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2015.08.19 Wed 2015年8月16日の小室等・坂田明・林英哲その1

 8月16日、1年がかりで準備してきた被災障害者支援・ゆめ風基金の設立20年記念コンサート「ゆめ風で会いましょう」を開催しました。ゆめ風基金の呼びかけ人代表の小室等さんの声掛けで太鼓の林英哲さん、サックスの坂田明さんをお迎えし、大阪市の歴史的建造物の大阪市中央公会堂で開いたこのコンサートに約900人の方々がご来場くださいました。

 阪神淡路大震災を機に自然災害で被災した障害者への支援を続けてきたゆめ風基金の20年の節目に、このようなドリームコンサートを開いてくださった小室等さん、坂田明さん、林英哲さんに感謝の言葉がありません。
 ふりかえれば十年前に永六輔さんから引き継ぎ、小室等さんがゆめ風基金の呼びかけ人の代表になられた時から、このコンサートは長い年月をくぐりぬけ、たくさんのひとびとの夢にささえられながら、今日というこの日のために用意されてきたのだと思います。
 一般的にはジャンルがちがうと思われる3人ですが実は親交が深く、東京の方では3人そろってのライブやそれぞれ2人ずつのライブをされてきた間柄です。
 1970年代からフォークのジャンルを越えて表現の荒野を切り開いてきた小室等さん、山下洋輔トリオのサックス奏者として、フリージャズというジャンルにとどまらず音楽の領域を広げつづけてきた坂田明さん、先人のいない未開の大地に立ち、遠く聴こえる森羅万象の声ならぬ声を太鼓でよびさます林英哲さん、この3人の音楽に共通するものは生きとし生けるものたちへの限りない慈しみの心から生まれる音楽であり、彼らの音楽を聴くわたしたちは人類の誕生と同時に生まれた音楽の誕生に立会う幸福に恵まれるのでした。

 2部構成で始まったコンサートの1部は、牧口一二・ゆめ風基金代表理事と小室さんとのトークの後、小室等さん、こむろゆいさんの親子ユニット「ラニヤップ」によるゆめ風基金応援歌「伝えてください」から始まりました。

伝えてください あの日のことを
伝えてください 何があったかを
 ゆめ風基金の活動10年を記念して、永六輔さん、谷川俊太郎さんの共同作詞に小室さんが作曲し、CD制作したゆめ風基金応援歌は小室さんをはじめレコーディングに参加した小室さんの友人や大阪のミュージシャンによって今も歌い継がれている他、全国の中学校で自主的な合唱曲としても歌われているようです。
 この歌がゆめ風基金10年のつどいではじめて歌われた時、阪神淡路大震災で数多くの友人をなくし、命からがら大阪にやってきた阪神地区の障害者が「心斎橋の灯りが涙でにじみ、無性に腹が立った。神戸の街は真っ暗や」といった言葉を思い出しました。彼のその言葉から大阪を拠点に「障害者救援本部」が生まれ、救援から支援、復興から再生へと、障害者による障害者救援活動がはじまったのでした。
 わたしはロビー担当で1部はほとんど聴けなかったのですが、それでもこむろゆいさんが歌った「銀色のランナー」は心にしみました。この歌は関西フォークの旗手で「花嫁」の作曲者である坂庭省悟が亡くなった3年後の2006年に高田渡、茶木みやこ、有山じゅんじ、五十川清、平井宏、中川イサト他たくさんのミュージシャンが参加したトレビュートアルバムで、小室等さんとともにこむろゆいさんが歌った歌で、最近またライブでよく歌われている歌です。

ぼくは君と一緒に走る 銀色のランナー
キンジスという名のトロフィーを
背負って走るのさ どこまでも
 筋ジストロフィーの障害を持つ渡辺善行さんの詩に坂庭省悟さんが曲を付けたこの歌をゆいさんが歌うと、銀色に光る車いすに乗って夜明けの風が通り抜ける風景が浮かんできます。障害者の心情を歌う歌は暗くきびしい現実か、根拠のない「明るい未来」を歌う歌が多い中で、車いすも「障害」もかけがえのないもので、人生を共に生きる親友であることを歌うこの歌は、同じ時を生きるすべての人々に勇気をくれる歌だと思います。

 そして、「ここから風が」。この歌は1990年に制作された映画「しがらきから吹いてくる風」の主題歌としてつくられ、それ以後必ずと言っていいほどライブで歌われてきました。この歌が誕生してすでに25年が経ちますが、最近のこむろゆいさんとのデュオによる歌声はとてもみずみずしく、歌は歌い継がれることでよみがえることを実感します。

偉い人は日本を金持ちにした
そのぶんだけ 生きてるものたちは
生きてるものたちは 悲しい目にあったから
ぼくらの心がなさけない
心おさえて 心おさえて
 滋賀の信楽青年寮を舞台にしたドキュメンタリー映画をきっかけに、障害者の一見意味が解らない独り言をベースに綴られたこの歌に込められた悲鳴に似たメッセージは、この歌が誕生して25年も過ぎた今こそ時代へのより強烈で切実な告発となっているのではないでしょうか。

 1部の最後に歌った「ほほえむちから」は、糸賀一雄氏生誕100年式典に参加したミュージシャン、さきらジュニアオーケストラのこどもたち、そして滋賀県民を中心とした大合唱隊、総勢207名がレコーディングに臨んだライブ盤CDとして発表されました。

いまここにいきるわたしは
いのちのねっこでむすばれている
いまそこにいきるあなたと
 谷川俊太郎さんの作詞、小室等さんの作曲によるこの歌は、1965年の「ベトナムの平和を願う市民の集会」のためにつくられた「死んだ男の残したものは」(谷川俊太郎作詞・武満徹作曲)から40年、「ここから風が」から25年が過ぎたいま、世界の人々が共に生きる勇気を育て、平和をつくりだすのに必要なのは武力ではなく、「ほほえむちから」なのだと教えてくれたのでした。
 親子ユニット「ラニヤップ」の音楽を聴き、ラジカルな音楽はハードなロックにのみ宿るのではなく、しなやかで透明でゆるやかな風のようにひとの心の迷路にそっと忍び寄る音楽にもあることを感じます。
 いろいろなひとに支えられたゆめ風基金の20年は、多くのたましいが託してくれた夢と希望がぎっしりつまった20年でもあったことを振り返り、「悼む心」からあふれる挽歌につつまれ、コンサートの1部が終わりました。

銀色のランナー Lagniappe with 佐野岳彦

ラニヤップ「 ここから風が」
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