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2016.05.25 Wed 「うたコン」と島津亜矢

島津亜矢「SINGER2」

 5月10日、NHKの「うたコン」に島津亜矢が出演しました。長年演歌枠の歌手の独壇場であった「NHK歌謡コンサート」が終了し、4月からジャンルを問わず新しい歌謡曲の創出を目指すと鳴り物入りで始まったこの番組ですが、始まってみれば当然のことながら演歌歌手にとっては厳しい出場枠になりました。もっとも、いままでがやや漫然と演歌歌手の居場所となっていたことを思えば、Jポップの歌手を迎え入れる今の番組構成の方が音楽ファン全体から見れば受け入れやすくなったと言えるのでしょう。それが当初の視聴率に現れたのでしょうが、回が続くとともにいろいろな批判もまた耳にするようになってきました。
 これまで出演した演歌歌手をふりかえると、水森かおりは別格にして、三山ひろし、山内恵介、市川由紀乃など人気急上昇の歌手の出場が目立ちます。そして五木ひろしを筆頭にベテラン歌手が出場枠を抑え、ちなみに平均すると演歌歌手は3人から4人しか出演していない現状では、いままで出場してきた演歌の歌い手さんの出番はかなり少なくなってしまいました。今の時点でかつての歌謡コンサートの視聴者のかなりのひとたちが失望されていることでしょう。
 わたしはそれほど熱烈な演歌ファンではありませんので、かえって今の番組構成の方がプロデューサーの意図通りJポップと演歌の両方を楽しめると思っています。
 しかしながら、落ち着きのない不安定な感じがこの番組全体を覆っていることも事実です。その印象は谷原章介と橋本菜穂子の司会のぎこちなさにも表れています。谷原章介はそんなに嫌いな役者ではないのですが、この番組ではその後の「サラメシ」とのつなぎがぴったりくる良き夫良き父親のイメージが強く、彼の幅広い音楽の視野がまだ活かされず、ドタバタしているような印象です。
 また橋本菜穂子アナウンサーは古くは「80年代ポップス」やロンドンブーツの田村淳と組んだ深夜番組、さらには残念ながらこの春に終了となった人気ニュース番組「NEWSWEB」の初代キャスターを務めたりと、存在感を増してきたアナウンサーで、わたしはずっと前から大好きでこの番組の楽しみのひとつだったのですが、谷原章介と同じようにちぐはぐでドタバタしている印象です。
 今のところ、かつての「NHK歌謡コンサート」の歴代司会者のようにはしっくりいかず、ミスマッチと言われかねないところですが、わたしは番組自体の落ち着きのなさがそうさせているのだと思います。そのわけを考えると、演歌とJポップを融合しようとつくられている番組構成がまだぎこちないからだと思います。
 それはこの番組の構成のまずさというだけではない、根の深い問題なのだと思います。 この番組を観ていて、「ここまで日本の大衆音楽の世界は破壊され、修復不能のところまで来ていたのか」と感じているのは番組スタッフだけではなく、視聴者のわたしたちにも突きつけられたように思うのです。
 本来は1970年代に音楽のレンジが大きく広がり、いろいろな音楽的冒険が可能になった時に、その流れに逆行するように「演歌」というジャンルが「日本人の心」という幻想とともにつくられてきた事実があります。小さな箱庭で自己撞着を重ねてきた演歌がその主張とは真逆に日本人の心に響かなくなっている事実と、一方で音楽的冒険をしてきたはずのJポップもまた自己摩耗と衰退の坂を転がるように、少年少女のアイドルの群像によってしか維持できなくなってきている事実、その間に大きな溝をより深くしたまま、総体として音楽産業が人々の心に響く音楽をつくれなくなってきているのかなと、この番組を観て強く感じます。
 わたしもまた、歌はこわれそうな心に寄り添い、明日を生きる希望を生み出すものと思ってきましたが、不毛もいえるこの番組を観ていると自信がなくなってしまうのです。はたして歌はわたしにとって、あなたにとって、みんなにとって必要なものなのかと…。
 結局、この番組のぎこちなさは日本の音楽産業の閉塞感がもたらすものであり、そのことを観ないできた音楽番組の中で、この番組が新しい一歩を踏み出そうとしていることはまちがいなく、そのことは評価していいと思いますし、時間をかけて見守るしかないのかなと思います。
 
 さて、そこで島津亜矢ですが、やはり間違いなく出演回数は少なくなっていくことはファンとして覚悟しなければならないでしょう。今のデータを観ただけでも少ない演歌枠に今人気上昇中の歌手たちの出演回数はすでに複数回になっているところを見ても、残念ながら島津亜矢がその領域でしのぎを削るのは難しいと思いますし、またベテラン枠には先輩歌手が陣取っている現実があります。
 ですから、他の歌い手さんもそうかも知れませんが、やはり独自の企画ですすめるコンサートに力を注ぐしかないのかも知れません。そして島津亜矢のファンの方に叱られるかも知れませんが、市川由紀乃の今年の紅白出場はかたいと予想され、もし演歌枠の中に島津亜矢も入っているのならば、最悪、島津亜矢が振り落とされることもないとは言えないとわたしはおもいます。もちろん、わたしは別のベテランと言われる歌い手さんが不出場になるのではないかと思いますが…。
 始まったばかりの「うたコン」が以前にまして紅白につながるであろうことを思うと、出場回数が少なくなったとしても、島津亜矢にはもう演歌の領域だけに限らず、全方位のジャンルの歌を歌うことで存在の大きさをアピールするしかないのではないかと思います。
 島津亜矢のファンであるわたしもふくめて、テレビの音楽番組においては本来のオリジナル演歌にこだわらず、島津亜矢のあふれる声量とそれをコントロールする歌唱力、そして何よりも歌の心を誰よりもとらえ、決して自分を目立たせるのではなくオリジナルの歌手の邪魔をせず、それでいて島津亜矢でしか表現できない稀有の才能を存分に発揮できる選曲で、視聴者の心をわしづかみにしてもらいたいと願っています。
 今回の放送でも、「ほんとうに歌が上手いのは島津亜矢だけ」という高い評価をJポップファンから寄せられています。ある意味、カラオケ文化は視聴者の耳を肥やしたともいえ、島津亜矢の特筆した歌唱力は昨年の紅白以来、音楽ファン全体に浸透してきています。
 余談ですが、AKBを卒業した高橋みなみが本人の憧れの歌手とはいえ中森明菜の「北ウィング」を歌い、歌詞も間違ったのですが声も出ないし音をはずしたりと、散々な評価になってしまいました。わたしはAKBの中でこのひとのことは好きな方で、だいたいAKBを卒業して歌手で成功することは至難のわざで、これからソロ歌手として活動するならばかなりのいばらの道になることはまちがいないでしょう。
 ましてや80年代のアイドルである松田聖子や中森明菜の歌唱力は並外れているのですから、今回はかなり無理をした歌唱になってしまいました。一部で口パクといわれ、みんなで歌えるようなやさしい曲を歌わされてきたわけですから、この歌に挑戦するのは無茶だということでしょう。
 それでもわたしは、高橋みなみがソロの女性歌手とし活動をつづけられることを願っています。彼女の若さから考えれば声量も歌唱力もトレーニングで見違えるようになると思いますし、第一いままでAKBを卒業した幾人かのアイドルがほんとうにしっかりとした活動をつづけているのかと問えば、高橋みなみに頑張ってほしいと願わずにはいられません。そうでなければ、幼い少年少女をちやほやし、グループでコンパニオンまがいのステージパフォーマンスを要求し、結局は使い捨ててしまうことになってしまうのではないでしょうか。
 ちなみに島津亜矢が「北ウィング」を歌ったならば、見事に中森明菜を彷彿とさせながらも島津亜矢にしか歌えない歌になっていたことを確信します。
 さらにもうひとつ、島津亜矢が「阿吽の花」を歌う時に、アイドルの踊りのようなバックパフォーマンスはまったく歌の世界とはかけ離れ、この歌の独特の物語を壊すものでしかなかったことを伝えておきたいと思います。

島津亜矢「飾りじゃないのよ涙は」

島津亜矢「ジェラシー」

「初めまして、島津亜矢です」・奇跡の出来事(ブログ・札幌蝦蟇口 母心)
この記事を読み、島津亜矢さんのファンであることを誇りに思います。
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