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2016.07.05 Tue 黒田三郎作詞・小室等作曲「道」 憲法とわたしの人生4

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 7月2日、わたしが昨年まで働いていた被災障害者支援「ゆめ風基金」のイベントがありました。
近畿ろうきんは2011年に東日本大震災支援定期預金を発売し、10年間の利子をゆめ風基金とあしなが育英会へ寄付する取り組みをされています。
 大阪市西区の近畿ろうきんメインホールで開かれたこの催しは、その寄付金によって復興した被災地のグループの報告や被災地の現状、くまもと地震の被災状況と支援の報告のあと、ゆめ風基金の呼びかけ人代表をされている小室等さんとこむろゆいさんのコンサートが開かれました。
 被災地の報告ではいわき市の長谷川秀雄さんから、支援金によって障害者の働く場と生活の場が建設中であることと、いわき市では原発事故で避難してきたひとと旧来のいわき市民との間で被災補償金をめぐって深い溝があると話されました。またふるさとに帰る高齢者と避難地で新しい生活を始めているひとに分断されている現状も伝えられました。そして復興住宅の建設も進まず、介護保障の担い手であるヘルパー不足など、福島県は30年後の日本の限界集落の「先進地」になっている現状も報告されました。
 また、今年4月のくまもと地震では以前から活発に障害者の運動をしていたグループが集まり、くまもと被災地障害者センターを立ちあげ、被災障害者の支援活動を続けていることと、マスコミなどの情報が極端に少なくなっている中、復興のめどが立たない被災者の現状も報告されました。

 さて、2部の小室等さん、ゆいさんのコンサートは1時間ちょっとでしたが、250人の参加者の心に届く歌を熱唱されました。
小室さんの代表曲の「雨が空から降れば」、テレビドラマ「木枯らし紋次郎」の主題歌だった「誰かが風の中で」、1970年代のオイルショックのころに作られた「寒い冬」の後、参議院選挙のさ中、今度の選挙の結果によっては憲法を変える方向へ一気に突き進むことになる切迫した現実を踏まえて、「荒地」の詩人・黒田三郎が戦地から故郷に帰り、焼け野原の中で、唯一昔のままに残っている道に立つ様を詠んだ詩に小室さんが曲をつけた「道」を歌われました。
 小室さんは最近になってこの詩を歌にされたのは、ひとつの方向に簡単に生き急いでしまう今の世の中の危険な動きに、「ちょっと待て」と警告を鳴らす意味があるのだと思います。優しくてゆっくりした歌が多い中、若いころからの反骨精神をよみがえらせ、激しい歌い方で聴く者の心を必死にたたく小室さんがいました。

戦い敗れた故国に帰り すべてのものの失われたなかに
いたずらに昔ながらに残っている道に立ち 今さら僕は思う
右に行くのも左に行くのも僕の自由である

 戦後すぐ、田村隆一、高野喜久雄、鮎川信夫などともに詩誌「荒地」に参加した黒田三郎は、戦後民主主義という言葉では語れないもっと深い「自由」を歌っているのだと思います。今年の5月に開催しました「ピースマーケット・のせ」のきっかけを作ってくれた清洲辰也さんもまた、戦地から捕虜収容の半年を経て大阪の地にもどった時、がれきの上に立ち、「二度と戦争をしてはダメだ」と心に固く誓ったと言います。
 わたしは日本国憲法をつくったのがアメリカであろうとなかろうと、清洲さんや黒田三郎や、また数多くの戦争体験者が傷つけ殺すことも、傷つき殺されることもない平和をつくりだすことを戦後の未来に誓ったことがこの憲法を望み、育て、支えたほんとうの原動力だったのだと思うのです。
 わたしは戦後すぐの生まれですので黒塗りの教科書を使いはしませんでしたが、小学校の先生たちが「あなたがたは自由だ。この自由は無数の人々の犠牲と夢と希望によって得られたもので、貧困と荒廃のさ中にあってただ一つ、わたしたち大人があなたたち子どもにできるプレゼンなのです。しかしながら、この自由を守るのは他ならぬあなたたちなんですよ」と話してくれました。
 わたしたち子どもは先生の話の裏にあるくわしい歴史を教えてもらったわけではありませんが、「自由」という言葉がとてもキラキラしていてまぶしかったことをはっきり覚えています。実はわたしは対人恐怖症とどもりの子どもで、小学校の一学期は丸々、その後も学期のはじまりの2週間は学校に行くのが怖くて、ようやく4年生になってまともに学校に行けるようになった登校拒否児でした。そんなわたしがかろうじて学校に行けるようになったのは、「自由」という言葉が学校にしかないと思うようになったからでした。
 家に帰れば大人たちが戦争の自慢話に花を咲かせ、学校や先生の言うことなど信用するなと言いました。実際のところ、「民主主義」と「日本国憲法」は学校にだけ存在していて、勉強ができるとかできないとかいうこととは別に、時々どもりを笑われたりいじめられたりしても、学校は自由と希望と夢にあふれたところでした。
 わたしの人生は決してお金がたくさんあるわけでも、社会的地位にも縁がないまま終わると思いますが、場所はちがっても子どものころと同じ里山に抱かれ、経済的に苦しくとも幸せな人生だと自負できるのも、思い起こせば日本国憲法を空気のように生きて来れたからだと思っています。
 しかしながら、最近の世の中の動きはそんなささやかな幸せが吹き飛ばされるかもしれないほど不穏で、今回の参議院選挙の結果が日本の未来を大きく変えてしまうことになると数多くの人々が警鐘を鳴らし、与党と改憲に協力する政党で3分の2の議席を取られないように必死で活動しているところです。わたしもまた政治的な行動は苦手などと言っている場合ではないと思い、重い腰をあげたところです。
 3分の2の議席に到達したという世論調査もありますが、国や町を未来する政治は、自民党やおおさか維新の会が主張するような「納税者」のためにあるのではなく、これから先5年10年、50年の未来を設計するものであることを、政治家のみなさんもわたしたちも肝に銘じておかなければならないでしょう。
 と言って、わたしは何が何でも憲法を変えないと主張するつもりはありません。しかしながら、日本国憲法の裏には何百年にわたる無数の死者のたましいと、おびただしい血で書かれた歴史がひそやかに身をひそめていて、憲法の条文の行間からわたしたちの未来を、子どもの未来を、日本の未来を、世界の未来を見守っていることだけは決して忘れてはならないと思うのです。
 戦後の焼け跡のおびただしい屍の上に匂い立つ「自由」とは、その時も今もかけがえのない大切な宝物で、その贈り物を受け取ったわたしたち、かつての子どもが大切に守り、育てていかなければならないのだとほんとうに思います。
 わたしはすでに期日前投票をすましてきましたが、もしあなたが投票を棄権するつもりなら、またとくに支持政党がないのであれば、「今にお前の時代が来るぞ」と期待しても来る可能性が少ないアベノミクスの幻想とかつての成長神話に惑わされず、今回の選挙で「自由が自由でなくなる」ことになってしまわないように、投票に行ってくださいませんか。
 投票用紙は小さな紙切れにすぎませんが、あなたによってそのたかが紙切れがあなたと、まわりのひとたちと、そしてこれからやって来る子どもたちのしあわせと希望と、かがやく地球へのパスポートになるとわたしは信じています。

「道」 [詩:黒田三郎 曲:小室等] 歌詞・字幕付
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