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2017.08.16 Wed 島津亜矢と平原綾香とエレファントカシマシ 7月18日の「うたコン」

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 このところ島津亜矢が出演する音楽番組が多くて、なかなか感想を書くのが追いつかないのですが、前回の「新BS日本のうた」の島津亜矢特集の一週目の後の7月18日に放送されたNHK総合「うたコン」から、思ったことを書いていこうと思います。
 この番組は前身の「歌謡コンサート」の流れから視聴率は週に一回の放送では一番高く、9パーセントから10パーセントを維持しています。しかしながら中高年層の演歌ファンが多く、今まで聴きなれなかったポップスのシンガーやバンドの出演が増え演歌が少なくなったことと、バラエティー化が進み、近年同じような構成ですこぶる評判の悪い紅白歌合戦とともに厳しい感想が寄せられています。
 演歌・歌謡曲とポップスを融合させ、そこから新しい日本の歌をつくりだそうと始まったこの番組の評価はもう少し時間を必要としていますが、島津亜矢にとってはとてもありがたい番組になってきていると思います。
 最近の急激な演歌界の地殻変動により、まるでモーゼが海を割ったように、音楽の神は島津亜矢と彼女につづく若い歌手たちを約束の地へと導く道を開きました。
 それに加えて、若いころから歌い続けてきたポップスの歌唱にもようやく世間の注目が集まるようになりました。
 以前の「歌謡コンサート」ではなかなか出番がなかったのですが、「うたコン」になり、演歌とポップスを融合させるというこの番組のコンセプトにぴったりはまる歌手として、島津亜矢はこの番組での活躍がますます期待されることでしょう。
 その意味ではかつて「BSの女王」と言われるほどBS放送でさまざまなチャレンジを番組スタッフと繰り返したように、地上波で10パーセントの視聴率を誇る「うたコン」が島津亜矢の新たなる挑戦と飛躍の場となることを期待しています。
 なによりも、歌に対する貪欲な探求心に満ち溢れた島津亜矢がポップスの若い作り手や歌い手と共演することで得られるものは、計り知れないものがあると思います。その貴重な縁によって、わたしが長年願っているポップスの作り手による楽曲提供も夢ではないでしょう。

 今回の放送は、また演歌ファンのひんしゅくを買うほどバラエティに富んでいました。なにしろ、番組冒頭の里見浩太郎、氷川きよし、島津亜矢による寸劇と歌ではじまり、5年ぶりに活動を再開したケミストリー、平原綾香、そしてラストに初出場のエレファントカシマシと、若い人に人気のあるミュージックステーションやSONGSでも、また紅白でも絶対にありえない、この番組でなければ実現しない構成でした。
 島津亜矢の出番は冒頭の寸劇のみで、たしかにファンとしてはあと一曲を望んでしまいますが、この日のレンジの広い構成では里見浩太郎、氷川きよしともども寸劇内の一曲でよしとしなければならないのでしょう。
 まして、その一曲が美空ひばりの名曲「関東春雨傘」となれば、文句の言いようもありません。
 「関東春雨傘」は「リンゴ追分」、「津軽のふるさと」の作曲で知られる米山正夫が作詞作曲した1963年の作品で、この年に設立されたクラウンレコードの第一回新譜のトップとして発表されました。クラウンレコードはコロンビアの伊藤正憲、五木寛之の「艶歌」などのモデルとなった馬渕玄三、星野哲郎、米山正夫、北島三郎、水前寺清子を擁し、設立当初はコロンビアとの軋轢も多々あった船出でした。
 美空ひばりや畠山みどりの移籍も噂される中、美空ひばりはデビュー時の恩人でもあった伊藤正憲、「ひばりの佐渡情話」などの収録を担当した「艶歌の竜」こと馬渕玄三、数々の作曲を手がけた恩師ともいえる米山正夫への恩返しの気持ちから、当時は禁じ手といえるコロンビアのトップスターでありながらクラウンの一枚目の新譜「関東春雨傘」をレコーディングしたのでした。
 当時のクラウンは発足直後の社運をかけているようすで歌作りはもちろんのこと、北島三郎、水前寺清子、美樹克彦などの歌い手もひたむきに歌を届けようと必死だったのでしょう、この歌にも美空ひばりをはじめ関係スタッフ全員の切羽詰まった思いがかくれているように思います。
 前年に美空ひばりは小林旭と結婚したものの幸せな結婚ではなく、また芸能生活でも少し陰りがあった頃のようで、一見(一聴)粋のいい歌のようですが、美空ひばりの心中は決して威勢がいいだけでなく、「ぶんながし」という歌詞そのままに、やさぐれた浮世暮らしのはかなさが隠れていたようです。
 この歌は美空ひばりをリスペクトする多くの歌手がカバーしていて、島津亜矢の歌唱も若い頃の歌唱が残っていますが、さすがに元気が良すぎる感があります。今回の歌唱はその時にはなかった中低音の色気があり、メリハリのきいた素晴らしい歌唱になっていました。
 寸劇自体はおそらく稽古の時間が少なかったのか、あまりいい出来とは言えませんでした。もっとも歌番組のアトラクション的要素の大きいコミカルな寸劇では本格的な演技は求められておらず、「へたうま」な感じで笑いを呼ぶぐらいの方がいいのでしょう。
 その中でも歌はともかく、里見浩太郎はさすがでした。「へたうま」な感じもありながら、舞台での立ち姿も立ち回りも存在感がありました。この寸劇は氷川きよしと島津亜矢を共演させるために里見浩太郎をキャスティングしたと思われます。
 この後、今回の放送ではパフォーマンスの高いポップスの歌唱が印象的でした。まずはケミストリーが5年ぶりに復活し、ヒット曲「Point of No Return」を歌い、奇跡のデュオのハーモニーが帰ってきました。
 そして、平原綾香が自身が出演するミュージカル「ビューティフル」から「ナチュラルウーマン」を熱唱しました。いま帝国劇場で上演中の「ビューティフル」はキャロル・キングの半生を描いた名作でトミー賞やグラミー賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカルを平原綾香と水樹奈々がダブルキャストで演じることで話題の作品です。
 平原綾香は歌唱力では文句がないのですが、少し自分の歌に酔うようなところが苦手でした。しかしながら私の住む能勢でのコンサートに行くと、一見華やかな感じで、またそれを自己演出していますが、実は島津亜矢に通じるかなりの努力家で、歌うことに自分の生きるすべてをかけようとする潔さがありました。
 「ナチュラル・ウーマン」はキャロル・キングとジェリー・ゴフィンの作詞・作曲でアレサ・フランクリンが歌った1967年のリズム&ブルースの名曲です。平原綾香のリズム&ブルースの歌唱力は素晴らしいものがあり、わたしはクラシックテイストよりも好きで、今回の歌唱もミュージカルを見に行きたいと思わせる熱唱でした。
 ちなみに、わたしは島津亜矢の感性にはリズム&ブルースやソウルが入っていると思っていて、その中でもアレサ・フランクリンのカバーをぜひ聴いてみたいと思っています。

 最後のエレファントカシマシは今年の3月にライブに行き、「SEKAI NO OWARI 」と共に島津亜矢以外に何度もライブに行きたいと思っているバンドです。
 30周年を迎えるこのバンドについては昔から聴いていましたが、2年ほど前にNHKの「COVERS」に出演し、沢田研二や松田聖子、忌野清志郎のカバーを聴き、大ファンになりました。とくに松任谷由美(荒井由美)の「翳りゆく部屋」は絶品で、いままで苦手だった松任谷由美の歌がようやく身体で感じられるようになりました。
 そんな経験は、島津亜矢を通じて美空ひばりを好きになった時と同じ感覚です。
 ともあれエレファントカシマシは作詞・作曲・歌の宮本浩次のワンマンボーカルバンドに見えながら決してそうではない奥の深いディープでメロディアスなロックバンドです。宮本浩次の何かにとりつかれたように歌を貪り食うボーカルが連発する言葉と音は、今を生きるわたしたちをはげましてくれる応援歌だと思います。
 今回の放送で歌った「風と共に」はNHKみんなの歌の6・7月のうたとしてオンエアされた歌で、40年前に宮本がNHK合唱団にいた時にNHK「みんなのうた」で「はじめての僕デス」を歌った縁で依頼されたものだそうです。
 独特の癖がありますが、宮本浩次というひとの歌心は歌謡曲と路上にあり、この人にも島津亜矢の歌をつくってほしいと思うシンガーソングライターです。

 思いのほか、「うたコン」で長い記事になってしまいました。
 次回は「新BS日本のうた」の島津亜矢特集第二週の中村美律子との共演から書き始めようと思っています。

島津亜矢「関東春雨傘」(1997年)
本文に書きましたが、20年前の歌唱で、彼女が20代半ば、何を歌っても元気がよく声量があり、歌うことを怖く思っていない時の歌唱です。今からみるとほほえましいのですが、今の島津亜矢はまったく別人といってもいいほど歌に色気があり、大人になりました。

エレファントカシマシ「悲しみの果て」
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