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2018.08.21 Tue 「平和は夢に過ぎないのではありません。平和は骨の折れる努力なのです。」 映画「コスタリカの奇跡」

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 8月19日の「コスタリカの奇跡」上映会は2回上映で合計80人の方々のご参加を得ました。直近になって毎日新聞と朝日新聞で紹介していただいたこともあり、問い合わせの電話も数件ありましたので少し手ごたえはありましたが、なにぶん交通の便がよくないので心配しました。
 しかしながら今回は約半数が能勢の住民で、また隣町の豊能町からも10人ほど来ていただき、その他池田、箕面、尼崎、猪名川町、川西、大阪市など近隣の町からも、また遠くは京田辺市、芦屋市、河内長野市からもご参加いただきました。ありがとうございました。
 1948年に軍隊を解体したコスタリカの70年という年月の間、ニカラグアとの国境紛争や内乱など、危機は一度や二度ではなく、時の政権が常備軍を持つことを選ぼうとした時もありました。そのたびにコスタリカの人々はそれを否定し、政府もまた国連などの国際機関を通じて、さらにはその加盟国に直接働きかけ、武力ではなく話し合い外交によって危機を乗り越えてきたことを、そして不要になった軍事費を社会福祉や教育に注ぎ、多くの人々が豊かさを実感できる社会をつくってきたことを映画は丁寧に描いています。

 わたしたちの国もまた、「二度と戦争はしない」という切ない誓いを憲法9条で宣言した数少ない国の一つですが、戦後すぐから始まった冷戦のさ中、1950年の朝鮮戦争勃発により、アメリカはアジア地域の共産化をおそれ、日本に警察予備隊をつくらせました。後に1952年に保安隊、そして1954年に自衛隊に改組されます。
 この頃からでした。いつの間にか国(自分たち)を守る軍隊を持つことに賛成するひとびとが増えてきました。子どもだったわたしは、戦前戦中と日本軍が大陸を侵略することから悲劇がはじまったことを知りませんでしたが、学校で学ぶ民主主義や平和主義とは真逆の、アメリカの武力の傘に入り自らも武力を持つことでしか平和は保てないと教えられたのでした。「話し合いで紛争を解決するべき」とか、「憲法にも武力を持たないと書いてあるやんか」と口答えをすると、きまって「そんな甘い考えは学校だけにしとけ」とか、「お前ら戦争を知らんからそんな理想をいうんや」と、「殴られたら殴り返す。目には目を」とする武力を持つことが現実的で、憲法の平和主義と武力のダブルスタンダードが本音と建て前となっていきました。
 「軍隊がなくて、どこかの国が攻めてきたときどうするの?」という問いに対して、実はコスタリカでは国家の非常事態の際には国会議員の3分の2の賛成投票により、徴兵制実施及び軍隊の編成権限が大統領に与えられています。また、警察の武力を軍事力とみなし、コスタリカは非武装国家ではないという意見もあります。
 しかしながら、いざという時に軍事力を持つことを憲法に定めながら実際には軍事力を持たず、国際法に基づく外交努力によって紛争を解決するというのがコスタリカの国家戦略なのです。それは憲法で軍事力を持たないことを明記しながら、実際には自衛のための軍事力を強化し、いまや集団的自衛権のもとで「戦争ができる国」となった日本と対照的です。
 同じ時代にそれぞれの理由で軍隊のない国をかかげ、70年の時を歩んできたコスタリカが日本と真逆の歴史をつくりえたのはなぜなのでしょう。この映画はそのことを丁寧に描いたドキュメンタリーで、軍隊を持たないと国を守れないとアメリカの傘に入り、中国や北朝鮮と軍事的に対峙する東アジアの軍拡競争の端っこで、軍事予算を増やしてはアメリカの武器を買い求めるわたしたちの社会を見直すきっかけを用意してくれる貴重な映画だと思います。
 映画を観終わってあらためて強く感じることは、わたしたちの国では軍隊を持たないで国を守るなんて言うのは甘い夢想やユートピアとされてしまうのですが、コスタリカでは隣国ニカラグワとの国境紛争をはじめ何度か再軍備を検討されながらも非武装を選び、国際法と外交によって紛争を収める不断の努力によって平和を希求する極めて現実的な政策だということです。
 そして今、コスタリカもまた大きな危機を迎えていることもこの映画は伝えています。グローバリゼーションの嵐の中で社会保障の充実だけでは追いつかない格差の問題はわたしたちの国が直面しているもので、それはまた世界が直面している問題なのだと思います。その上にラテンアメリカ固有の麻薬取引の問題がのしかかっています。
 コスタリカに学ぶべきことはたくさんあるものの、同時にグローバリゼーションによって社会の基盤を破壊されていく世界のひとびととの海の底を渡るネットワークともいうべきつながりから、暗闇の向こうにひとすじの「希望」が見いだされるのかはこの映画は教えてくれません。それは映画を観た後の、世界市民としてのわたしたち自身にゆだねられるのだと思います。

「平和は夢に過ぎないのではありません。平和は骨の折れる努力なのです。平和はわたしたちの誰もが選択し、忍耐強く保持していかなければならない道。それはわたしたちが周囲の人々との小さな日毎のもめごとを平和的な方法で解決していくことなのです。平和はわたしたち一人ひとりから始まるのです。」
コスタリカ元大統領オスカル・アリアス・サンチェス(1987年ノーベル平和賞授与)

9月8日(土) 箕面グリーンホールで上映会があります。
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