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2014.09.14 Sun 島津亜矢「シルエット・ロマンス」

 最近続けさまに林英哲、小島良喜・金澤英明・SIHO、坂田明のライブと、演歌とは程遠い音楽を聴いてきましたが、わたしにとって島津亜矢はこれらのプレーヤーと引けをとらないばかりか、決して実現しないでしょうが彼らとのコラボレーションがあったとしたら、島津亜矢の天才ぶりが120%発揮されることと確信します。
 さて、わたしはこの1年ほどずっと「SINGER2」を聴き続けていて、ポップシンガーとしての彼女の冒険の深さと広さに圧倒されています。収録されている曲もすでにいくつかを記事にしましたが、またまだ書ききれてなくて、そうこうしているうちに「BS日本のうたⅧ」が発売されるとのこと。今回の場合はすべてが「演歌」で、しかも半分が新しく録音されているということで、とても楽しみです。
 そこで「SINGER2」についての記事を早めようと思います。今回は「シルエット・ロマンス」について書いてみようと思います。
 このアルバムを最初に手にした時、MY HEART WILL GO ON、かもめが翔んだ日、SWEET MEMORIESと続いた後に、「シルエット・ロマンス」が収録されていて、少し驚きました。もちろんこの歌はJポップスの歌手には結構カバーされている名曲ですから、このアルバムの収録リストに入っていてなんの不思議もないのですが、ここ数年、その歌唱力と陰影のある高音と低音、そして歌の解釈すべてにおいてめざましい進化をつづける島津亜矢がこの歌をどのように歌い、どんな風景を見させてくれるのか、とてもどきどきしながら聴きました。
 というのも、いままで彼女が歌ってきたポップスとちがい、来生えつこの詩には触覚的と言うか、心の微妙な動きを歌にしていて、来生たかおの曲はその微妙な動きを静かに受け止め、言葉ひとつひとつを丁寧にすくいあげるような曲づくりで、決してあざとく感情を歌い上げたりしないのです。歌から見えてくる風景も絵画的と言うよりは映画的で、しかもきわだった映像ではなく朝曇りの部屋やかすみがかったモノクロ風の街路のようなイメージを感じます。
 そのぶん、1980年代を象徴するこの姉弟の歌には都会的な雰囲気の中にセクシーな肌触りと危険な香りがただよっています。わたしが中森明菜を好きになったのもこの二人がつくった「セカンドメモリー」を聴いてからで、その他有名な「セーラー服と機関銃(夢の途中)」など、どの歌にもモノクロの映画を観るような懐かしさと歌にしなければ言葉にしにくい感傷にあふれています。
 一方の極に「なみだ船」や「海鳴りの詩」など、ドラマチックな原風景がこぼれるような演歌の名曲を歌い上げる島津亜矢が、もっとも反対の極にあり、Jポップの中でもデリケートな大人の女性の恋歌「シルエット・ロマンス」を歌えることは、その間にある歌えない歌など彼女にはひとつもないことを教えてくれることでもありました。
 島津亜矢の「シルエット・ロマンス」は、これほどまでに歌えるものかと思うほどとても切ない歌でした。

あなたのくちびる 首すじかすめ
わたしの声もかすれてた 無意識にイヤリング
気づいたらはずしてた 重なり合う シルエット
                         (「シルエット・ロマンス」)

 人知れず恋に溺れる女性の哀しい心の動きと、もしかすると渡ってはいけない川を渡ってしまった一瞬を淡々と、そして切々と島津亜矢は歌っていて、「あーっ」という吐息が映し出す風景は、その部屋の窓の夜景のようでもあり、一夜の後の青ざめた朝の光のようでもあります。
 おそらく彼女が歌う歌で最もセクシーな愛の歌を、島津亜矢はいつの間にかもう自分の世界の一つにしていたのでした。

  「シルエット・ロマンス」は1981年の11月に発表された大橋純子の名曲です。大橋純子は1974年にデビュー、1977年、大橋純子と美乃家セントラルステイションとしてリリースした「シンプル・ラブ」がヒットし、その日本人離れした歌唱力と音楽性が認められます。1978年「たそがれマイ・ラブ」がヒット。1982年には「シルエット・ロマンス」で日本レコード大賞最優秀歌唱賞受賞し、ソロシンガーとして不動の地位を築きました。
 この頃はテレビ以外で音楽や歌を聴くことがなかったわたしは、1978年から89年まで放送されたテレビ番組「ザ・ベストテン」で、彼女のことを知りました。
 久保田早紀、渡辺真知子、庄野真代、八神純子とともに、大橋純子もよく出演していた記憶がありますが、最初は大橋純子が苦手でした。その理由ははっきりとおぼえていないのですが、今から考えると彼女の硬質で高い声と、どこか歌謡曲ではない歌唱が、そのころのわたしにはわからなかったのだと思います。ところがいつごろからか、先にあげた歌手の中で一番好きになっていました。彼女の硬質の声と、おそらくソウルやロックがバックグラウンドになっている歌唱力は並外れていると思います。
 これは記憶が定かではないのですが、「たそがれマイ・ラブ」や「シルエット・ロマンス」の大ヒットは自分の音楽活動とそぐわないように思い、しばらく歌わない時期があったけれど、今は自分にとって大切な歌と思っていると話されていたように思います。
 おそらく彼女の音楽の世界はわたしがテレビで知っていたようなものはごく一部であって、その豊かな音楽性に裏付けられているからこそ、「シルエット・ロマンス」は珠玉のバラードになったのだと思います。
 そう思うと、出自は違いますが島津亜矢がこの歌を完璧に歌えるのもまた、この歌の解釈が大橋純子とほぼ同じで、なおかつ彼女に劣らないポップスシンガーとしての才能にも恵まれているからだと思うのです。

 島津亜矢の音源は残念ながら公開されていませんので、おすすめの「SINGER2」をお買い求めくださることを願っています。ページトップの視聴版でさわりが聴けます。
大橋純子 「 シルエット・ロマンス」
ほんとうにこの人はこの曲のオリジナル歌手に値する素晴らしいボーカリストだと思います。
徳永英明「シルエット・ロマンス」
いろいろなひとがカバーしているのですが、この人はさすがだと思いました。
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