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2014.05.20 Tue 島津亜矢と天童よしみ「BS日本のうた」

 5月18日のNHK「BS日本のうた」のスペシャルステージは、天童よしみと島津亜矢の共演でした。この番組の目玉であるスペシャルステージは1時間半の番組の中の40分を確保し、2人(時には3人)の歌手がそれぞれのオリジナル曲とカバー曲を交え、共演(競演)するコーナーです。
 わたしの友人の中ではBS放送を見ている人は少なく、またおおむねは演歌歌手が出演するこの番組を観ている人はほとんどいません。わたし自身、演歌の番組を観るようになるとは思いもしませんでしたが、妻の母と同居し、また島津亜矢を知ってからは日曜日の夜7時半からはじまるこの番組をよく観るようになりました。
 島津亜矢を出場させない紅白歌合戦の制作チームにはいつもがっかりさせられるのですが、「BS日本のうた」は島津亜矢の歌唱力と独自の音楽性を高く評価し、彼女の魅力を引き出すことに成功した数少ない音楽番組であることに異論はないと思います。
 その中でも、番組の評価が左右されるスペシャルステージへのたびたびの起用は、この番組の制作チームが寄せる島津亜矢に対する全幅の信頼と期待をよくあらわしていて、また島津亜矢もその信頼にこたえ、期待以上の結果を残してきました。
 古くは彼女が尊敬する北島三郎と共演した映像などが残されていますが、わたしが注目しはじめた2009年からでも長山洋子、布施明、水森かおり、森進一、鳥羽一郎とのスペシャルステージは今でも心に残っています。
 今回の天童よしみとのステージは、それらのステージに劣らず感動的なステージになりました。

 島津亜矢の「演歌桜」、天童よしみの「あんたの花道」ではじまったステージは、一緒に歌った「無法松の一生(度胸千両入り)」、「瞼の母」、「美しい昔」と天道よしみの「一声一代」をのぞき、すべて1コーラスのみの歌唱で、はずせば大非難が押し寄せたかもしれません。
 ふつうは2コーラスで、できればフルコーラスで歌ってほしい、歌いたいという常識を破り、すべてを1コーラスでつらぬく大胆かつ冒険的な構成のもと、その1コーラスを力強く優しく切なく歌い上げ、歌いつなぐ2人の歌は、1コーラスどころかひとつひとつの歌が組み合わされた壮大な組曲のようでした。そして、あたかも天童よしみと島津亜矢のそれぞれの決して穏やかではなかった歌手人生、花も嵐も吹きすさぶ荒野をたったひとりでふみわけてきた2人の人生をふりかえる旅のようでもありました。
 天童よしみは伝説のオーディション番組「全日本歌謡選手権」で竹中労に見いだされ、「風が吹く」で再デビューを果たしたものの不遇の年月を過ごしました。1985年、テイチクに移籍後の「道頓堀人情」を一か月300件の営業をこなし、その成果がヒットへとつながり、ようやく歌手としての人生を再出発させることができたといいます。
 島津亜矢もまた長い不遇の時代にレコードの手売りをしていると、「一枚しか買えないけどください」と、腹巻からなけなしの1000円札を取り出したひとりのおじいさんの姿が目に焼き付いているといいます。
 くしくも天童よしみがテイチクから「道頓堀人情」で再出発した年の翌年に16歳の若さで同じテイチクからデビューした島津亜矢を、天童よしみはいつも暖かい心で見守り、はげましたくれたと島津亜矢自身が証言しています。
 「天童よしみさんと各地を旅していた夜、一人が怖くて天童さんの部屋で寝ていました。『亜矢ちゃん、前髪はこうして巻くんやで』、『そこんところはこうして歌うんやで』と、いろんな話をしてくださって、いつも安心して甘えていられて楽しい楽しい旅でした。尊敬している天童さんから歌のこともたくさん学ばせていただきました」。

 そんな二人の絆を知っても知らなくても、今回のステージで14曲もの歌を歌いつなぎ、最後に「美しい昔」を熱唱した彼女たちが、歌いながら見つめながら手を握りながらお互いがお互いを見守りながら慕いながら、決して短くはない歌手人生をふりかえり、思いを深くしていたことがこの番組を観たわたしたちと、その時幸運にも会場にいたひとたちに伝わり、心を熱くしたことはほんとうのことでした。
 「亜矢ちゃん、ここまで、このステージで一緒にこうして歌うところまで、お互いよくやってきたよね。わたしたちでわたしたち自身をほめてあげたいよね」と天道よしみは言い、「よしみさん、16才だったあの時から悲しみもうれしさもすべて歌うことで通り過ぎてきました。どんな時もわたしを見守り、励ましてくださったよしみさんと今、同じステージに立っているわたしを誇りに思います」と島津亜矢は言っているようにわたしは思いました。
 「美しい昔」をそれぞれが熱唱した後、一緒に歌い始めると天童よしみの方から手を握り、最後まで話さなかったことや、歌い終わった瞬間に天童よしみにすがりつき号泣する島津亜矢と、何度も何度もうなずきながら島津亜矢を抱きとめた天童よしみ。何度も録画ビデオを見直してはわたしもまた涙涙でした。
 この番組ではスペシャルステージになる前はひとりの歌手のライブコーナーだったそうで、その頃の島津亜矢のひとりライブは伝説と語り継がれるほどの熱唱だったようです。2000年前半ですでに完璧な歌唱力と声量で圧倒的な存在感を持っていた彼女は若くてきれいで、歌うことにとりつかれた天才といってもいいと思います。
 しかしながら、今の島津亜矢はそれからの長い時をへて、とくに最近は芝居をすることで二人で、あるいはたくさんひとと一緒にひとつの舞台をつくりあげる楽しさを知っているのでしょう。いつの場合も誰と共演する場合も共演者への心配りはもとより、とてもリラックスしていて、いい意味で隙だらけで、やわらかくふところの深い歌を歌うようになったのではないでしょうか。
 今回のステージでは共演者が長年にわたる深く親密な関係を持ち、比類まれな歌唱力と声量の持ち主である天童よしみであることから、島津亜矢は相手への心配りはあった上で、まるで先祖がえりをしたように自分の持てる声量も歌唱力も惜しみなく押し出し、天童よしみも待ってましたとそれを受け止め、テレビ画面がゆれるほどの迫力でしたから、会場ではきっと空気がどよめいていたことでしょう。
 個別の歌のこと、とくに「無法松の一生(度胸千両入り)」や「瞼の母」、「美しい昔」のことなどについては、書ければ次回にも書きたいと思います。

島津亜矢「無法松の一生(度胸千両入り)」

天童よしみ「無法松の一生」 

カーン・リー「美しい昔」

天童よしみ「美しい昔」
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