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2015.01.27 Tue 島津亜矢・新歌舞伎座公演1

 1月26日、島津亜矢の新歌舞伎座公演に行きました。今年は彼女の30周年という特別の年で、10月22日は東京有楽町国際フォーラム・ホールA、11月3日は名古屋センチュリーホール、11月4日は大阪フェスティバルホールでリサイタルが計画されています。
 今年は5月に名古屋の中日劇場で「おしずの恋」の再演で座長公演が予定されているものの新しい芝居での座長公演はなく、秋に予定されているリサイタルを頂点にしたコンサート活動に力をそそぐ一年になることでしょう。
 今回の新歌舞伎座の公演は、そんな島津亜矢の今年の「決意」といえば大げさかも知れませんが、ステージ全体に彼女の意気込みが伝わってくるコンサートでした。
 コンサートの内容は昨年12月に聴いた八尾のコンサートと同じでしたが、新曲「独楽」(こま)が披露された他、ゲストに「帰らんちゃよか」の作者・関島秀樹が登場し、「親父からの長い手紙」を歌った後、「帰らんちゃよか」を関島秀樹のギターとハーモニカを伴奏に島津亜矢が熱唱しました。
 今回のコンサートは昨年の秋から感じていた島津亜矢の変化をはっきりと確信するものでした。個々の歌については前回とまったく同じなんですが、なによりも年のはじめにあたり心機一転というか、体じゅうから湧き上がるような歌への深い思いが最初から最後までオーラのようにまとっていて、そのエネルギーが超満員の新歌舞伎座のお客さんに惜しみなく降り注がれるようでした。
 もちろん、30周年ということもありますが、わたしは島津亜矢がその30年という年月を経て、あたかも荒野のプラットホームで、彼女の歌手人生に大きな果実をもたらすはずの次の10年へ出発する最終列車を待ち続けていたように思うのです。
 それはとても孤独な旅で、いままで以上の試練を彼女に用意しているのかも知れません。しかしながらその旅は、30年前に星野哲郎や藤山一郎、そして「メロディーが暗くて絶望的で、歌詞も星、涙、港と百年一日である」として演歌、歌謡曲を嫌った作曲家・高木とうろくが絶賛し、発見した100年に一人の逸材・島津亜矢だからこそ用意された森なき森、海なき海、山なき山、道なき道を踏みしだく旅のはじまりなのではないでしょうか。その旅はまた、およそ歌が誕生して以来、ある歌は歌い継がれ、ある歌は夜空に消えていった何千何万の歌の銀河を渡り、愛を必要とし、歌によって生きる勇気をつくりだしたであろうたくさんのひとびとの夢と希望を背負う旅にほかなりません。
 その列車はすぐにでもやってくると思われましたが、歌の女神はそうたやすく降りては来ず、島津亜矢という大器だからこそより厳しい時代の洗礼が容赦なく彼女に降りかかりました。それでも彼女の歌は一日たりともとどまらず、より深くより広く数多くの人たちの心に届いていきました。そのことがまた芸能界や歌謡界の中の一歌手としての島津亜矢に安住することを許さず、時代そのものの声を聴き、そこに生きるすべてのひとの「救済としての歌探し」という孤独な道を用意することになったのだと思います。
 そんな天才がゆえの巡礼の時を終え、いま島津亜矢はとてもはっきりした力強いメッセージを持って、わたしたちの前に再度現れたような気がします。
 今年のコンサートのテーマ「矜持(きょうじ)~自信・誇りを持って~」さながらに、ステージには今までのさまざまな惑いを突き破り、恩師・星野哲郎が指し示した大いなる未来を信じ、粛々とそして心熱く、たしかな手ごたえと謙虚な自信を兼ね備えた、島津亜矢そのひとが立っていました。

 第一部で印象に残ったのは前回とほぼ同じで、「出世坂」、「度胸船」など星野哲郎作品と「戦友」、「少年時代」、「酒と涙と男と女」でした。「出世坂」はデビュー当時の歌で、以前にも書いたように時代錯誤な歌とわたしは思いますが、「度胸船」と並び、星野哲郎があえて歌の女神を代行して演歌少女・島津亜矢に目先のヒットよりも歌うたいの原点をたたき込もうとしたこの歌を、30年もたった今、時代錯誤を通り越して危うい時代そのものを穿つように丁寧で深みのある歌として歌い直しました。
 「戦友」はますます色を濃くし、心にしみわたりました。島津亜矢ファンの方々に限らず、多様な考え方があると思いますが、そんな多様な考え方の一つとして、わたしはこの歌はとても悲しく切なく、たたかいのさ中に平和を願い、ひとを傷つけることもひとに傷つけられることもないことを祈る挽歌だと思います。
 そして、「SINGER2」の中から「酒と涙と男と女」を歌いました。わたしは個人的には「シルエットロマンス」や「わかってください」を歌ってほしいのですが、「酒と涙と男と女」はCDの収録とはかなりちがい、最近のすべての歌に言えるサビのせり上がる高音と少しけだるい中低音が行き来するメリハリの利いた歌になっていました。
 2部ではやはり関島秀樹の伴奏による「帰らんちゃよか」と「かあちゃん」、「感謝状」、そして新曲「独楽」と「瞼の母」ですが、それらについては以前に書いた記事を紹介しつつ、次回に書くことにします。

島津亜矢「度胸船」(セリフ入り)
星野哲郎が島津亜矢に残した名曲のひとつです。「おやじ来たぞと 吹雪を呼べば 風がほめるぜ よく来たと」…。海に傷つき、海に翻弄され、海を愛する人間の心情を、島津亜矢が歌っています。
島津亜矢「出世坂」
16才の彼女はこの歌を、自分を応援してくれる「おとなたち」に聴いてもらおうと一生懸命歌っています。その健気さに思わず涙が出てしまいます。今回取り上げた3つの映像は、ひとつの歌を通じて島津亜矢の進化がよくわかります。
島津亜矢「出世坂」
これはそれから少したっていますが、歌唱力はもう今とほぼ変わらず、「演歌少女」の幼さが消え、大人の女性の正調演歌になっているのではないでしょうか。
島津亜矢「出世坂」
そしてこの映像は「BS日本のうた」で絶賛された鳥羽一郎とのコラボの映像で、今に至るしなやかさと、何よりも歌いきる天才から歌を読み歌を聴く者の心に残す天才へと大きく進化していく島津亜矢に圧倒されたライブでした。
そして、「袴をはいた渡り鳥」とともに「出世坂」が、16歳の島津亜矢に対する星野哲郎の深い愛情が伝わる素晴らしい歌であることを、ほかならぬ島津亜矢の30年が証明したステージでした。
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