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2017.08.23 Wed わたしたちにとって8月は慰霊と反省と不戦の誓いと、静かな勇気を耕す季節。NHKの戦争関連放送に想う。

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 日本は8月15日を終戦の日としていますが、他の国ではポツダム宣言による降伏文書に調印した1945年9月2日を終戦の日としているところが多いようです。
 しかしながら、沖縄戦から8月6日の広島原爆投下、8月9日の長崎原爆投下を経て、日本人にとっては8月15日は戦没者を慰霊し、二度と戦争をしないと誓いをたてた特別な日なのだと思います。
 戦後生まれのわたしにも天皇の玉音放送の映像と「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」という言葉が刷り込まれました。
 しかしながら玉音放送の全文を読むと、国内外のおびただしい数の死者と甚大な被害をもたらした戦争責任には触れず、アジアに進出・侵略する戦争を始めたのは欧米からアジアを守るためだったと書かれています。そして敵は新たに残虐な原爆で罪のない人々を殺傷し、このまま戦争を続け民族の滅亡を招くようなことになれば、どのように歴代天皇の霊に謝ることができようか、ゆえに国体を守り、忠義で善良な国民の真心を信じ「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」、ポツダム宣言を受け入れたという内容です。

今年のNHKの戦争特集番組は例年より多く、また過去の記録をさらに掘り起こし、一歩踏み込んだ深い内容の番組になっていました。その中で特に5本の番組が印象に残りました。

「本土空襲 全記録」と「なぜ日本は焼き尽くされたのか~米空軍幹部が語った“真相”」
 一本は、戦闘機に装備され機銃を撃つと自動的に作動する「ガンカメラ」がとらえた本土空襲のすさまじさが、あと一本は当時独立組織ではなかったアメリカ空軍が空襲の「成果」を上げるために繰り返した経緯が克明に描かれていました。2本の番組に共通して、米軍がなぜ一般市民を焼き殺すような空襲、さらには原爆投下まで平気でできたのかが検証されていました。
 空軍による最初の空襲はB29に最先端の機械を装備し、東京近辺の中島飛行場に照準を合わせたのですが命中しませんでした。サイパン攻略後、サイパンから陸軍の爆撃機が中島飛行場の爆撃に成功したため、追い込まれた空軍は焼夷弾による無差別爆撃へと突き進んだのでした。
  「日本人は竹やり訓練をしているから、全員を兵士とみていい」という、まったく論理性のない根拠でしたが、勝利目前とはいえアメリカ兵の犠牲者も数多く、日本と日本人に復讐せよというアメリカの世論も後押ししたといいます。とにかく人が集まっている鉄道列車、駅舎、学校などを爆撃し、今回の調査で犠牲者の数が45万人となっていました。
 空爆に参加した元兵士の中には「非人道的だった」と後悔するひともいるものの、原爆投下も含めて戦争を終わらせ、犠牲者を減らしたとする意見が多いと伝えていました。

「樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇」
 北海道の北に広がる大地、サハリン。かつて「樺太」と呼ばれ、40万人の日本人が暮らしていました。この樺太で終戦後も7日間にわたって戦闘が続き、住民を巻き込んだ地上戦が行われていたことはほとんど知られていませんでした。犠牲者は5千人とも6千人とも言われ、その人数は今なお正確にわかっていません。
 ポツダム宣言受諾後にもかかわらず、大本営の通達を無視した札幌の司令官が、戦闘の継続を命令します。しかも、沖縄戦で民衆が犠牲になることで本土決戦を避けることができたとし、北海道を守るためにひとびとを強制的な義勇軍としてロシア軍の前に差し出したのでした。

「731部隊の真実 ~エリート医学者と人体実験~」
 「731部隊」とは、1936年8月に、関東軍防疫給水部本部の名称で発足した陸軍の秘密部隊の通称でした。満州で日本軍の細菌兵器の開発を行い、中国人やロシア人を使った人体実験を行っていました。その数2000人とも3000人とも言われています。
 今回NHKが発掘した、旧ソ連・ハバロフスク裁判の音声記録では、部隊幹部らが日本に反発した中国や旧ソ連の人々を「死刑囚」とし、実験材料としていた実態を克明に語っていました。こうした実験を主導していたのが、大学等から集められた研究者達でした。エリート医学者はどのようにして集められ、なぜ人間を実験材料にしたのか。音声記録と数百点の資料から迫りました。
 日本の敗戦と同時に証拠隠滅のために部隊の研究施設は破壊され、被験体の囚人も殺害・焼却されたとされています。この部隊にかかわった研究者の中には戦後、各分野のトップに君臨したひとも少なからずいたとのことです。

「戦慄の記録 インパール」
 日に日に敗色が濃くなる戦局を一気に打開するため、相手の戦力や兵站を無視した無謀な戦いで甚大な死傷者を出し、旧日本軍の体質を象徴的に示したとされる「インパール作戦」。連合国から中国軍への主要な補給路を断つため、ミャンマー(当時ビルマ)からイギリス軍の拠点があったインド北東部のインパールの攻略を目指した日本軍は、この作戦で歴史的敗北を喫しました。  餓死・戦病死した日本兵の死屍累々が並んだ道が「白骨街道」と呼ばれるほど凄惨な戦いの実態はどのようなものだったのか。
 今回、現地取材が可能となり、新たに見つかった資料や作戦を指揮した将官の肉声テープなどから「陸軍史上最悪」とされる作戦の全貌が浮かび上がってきました。
 イギリス軍の攻撃に阻まれ、雨季になると飢えに加えてマラリア、赤痢も大量発生し、日本軍は壊滅状態となりました。
 そこに至るまでに作戦を中止することもなく、「皇軍」が敗北することは断じてないと強行する司令官のすぐそばについていた兵士が綿密な日記をつけていました。
 そこには司令官たちが「5000人殺せば攻略できる」と話しているのを聞き、敵の人数かと思うとそうではなく、つぎ込んだ日本兵が5000人死ねば攻略できるという意味と知り、ひとりひとりの兵士を捨て駒や道具としか考えない彼らの非情さへの憤りを書き残しました。
 7月3日、作戦中止が正式に決定。しかしながら悲劇はそこからさらに続きます。地形の厳しさとイギリス軍の追撃、餓死と病死で退却路は死者で埋め尽くされたといいます。生き残った者は死者の肉を食いながら、次は自分の番だと思いながら歩き続けました。死者3万人のうち、退却時の死者の方がはるかに多かったこの無謀な作戦を命じた将校たちは一足先に退却したといいます。

 これらのドキュメンタリーを見て、国家権力の意志を実行する将校がその理不尽さに気づかないばかりか、その上にまた理不尽な作戦を個々の兵士たちに実行させる時、勝利した国も敗北した国もかかわりなく、まるで今流行りの戦争ゲームに興じるように現実感もなく人の生き死にを決めてしまえる恐怖、戦争の個々の作戦を命じた人が必ずいる一方で、その作戦のために無残にも死んでいった(殺された)無数のたましいに誰一人責任をとれない、責任のとりようもない悲惨に言葉がありません。
アメリカ空軍の兵士が爆撃機の空から地上の動くもの全てを焼き殺したように、
日本のエリート科学者が冷徹に中国人の腕にチフス菌を注射したように、
日本の将校たちがひとりひとりの兵士を仲間と見ず、自分が立てた作戦を実行・成功させるための「殺していい5000人」という捨て駒としか見なかったように…。
 「二度と戦争はしてはいけない、絶対だめだ」と叫び、つぶやきながら戦死者の慰霊にこうべをさげる一方で、「戦争だから仕方なかった」、「だれの責任でもない」という言葉でこの戦争を説明してはいけないのだと思いました。
 過去形で戦争が語られる今、北朝鮮をめぐる問題ではいつのまにか日本はアメリカ軍の作戦の前線に位置し、迎撃態勢を担うようになっています。日本にとっての本来の抑止力とはアメリカの圧倒的な武力をちらつかせて北朝鮮の戦意を弱めることにあると思うのですが、今や北朝鮮への抑止力はアメリカにとってしか有効ではなく、反対に日本と韓国は最前線で北朝鮮の武力行使の標的になってしまう危険にさらされるのではないでしょうか。
 わたしたちが実際の武力衝突がいつおこるかわからない恐怖を募らせる時、安全な場所で戦争ゲームにふけり、いざとなれば武力行使でたくさんのいのちを奪ってしまうこともやむを得ないとして、アメリカと一緒に北朝鮮に「圧力」をかける以外の道を選ばない日本の政治家の姿は先の戦争の日本軍の司令官たちとどこが違うのでしょうか。
 先の戦争への反省から出発し、二度と傷つけられることも傷つけることもなく、たったひとつのかけがえのない命が理不尽に奪われることのないように、とにかく話し合いに話し合いを重ね、ともに解決していくことをわたしたちは望みます。
 今回のNHKの複数の番組を観て、先の戦争の時に国が守ろうとしたのは明治政府以来の天皇制を中心とした「国体」であって決して国民ではなかったことを、それどころか兵士や一般市民を盾にして見殺しにしてでも「国体」を守ることだけを考えていたことがさらなる死者の数を積み重ねたことを改めて知り、今同じ過ちを繰り返そうとするこの国が暴走を思いとどまり、平和を願うたくさんの人々の声に耳を傾け、紛争解決を武力に求めず、戦後72年が新たな戦前元年にならないようにと切に願わざるを得ません。

小室等「死んだ男の残したものは」谷川俊太郎作詞・武満徹作曲

カルメン・マキ「戦争は知らない」寺山修司作詞・加藤ヒロシ作曲

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