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2016.12.06 Tue 新しい歌謡曲は美空ひばりにリスペクトするJポップの旗手たちと島津亜矢との出会いから生まれる。

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 島津亜矢の紅白出場が決まり、ファンの方々の間では何を歌うかに関心が集まっています。
 私も一ファンとしていろいろ想像をめぐらして楽しんでいますが、それはさておき、ファンの方々には叱られるでしょうが、今回の紅白出場は薄氷ものであったと思います。
 NHKは紅白出場選定基準として「今年の活躍」、「世論の支持」、「番組の演出・企画に沿う」という3つの基準を発表していますが、実際のところCDの売り上げやダウンロード、ライブの人気度から行くと、島津亜矢はライブの人気度以外では率直に言ってヒット曲を持たず、ライブの人気度と言ってもJポップのアーティストの動員数とは程遠いのが実情です。さすれば結局のところ演歌の特別枠の中での選出であったと思われます。
 NHKは今年、演歌・歌謡曲のジャンルに多かった出場回数の多い歌手の不出場へと大なたを振るいました。今まで高齢の視聴者をターゲットに、ヒット曲がなくても演歌を日本人の心の歌とする特別枠を設け、歌唱力のある実力派の歌手として演歌歌手を優遇してきましたが、事務所サイドとのやり取りは残るもの、漫然と出場回数を誇ってきた演歌・歌謡曲の歌い手さんの特別扱いはなくなったのではないでしょうか。反対に、市川由紀乃、香西かおり、福田こうへいのようにヒット曲が出れば演歌枠の範囲で出場が可能になったのではないでしょうか。
 そんな事情を想像すれば、よくぞ島津亜矢を選んでくれたと思います。昨年の「帰らんちゃよか」でその圧倒的な歌唱力とマキタスポーツの応援などで話題となり、3つの基準あたりにいる彼女の出演には議論があったはずで、NHKの音楽番組プロデューサーの中にいるはずの島津亜矢ファンの熱烈な後押しで出演が決まったのでしょう。
 これからは演歌の特別枠がほぼなくなり、演歌のジャンルの中でもヒット曲が出ればそれが優先されるようになり、歌唱力だけで選ばれると考えるには無理があると思います。
 そう思うと、紅白歌合戦も国民的番組から民放各局が年末に放送する特番の歌番組のように変わっていく中で、そろそろ島津亜矢もわたしたちファンも紅白にこだわらないほうがいいのではないかと思います。もともと個人事務所の地道な活動で熱烈なファンを自らつくってきた彼女ですから、すでに独自の音楽活動の道は開けています。
 ファンとして紅白に出てほしいと思う理由のひとつに、この番組に出場することで異なったジャンルの歌手や作り手との出会いの可能性と、より多くの人々に広く認知されることがあります。しかしながら今はまだ紅白がその役目を果たしていることは事実としても、紅白に出場しなくても武道館やアリーナを満席にするJポップの歌手がたくさんいます。島津亜矢は彼女のやり方で、たとえばこの間のマキタスポーツのライブのゲスト出演や来年の中島みゆきリスペクトコンサートの出場、さらには「SINGER」シリーズや「BS日本のうた」シリーズなど、すば抜けた歌唱力で数々の名曲を歌うアルバムも出しているのですから、年間のライブスケジュールに歌謡曲やポップス、時には洋楽などで構成する自主コンサートを入れるなど、新しいファンを獲得する道はいくつもあると思います。
 さらに言えば、他の演歌歌手と同じように年に一度演歌を主とする新曲を発表していますが、演歌を出自とする島津亜矢にとって決して間違っていないし、歌自体が悪いわけではなく、たとえば今年の「阿吽の花」は名曲で、いっそのこと今年の紅白はこの歌でいいのではないかと思うほどですが、一方で島津亜矢のチームにはもう少し視野を広げて彼女をプロデュースしてもらえないかとも思うのです。
 というのも、プロモーションの主体がかつてのようにレコード会社ではなく、歌い手さんの所属事務所に移っている現在、個人事務所であるために演歌のジャンルの中でも他の歌い手さんの宣伝力には及ばないのが現実です。今までなら有線放送が頼りになりましたが、有線放送からヒット曲が生まれる時代もすでに終わっています。
 ならば、手堅いプロデュースによる「演歌の王道」を進むだけではなく、私の持論ですが彼女のマルチの才能を生かし、Jポップの中で歌謡曲に回帰しているヒットメーカーに楽曲提供を依頼し、それに資金もつぎ込む冒険があってもいいのではないでしょうか。
 ここ数年、顕著に桑田佳祐、いきものがかり、吉井和哉などポップスの旗手であるひとたちが歌謡曲に回帰しています。また一世代前には井上陽水、小椋桂、堀内孝雄などが1950年代から60年代の歌謡曲をリスペクトしていて、小椋桂も堀内孝雄も自ら「愛燦燦」や「山河」など演歌・歌謡曲の名曲を世に送り出しています。
  「いきものがかり」の水野良樹は自らの歌を「大衆歌」と呼び、歌謡曲の影響を色濃く受けた歌をつくっています。吉井和哉は沢田研二と阿久悠に強い影響を受けたと言っていますし、桑田佳祐にいたっては2009年と2014年に「ひとり紅白歌合戦」というライブイベントで合わせて100曲を超す歌謡曲を熱唱した他、今年開局25周年を迎えたWOWOWの特別番組「THE ROOTS 〜偉大なる歌謡曲に感謝〜」では、彼のルーツである歌謡曲へのリスペクトを込めて「東京」をテーマにした曲を選び、原曲を忠実に再現した歌唱が話題になりました。歌謡曲ファンには彼の歌唱法に違和感を持つ人も多いでしょうが、学生の頃前川清とボブ・ディランのファンだった彼の歌唱法は歌謡曲そのものだと思います。
 Jポップの旗手である彼らが今更ながら歌謡曲に目覚め、歌謡曲に回帰するのには共通した理由があります。それはJポップの中心にいる彼らだからこそ感じる日本の大衆音楽の衰退への危機感です。彼らの危機感は演歌・歌謡曲にかかわるひとたち以上の切迫したものを感じます。
 そして、彼らの歌謡曲のルーツには美空ひばりがいることもたしかなことで、だからこそ美空ひばりからただひとり、バトンを渡されたソウルシンガー・島津亜矢と彼らが出会う時はすぐそこまで来ているとわたしは思うのです。
 戦後の大衆音楽の歴史を振り返れば美空ひばり、春日八郎、三橋美智也、三波春夫など瓦礫の中から明日を夢見て必死に生きてきた先人たちと寄り添うようにあった歌謡曲はその後フォークやニューミュージック、Jポップの方にシフトしていったことは否定できず、だからこそ今歌謡曲を再発見する彼らの活動から「新しい歌謡曲」が見え隠れする気がします。
 なぜならば彼らをはじめとするJポップのリスナーたちにとって親の世代までのものでしかなかった歌謡曲を桑田佳祐や吉井和哉がカバーし、オリジナルの歌謡曲をつくり歌うことで、新しいリスナーが飛躍的に増えるのですから…。そして、島津亜矢が彼らとくらべてもっとも足りないものはその「聴き手」の不在にあり、彼女の努力だけでは増えないリスナーを、桑田佳祐たちが飛躍的に届けてくれることになるのです。そして島津亜矢のチームがその若い人たちを取り逃がすことがないようにと切に願います。
 年に一曲の勝負曲だけでなくもう一曲、桑田佳祐や宇多田ヒカル、中島みゆき、玉置浩二、森山直太朗などに楽曲提供を依頼すれば話題性に富み、楽曲の素晴らしさと島津亜矢の歌唱力も相重なって、いままでとちがうヒットチャートに名を連ねることになるのも夢ではありません。

 もっとも、いろいろ書いてきたものの、わたしは今のままの島津亜矢であってもまったくいいと思います。ただ、紅白に出演しないことを「落選」などとはやしたてるマスコミに振り回されないで、しなやかにいさぎよく島津亜矢らしくあればいいと思っているだけなのです。
 次回はJポップのボーカリストがリスペクトする美空ひばりがカバー曲を歌う特集番組を見て思ったことと、美空ひばりから島津亜矢へと渡ったソウルミュージックとしての歌謡曲について書いてみたいと思います。

美空ひばり「愛燦燦」

島津亜矢「愛燦燦」

桑田佳祐 - 悪戯されて(歌謡サスペンスビデオver.) + 映像作品「THE ROOTS 」トレーラー

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