ホーム > 音楽 > 島津亜矢 > 島津亜矢の「独楽」の作詞者・久仁京介が日本作詩大賞受賞!

2015.12.06 Sun 島津亜矢の「独楽」の作詞者・久仁京介が日本作詩大賞受賞!

 12月3日、第48回日本作詩大賞が発表され、島津亜矢が歌う「独楽」が栄冠に輝き、作詞者の久仁京介氏が受賞されました。九仁京介さん、作曲された岡千秋さん、そして歌唱した島津亜矢さんと製作関係者のみなさん、おめでとうございます。
 日本作詩大賞と言えば2005年、第38回の日本作詞大賞に星野哲郎の「大器晩成」が受賞し、島津亜矢が恩師の受賞を喜び、大泣きしながらもしっかりと歌い切った映像が今も残っています。島津亜矢の20周年記念曲の「大器晩成」から10年、島津亜矢チームは星野哲郎への最大の敬意をこめて一見時代遅れというかアナクロとまで言っていい骨太の「演歌」をつくり、世に問うたのが「独楽」だったと思います。
 正直言ってあまり「演歌」が好きではないのに島津亜矢のファン歴6年になるわたしは、美空ひばりがそうであったようにどんなジャンルの歌にも真摯に向き合い、自分の歌にしてしまう彼女のレンジの広さを目の当たりにし、このひとはいったいどこに行くのか、どんな歌手になるのかと楽しみになる一方、途方に暮れてしまうのです。
 たとえば中島みゆきこそが彼女の才能のもっとも深いところを引き出してくれるのではないかとか、若い人ならやはり「いきものがかり」の水野君あたりが彼女の才能のもっとも遠くにあるみずみずしさをひきだしてくれるのではないかとか、いやニューミュージックから出発し、時間芸術である音楽をさながら日本画のようにわしたちの心のキャンバスに淡く儚く描いて見せる小椋佳なら、彼女の才能のもっとも広い荒野の泉からいとおしい音楽をすくいだしてくれるのではないかと思ったりします。
 しかしながら、島津亜矢とそのチームはそんな彼女の可能性を広げることを急がず、「I Will Always Love You」や「マイ・ウェイ」、「ROSE」まで翼を広げ大空を舞った後は、必ず日本の大地や山河や海原に舞い降り、「演歌」を軸足としてきました。
 わたしは今でもかつて美空ひばりを「現代演歌」に押し込めてしまった轍を島津亜矢には踏んでほしくないと思っているのですが、一方で1990年以降の「現代演歌」に押し込められてきた「日本的なもの」や「日本調」、縄文から受け継がれているはずの土俗の語りなどが解き放たれ、刹那的で扇情的なJポップでもなく、手垢に染まった愛や別れをあいも変わらずくりかえす「演歌」でもない新しい日本の音楽、ワールドミュージックと誇っていい大衆音楽としての新しい日本の歌(演歌)が生まれる時がやって来るのを待ち望んでもいます。
 島津亜矢は苦難な道であっても不毛に見える荒野であっても、その向こうに垣間見える新しい時代へとたどりつける数少ない歌手だとわたしは信じていて、それゆえにあえて他ジャンルとされている歌の作り手によって彼女が進化していくことを願ってきました。
 30周年記念曲としてつくりあげ、この1年間歌いつづけてきた「独楽」は、いままでこういうテーマの曲は「男歌」になってしまうことが多いように思いますが、この歌にはそんな偏狭さがなく、島津演歌といっていい「にんげん」の生きる道を歌い、岩と岩とのはざまに顔をのぞかせる可憐な花を励まし、果てしない海の彼方へと連れ去られた「生きとし生けるもの」のたましいの記憶をすくい上げる、最近にない本格演歌だと思います。
 実際のところわたしは「独楽」が真の意味での演歌の王道を歩きつづけることを誓う島津亜矢とそのチームの覚悟というか潔さに感動する一方で、彼女のレンジの広さを生かし、「演歌」に縛られないでJポップスを凌駕する「日本のポップス」というか、たとえば先に挙げた歌の作り手とのコラボレーションによる演歌とポップスが融合された「もうひとつの記念曲」ができたらと思っていました。
 それはまた、現在の演歌の枠組みの閉鎖性が自らその可能性をせばめ、少ない人数の歌い手さんのチームが既存の領域を守るために紅白出場や「日本有線大賞」や「日本作詩大賞」へのアプローチを強めるといった、予定調和的なギルドに辟易しているからでもあります。
 BS民放5局共同特別番組として昨年の1月に放送された「久米宏の『ニッポン百年物語』~流行歌の100年~『未来に残すべきニッポンの歌』」で、秋元康が歌謡曲の宇宙規模のメガヒットを希望を交えて予言したのに対して、ロック歌手の近田春夫が「音楽はそれ自体で成り立たないようになり、消滅するのではないか」と予言しました。彼の予言は、ドラマや映画の主題歌や挿入歌だけでなく、たとえば商品を買った得点におまけとして提供されるだけで、音楽そのものを商品として受け入れる「大衆」がいなくなることを意味しています。現実にさまざまな特典をつけて販売してもCDが売れず、CDの販売数では流行が図れなくなり、演歌のジャンルではカラオケだけでなくカセットによって「歌いやすい歌」を提供し、それにあわせた曲作りがされていて、近田春夫の言ったことはすでに現実になってきています。
 そのことの危機感が、今年の日本作詩大賞に表れたとわたしは思います。今回の紅白では昨年の50組の内17組が出場しないことになったり、今年を最後に森進一が出場辞退することをきっかけにベテラン歌手の引退が予測され、世代交代が進もうとしている今、日本作詩家協会もまた変化を求められるようになったのだと思います。
 日本作詩大賞は、日本作詩家協会主催の演歌・歌謡曲の育成を主な目的としている音楽祭で、演歌・歌謡曲のジャンルの音楽事務所や制作者が、この音楽祭での受賞を目標とする傾向が年を追うごとに強くなっているようです。ちなみに1967年の第1回作詞大賞は水前寺清子が歌った「いつでも君は」の作詞者だった星野哲郎が受賞しています。
 80年代以降の音楽シーンの劇的な変化から、演歌にたずさわる制作関係者が既存の領域を守ることに力を注いできた流れから、演歌・歌謡曲のジャンルにおける音楽的冒険が乏しくなっています。
 今回の「独楽」の受賞には、既存の枠組みの予定調和から一歩踏み出し、久しぶりにこの協会の意志が色濃く反映された結果だとわたしは思うのです。
 たしかに、既存の演歌の枠組みから言えばどの歌が受賞してもおかしくないと思いましたし、実際のところ山内恵介の「スポットライト」、三山ひろしの「お岩木山」、大月みやこの「愛のかげろう」あたりが受賞するのではないかと思いながら放送を観ていたので、「独楽」がコールされた時は正直びっくりしました。
 そして、いよいよ島津亜矢が既存の枠組みもふくめて、よくも悪くも演歌を牽引する宿命を担わなければならなくなったのだと思いました。わたしはできればちあきなおみのように演歌の王道から外れたところにいてほしいとも思っていたのですが、時代はそこまで彼女をゆっくりと待ってはくれなかったし、言い換えれば演歌界が新しい風を呼び込まなければならなくなったところまで追い込まれていることを証明した事件だったのではないでしょうか。
 この歌を歌う島津亜矢の心には、恩師・星野哲郎の優しくも厳しい「教え」が聞こえていたに違いありません。2005年の日本作詩大賞を受賞した時、星野哲郎が島津亜矢に「あなたのおかげだよ」と言った言葉は30代半ばの島津亜矢への最大の褒め言葉でもありましたが、その5年後に25周年記念曲「温故知新」を残して亡くなった巷の詩人・星野哲郎の彼女へのはげましの言葉でもあり、彼女に歌心を託す早すぎた遺言でもあったのかもしれません。
 20周年記念曲の「大器晩成」で「枝を張るのはまだ早い 今はしっかり根をのばせ」と島津亜矢に歌わせた今は亡き恩師・星野哲郎に、10年後の今「独楽は心棒 こころも心棒 軸をしっかり本気に据えりゃ 己に勝てると独楽がいう」と答えたアンサーソング「独楽」は、作詞家・久仁京介氏が、演歌・歌謡曲の未来を担う島津亜矢に静かな決意を求めたエールでもあったのだと思います。
 余談ですが、1970年に久仁京介氏は日吉ミミの「男と女のお話」の作詞者でもありますが、1973年に寺山修司演出による「日吉ミミリサイタル歌舞伎町編」で、「男と女のお話」にいたるまでのストーリーをドキュメンタリーのような映像とともに日吉ミミが語ると、観客が号泣したというエピソードをかわなかのぶひろ氏が証言していたことを思い出します。後日にその話をすると、テレたような笑顔で、「いやぁ、他人をたて、かつ自分もたてるというのはむずしいね」と言ったらしいのですが、寺山修司のことですからきっと本当のような本当でないような物語を日吉ミミに語らせ、「男と女のお話」を歌う頃には観客を号泣させる演出をしたのだと思います。
 あの時代、「歌謡曲」こそが「インターナショナル」よりも革命的であると主張していた寺山修司にとって、星野哲郎は歌手の肉体と肉声をメディアとする「革命的な歌謡曲」をつくる巷の詩人で、星野哲郎への羨望と嫉妬が寺山を歌謡曲の作詞に向かわせ、日吉ミミの伝説のライブを演出させたのだと私は思います。

島津亜矢「独楽」
この映像は今年の2月の「NHK歌謡コンサート」の映像で、「I Will Always Love You」を歌い、松山千春が絶賛したほか各方面に反響を呼びました。
島津亜矢「大器晩成」 作詩大賞・星野哲郎受賞(2005年)
関連記事

web拍手 by FC2

Comments

name
comment
亜矢ファン : URL

2015.12.14 Mon 13:14

亜矢さんテレビ出演が少ないです。
五木さん冬美さんがおかしい
亜矢さんが上手すぎて煙ったい
感じでは、亜矢さん無視されています、
5時間スペシャリルにも出てない
こんなにもあんなにも上手いのに
テレビの世界どうなっているのでしょう。

tunehiko : URL コメントありがとうございます。

Edit  2015.12.14 Mon 17:59

亜矢ファン様
コメントありがとうございます。
そうですね。おっしゃる通りです。紅白歌合戦は別にして、NHKの音楽番組の制作者の中には亜矢さんの歌唱力だけではない深い音楽性とパフォーマンスを高く評価し、中には信奉者もいるような気がします。
民放の方は、一時はもう少し期待しましたが、あいかわらずのマンネリで見るのが嫌になってしまいます。わたしの家では妻の母の関係でいつもかかっていますが…。
亜矢さんはテレビの小さな画面には収まらないアーティストなので、いまのところはライブでしかほんとうの魅力は伝わらないかもしれません。


comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback