世界の経済危機の中で、この箕面市の制度の底流に流れ、豊能障害者労働センターが具現化している、「そんなに大きな収益がなくてもみんなで助け合って働き、生きていける社会」へのチャレンジは、いま世界中に散在しているようにわたしは思うのです。

2011年10月18日 読売新聞夕刊
web拍手 by FC2

2011.09.06 Tue 箕面市の社会的雇用は「参加の平等」

 台風12号に被災されたみなさんに、心よりお見舞い申し上げます。

 稲葉振一郎・立岩真也「所有と国家のゆくえ」に関して4つの記事を書きましたが、ここでさらに、この議論と箕面市の社会的雇用制度との関係を付け加えたいと思います。
 二人の議論での「結果の平等」としての、最後のセーフティネットが生活保護だと思います。厚生労働省の福祉行政報告例によると、生活保護所帯数は1980年の746,997世帯から2010年12月には1,435,155世帯と、約2倍になっていて、生活保護受給者数は200万人となっています。支給総額も2009年には3兆円を越えていて、震災以後さらに長期にわたって増えることが予想されています。
 震災の影響もあり、企業がますます海外に生産拠点を移そうとする中で、今後被災地の復興需要に期待されるものの、雇用の確保は短期的にも長期的にもとても大きな問題となっています。雇用が確保されなければ、最終的には生活保護に依存するしかなくなります。一方で国の財政が破たん寸前にまで追い込まれている現実から、支出の削減の先に増税ありきかが政治問題となっています。
 ともあれ、これからの支出は対費用効果がきびしく検討されるべきだということは、わたしたちがかねてより主張してきたことでした。
 わたしたちと箕面市が共同でつくり、育ててきたと言える社会的雇用制度は、「機会の平等」と「結果の平等」の間に、「参加の平等」という理念をかかげ、従来は在宅か収入の伴わない福祉的就労の場に行かざるを得なかった重度といわれる障害者の労働への参加を支援する画期的なものと自負しています。この制度は一般就労と福祉的就労の谷間を埋める制度とされていますが、実際の要綱を見ると、障害者の経営参加が義務付けられ、また障害者の生きる権利を市民に啓発することも義務付けられています。
 この制度をつくるにあたってそのモデルになった豊能障害者労働センターでは障害者スタッフはすべて経営会議に参加する権利をもっているだけでなく、7つあるお店の障害者スタッフはその経営に参加しています。
 立岩さんたちの議論の中ですら、たくさんできるひと、少ししかできないひと、まったくできないひと、という分け方で労働を語っていますが、わたしたちの現場ではそんなわけ方自体がとてもナンセンスで、仕事はもともと助け合ってするもので、だれかとだれかを比較することなどは無意味なのです。
 ですから、これもよく言われる生産性とか経営成果とか対費用効果のとらえかたも、一般企業とはまったくちがいます。たとえば一般企業では人件費はコストで、そのコストに対しての経営成果から対費用効果を計算します。それに対してわたしたちは、人件費とは障害者スタッフが獲得できた経営成果で、たいせつな利益と考えています。
 つまり、まず第一に障害者の人件費を生み出すために豊能障害者労働センターは活動していて、どれだけの障害者スタッフがふえつづけ、どれだけの賃金総額を生み出すかが経営成果をはかる物差しなのです。そのことは、箕面市の社会的雇用制度の根幹にかかわることでもあるのです。ですから、箕面の社会的雇用制度はあきらかに従来の福祉制度、保護・指導・訓練とされる福祉制度からは大きく逸脱していて、だからこそ国の制度にはないのです。
 その結果として、この制度の運用による障害者事業所の障害者スタッフは生活保護を受ける必要がなくなります。障害者年金と障害者事業所からの給料で、自立生活できる所得を獲得することができるのです。
 いま、箕面市がこの制度を国の制度にと提案しているのは、とても意味のあることだと思います。現在は箕面市が助成金を支出していますが、そのおかげで国は生活保護費を支払わなくてもいいというねじれ現象になっていますが、国の制度として整合性をすすめると、この制度は健全者の雇用の確保にも適用できる広がりを持つと思います。
 この本の中で稲葉氏が報告していますが、アメリカ合衆国のスラム住民であれば、絶対的な所得水準において大半の発展途上国住民を上回るが、彼らの平均寿命はしばしば途上国のそれを下回るそうです。その意味では単に経済成長によるパイの増大だけではだめで、日本社会における相対的貧困の問題についても湯浅誠氏の指摘にありました。
 箕面市の社会的雇用制度は、北大阪の小さな町の小さな制度ではありますが、これからの日本経済のあり方、社会保障のあり方を考える意味で、「参加の平等」を保障し、支援することで、社会保障としても雇用政策としてもコストパフォーマンスの高い政策として、国の制度に位置づけられることを切に願います。
web拍手 by FC2

2011.06.22 Wed 箕面市の社会的雇用の記事についての確認と説明

 箕面市の社会的雇用についての記事に関して、誤解が生じないように確認と説明をさせていだきます。

 まず最初にこのブログは運営者の個人ブログで、ここでいう「わたしたち」は、豊能障害者労働センターを意味するものではありません。あくまでも「わたし」の派生語として「わたしたち」と使用していますので、「わたし」と読んでいただいても差支えがありません。
 このブログの文責は運営者にあります。

 つぎに、運営費のところで健全者の給料が低いといいましたが、正確にいうと、社会的雇用の場での障害者の労働、行動を保障するための介護支援は必要で、それが生活支援サービスにくらべてあまりにも少ないのではないかという意味です。制度的には「職務遂行援助者」に対する支援の中に、「介護サービス」がまったく入らず、一般企業と同じ扱いになっていて、社会的雇用の場は一般企業への就労を拒まれるひとたちの就労の場であるなら、当然「介護」をふくめたものとして位置づけられなければならないのではないかと思うのです。

以上です。
web拍手 by FC2