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2014.01.26 Sun 島津亜矢「かあちゃん」を聴きながら・2

 先日の「NHK歌謡コンサート」ですが、見逃してしまいました。
 2010年以来はじめてのことで、いつもはその時間に家にいてもいなくても録画しておいてしばらくは何度も見て楽しんできたのですが、わたしとしたことが今回はうっかりしてしまいました。
 たまたまその日は用事があっておそくなり、妻から「島津亜矢さんの『かあちゃん』、よかったよ」と聞かされました。「あんなに丁寧に歌うひとはいないよね。歌もいい歌やね」と、最近は妻の評価もずいぶん高くなってきました。
 そんなわけで、今回は番組の感想を書けないと思っていたら、ユーチューブについこの間放送されたBS朝日の「日本の名曲~人生 歌がある~」から、フルコーラスで歌った「かあちゃん」がアップされていて、とてもうれしくなりました。
 この歌をまだ聴かれたことのない方はぜひ一度聴いてみてください。
 この映像を製作されているLUXMANさんは島津亜矢の貴重な音源や映像を提供してくださっている方で、島津亜矢の長い歌手人生のその折々の姿をわたしたちに届けて下り、わたしのブログでも大変お世話になっています。
 以前に書いたかもしれませんが、映像においても音楽においても残された記録は取り返しがつかず、時には残酷なものですが、島津亜矢の場合は若い時も最近もどの時間を切り取っても、その時々の島津亜矢の珠玉の歌唱とパフォーマンスに圧倒されます。
 島津亜矢の場合、デビュー当時から現在までひとりの人間がここまで変われるかと思うほど歌唱の在り様は変わっているのに、その透明でナチュラルな声の質感と、どこが限界かなのか見当もつかない声量はまったく変わらないのです。
 変わってきたのはおそらく、オリジナル曲であってもカバー曲であっても星屑のような幾多の歌との出会いに恵まれたことで、それぞれの歌が生まれた時代の空気を呼吸した人々の喜び、悲しみ、出会いと別れをいとおしく隠している「歌の物語」を読む深さと広さが、年を重ねることで進化してきたのではないかと思います。
 ですから、どの時代の島津亜矢も天才歌手としてのパフォーマンスはもちろんのこと、ほんとうはここが一番大好きなのですが、その時々の彼女のひたむきさに圧倒され、とりこになってしまうのです。そして、まだファン歴の短いわたしは残された映像を観ながら「ああ、あの時に彼女のことを知っていて、あのライブに行っておけばよかった。あの時の放送を観ておけばよかった、聴いておけばよかった」と残念に思う一方、今の島津亜矢になるまでに彼女が歩いてきた道を一緒に歩いているようなうれしさも感じます。
 LUXMANさんの提供される映像はそんな島津亜矢への深い愛情が込められているだけでなく、もしかするとライブで聴き逃してしまうかも知れない微妙な表現も取り残さず再現されているように感じられ、いつも感服します。
 長年、音響関係のお仕事をされていた方のようで、お仕事柄、音への感性がするどく、それに裏打ちされた技術で作られる「島津亜矢ワールド」は必見だと思います。
 昨年の秋にオリックス劇場のコンサートに行きましたが、たまたまLUXMANさんがこの時のPA(音響)についてコメントを書いておられたのを読ませていただいたのですが、素人のわたしの感じたことがそんなに間違っていなかったと意を強くしたことがあります。
 ちなみに、好みはそれぞれあるでしょうが、島津亜矢のコンサートの音響は全体としてはハイレベルだと思うのですが、やや高音が張りすぎではないでしょうか。彼女のように天賦の声を持っているボーカリストほど実は音響はむずかしいと思うのですが、わがままを言えば島津亜矢の高音の透明さが限りなく生音に近く聴こえたら最高だと思います。

 さて、「かあちゃん」ですが、いままでの新曲よりは音楽番組で放送される機会が多いように思います。演歌系、歌謡曲系の音楽番組が増え、それだけ島津亜矢の出演も多くなっていることもあり、露出が増えることでこの歌が多くのひとびとの心に届くことを願っています。
 島津亜矢本人のこの歌への思いの深さは、コンサートにおいてCDに収録された2コーラスバージョンを歌うだけでなく、再度3コーラスバージョンを歌っているということでもよくわかります。以前、リサイタルで再度新曲を歌ったことはありましたが、通常アンコールでもない限り、たとえ新曲とはいえ2回も歌うことはまずないでしょう。
 島津亜矢はこの歌の収録時に短縮したこの歌の物語をすべて伝えたいと思ったのではないでしょうか。こんなところにも、無島津亜矢の歌に対するひたむきな思いがあふれていると思います。その思いはお客さんにも伝わり、涙を流すお客さんがたくさんいらっしゃると聞きました。
 わたしは3月25日の神戸でのコンサートに行くことにしていて、まだしばらくは生で聴く機会はありません。その日をとても楽しみにしています。

 わたしは移動中にICレコーダーで聴くことが多くなっていますが、いまは毎日「SINGER2」を聴いていて、「かあちゃん」をその中に差し込んで聴いていますが、まったく違和感がないのです。
 わたしは以前、このアルバムの感想で、収録された16曲の後に最後の一曲が隠れているような思いに襲われたのですが、まさしく「かあちゃん」こそがその一曲だったのだと自分で納得しています。「SINGER2」があったからこそ「かあちゃん」を歌うことになった島津亜矢は、この歌でここ数年の歌唱の丁寧な抑揚をへて、昔ながらの張りのある高音とサビの歌詞の「タメ」を利かした、また新しい表現を獲得したように思います。
 それがゆえに、わたしはこの歌を聴いていると、とめどなくわたしの母親の思い出があふれ、子どもの頃の母の顔が浮かんだり、箕面市民病院の3回の病室のベッドにあおむけになり、口から泡をふきだしながら最後の無言の言葉をわたしに放った母の、青く透明なひとみがよみがえります。
 わたしはこの歌がヒットチャートをにぎわすことを願っているひとりですが、それ以上にひとからひとへと伝わり、静かなヒットソングとしていつまでもひとびとの心に残ってほしいとも思っています。

島津亜矢「かあちゃん」
LUXMANさんの作品
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