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2011.03.08 Tue 最高の音楽は最高のやさしさと手をつないでやってくる

2002年小島良喜1

  「あんた、ピアノの上で寝ていたいといってたやろ。舞台に出て俺のピアノのそばにいたらどうや、金澤さんのベースの振動もわかるで」と、小島良喜が難聴のRさんに言いました。
 2002年7月21日、箕面市民会館で豊能障害者労働センターが開いた「コジ・カナ・ツル」のコンサートの、本番直前のことでした。
 そんなことありっ?と、びっくりしながらも、その時彼女は白いTシャツを着ていたので、「黒いTシャツに着替えた方がいいですよね」と言いながら、わたしは急いでロビーで販売している黒いTシャツを取りに走ろうとしました。
 「これでどうや」と声が聞こえ、ふりむくと小島良喜が控え室から取って来た黒いTシャツを両手でひろげていました。思いがけないことでしたがRさんはこっそりと舞台に出て、ピアノのそばで彼らの音楽を聴くことができたのでした。
 この日の朝、小島良喜のマネージャーから電話が入り、「背中が痛いので、整体のひとを呼んでもらえませんか」と言われ、大慌てで信頼する整体師に来てもらいました。それでもリハーサルから本番まで、背中の痛みはかなりあったのではないかと思います。
 ピアノの前に座る彼の後姿を見ていると、いたいたしくて涙が止まりませんでした。井上陽水、Charのツアーと超多忙な毎日で、前日は福岡、翌日は熊本という日程の間に箕面に来てもらうことになったことをもうしわけないと思いました。
 そんな体調でも難聴のRさんが「一度でいいからピアノの上に寝て、小島さんのピアノを感じてみたい」と言ったことを覚えていて、粋なはからいを超えたやさしさを持つこんなピアニストが箕面に来てくれたことを誇りに思いました。

 「ピアノを弾きはじめると、痛いこと忘れてしまうねん」と本人が言っていましたが、ほんとうにすばらしい演奏でした。金澤英明、鶴谷智生、小島良喜という、日本のトップミュージシャン3人の対等な関係が、個々の演奏をこえた「もうひとつの音楽」を呼び寄せ、聴く人の心に溶けていく…。やっぱり「最高の音楽は最高のやさしさと手をつないでやってくる」と、率直に思いました。
 ゲストの近藤房之助が少し控えめに、そして3人への友情と尊敬とも言えるまなざしをもって現れ、「遠くへ行きたい」を歌い始めました。英語が多い彼の歌の中で数少ない日本の歌ですが、アンコールで歌った「上を向いて歩こう」とともに最高でした。
 近藤房之助はほんとうに純情な歌心を持ちつづける荒野の吟遊詩人なのだと思いました。

 小島良喜の体調を考えたら早くホテルに行ったほうがいいと思いましたが、4人とも居酒屋で用意していた打ち上げに来てくれました。そこでの4人の素顔もとてもすてきで、かぎりなくやさしいひとたちでした。豊能障害者労働センターの障害者スタッフも、みんないい顔をしていました。4人は「自然体で演奏できた。お客さんの反応が暖かかった」と言ってくれました。
 こうして、夢のような一日があっというまに終わりました。Rさんをはじめ、豊能障害者労働センターの若いスタッフが「ほんとうにこんなすごいひとたちが箕面に来るの?」と思った幻が、現実のものとなった一日でした。
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