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2013.09.23 Mon 島津亜矢「SINGER2」

島津亜矢「SINGER2」
 島津亜矢の新しいアルバム「SINGER2」を買いました。テイチクの試聴ページでさわりを聴き、すばらしいアルバムであることは予想していましたが、いざ聴いてみるとそれ以上というか、戸惑っているという方が正直なところです。
 というのも、カバーアルバムである以上はあくまでもカバーで、どんな歌を選んだのかとか、オリジナルとのちがいや、時にはオリジナルよりも越えているとか、この歌はいただけないとか、そういうことをどうしても考えてしまいます。
 また、島津亜矢が演歌歌手でありながらポップス歌手も真っ青になるほどの歌唱力で歌ってしまうことから、彼女が演歌歌手であることを知らない人ならポップスの歌手と思い、その歌唱力に驚かれるだろうと思ったり、そのことを少し誇らしげに感じるファン心理などもあります。
 しかしながら、実際にこのアルバムを聴くとそんな雑念が吹き飛んでしまうだけでなく、島津亜矢の歌手であることの覚悟や、歌への強い意志のようなものが伝わってきて圧倒されてしまいます。
 実際のところ、総花的でどこかオリジナルに依存するか独自性をきわだたせるかのどちらかになってしまうカバーアルバムが多い中で、このアルバムに収められた1970代から80年代の歌謡曲・フォーク・ポップス・R&Bなどを中心とする16曲の多彩さといい、オリジナルを尊重しながらの独自のアレンジといい、島津亜矢本人の圧倒的な歌唱力といい、このアルバムにはチーム島津のひとつの大きな意志がこめられていると思いました。
 アルバムの最初に収録されたのはセリーヌ・ディオンの「MY HEART WILL GO ON」。映画「タイタニック」の主題歌として世界中の人々が感動の渦に包まれた彼女の最大のヒット曲で、世界中の無数の歌手がCDやライブでカバーしつづけている名曲です。
 わたしは 個人的には正直のところ、この歌やホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」など、国内外にかかわらずいわゆる絶唱型の名曲は苦手なんですが、不思議なことに島津亜矢が歌うと名曲アレルギーが多少和らぎ、それらの歌が生まれた場所への興味がわいてくるのです。
 アルバムの最初にこの歌を持ってくるのは、幾分は島津亜矢がポップスの名曲を絶唱できることを証明する意図があるとは思いますが、それにしても当たり前のこととは言え、その圧倒的な歌唱力と伸びのある透明感あふれる天賦の声で歌い上げてしまう島津亜矢はやはりすばらしい歌手であることは異論のないところです。
 「I Will Always Love You」のように演歌以外のジャンルのラジオ番組などで取り上げられ、驚きと感動を呼ぶとしたら、それはそれでうれしいことです。
 しかしながら、このアルバムにわたしが言葉を失うぐらいに戸惑い、感動してしまうのは実はそこにあるのではなく、ここに収められた16曲のポップス(演歌以外の楽曲という意味合いです)がポップスのジャンルにこじんまりと収まってしまわないからです。
 「MY HEART WILL GO ON」、「かもめが翔んだ日」、「SWEET MEMORIES」、「シルエット・ロマンス」、「ヒーローHOLDING OUT FOR A HEAD」、「ジョニィへの伝言」、「愛のメモリー」、「一本の鉛筆」、「WHEN A MAN LOVES A WOMAN」、「かもめはかもめ」、「逢いたくていま」、「酒と泪と男と女」、「マイ・ウェイ」、「案山子」、「わかってください」、「メリー・ジェーン」。
 この16曲の中に本人の選曲がどれだけあるのか、また千賀泰洋をはじめとするこのアルバムの制作にかかわったひとたちがこの16曲をどんなコンセプトで選曲されたのか、素人のわたしにわかるはずはありませんが、このアルバム全体に流れているものはこれらの歌をそれぞれ1章とする16章のオリジナル組曲のように思えてきます。
 わたしがある種の戸惑いを感じたのはそのことで、カバーアルバムの領域とはちがう島津亜矢のオリジナルの世界が強烈なイメージを持って迫ってくるのです。あたかも最後の1曲がこのアルバムには隠れていて、その17曲目の楽曲はこれらの既成のポップスをはじめとするあらゆるジャンルの音楽を大きく抱擁する新しい音楽への予感そのものとして、このアルバムを聴き終えたわたしの心をいつまでも揺さぶりつづけるでした。
 それを、唐突ですが「島津演歌」のはじまりとわたしには思えるのです。
 これからの島津亜矢はJポップも70年代の歌謡曲もR&Bをはじめとする世界の音楽をも内包する新しい演歌の世界を歩いていくことになるのでしょう。ポップスを中心に組まれたこのアルバムから「演歌」というのはかけ離れているように思われるかも知れません。しかしながら、明治以降の西洋音楽に踏みにじられてきた日本音楽の熱い心を持ち、演歌の再生を宿命づけられた島津亜矢の歌心は7つの海を渡り、世界の音楽のルーツへと旅をつづけるしかなく、このアルバムはその始まりなのだと思います。
 その旅は一方で、天才歌手・島津亜矢がまだ出会っていない、このアルバムに隠れているまだメロディーもリズムも言葉もない17曲目の楽曲を必死に探す旅でもあります。志の高さと熱い心と冒険を恐れない勇気と、何よりも歌と向き合い、その歌に隠れている物語を読み解き歌う島津亜矢にこそ歌われることを望むその一曲を探す刺激的な冒険旅行に、たくさんのファンの方々とともにわたしもまた参加したいと思います。
 島津亜矢と島津亜矢チームが放つ音楽的冒険に満ち溢れたこのアルバムは、正当に評価されたならレコード大賞の部門賞を獲得してもいいはずです。もっとも阿久悠のアルバムを発見できなかったレコード大賞にそれを望むのは難しいのかも知れません。
 願わくば、このアルバムが島津亜矢を知らないロックやポップスのファンには驚きとして、演歌ファンには新しい領域に踏み込んだ「島津演歌」の冒険として受け入れられ、巷に流れ行くことを…。
 収録されているどの楽曲にも若い時の思い出や思わぬ発見があり、また改めて個別の思いを記事にしたいと思います。
 いよいよ25日に島津亜矢が大阪にやってきます。わたしは新歌舞伎座以来で、しかも2011年の冬に最初にコンサートに行った時と同じ3列目の座席で、間近に彼女のステージを見ることでわくわくしているところです。行ってきます。

島津亜矢「SINGER2」3000円(税込)

演歌の好きな人にも嫌いな人にも、ポップスの好きな人もに嫌いな人にも、島津亜矢を知る人にも知らない人にもオススメのCDアルバムです。

島津亜矢「SINGER」3000円(税込)

バラードあり、ロックあり、洋楽あり、演歌歌手のカバーと聞いて想像するものとはまったくちがうワールドワイドな島津亜矢の魅力がぎっしりつまったアルバムです。このアルバムの曲を聴いて虜になったロック好きのファンは、やがて島津亜矢の演歌へと導かれます。(わたしもその一人です。)
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S.N : URL 17曲目の楽曲

2013.09.24 Tue 00:40

tunehiko 様

いつも島津亜矢さんの記事を楽しみにしております。
わたしも17曲目の楽曲を必死に探す旅に参加させていただきたいと
思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

tunehiko : URL いつもありがとうございます。

Edit  2013.09.24 Tue 21:18

S.N様
いつもはげましのお言葉ありがとうございます。
明日はいよいよ大阪公演です。関西で3日昼夜6回連続公演とかなりハードです。今年はずっと体調がいいようですが、元気で乗り切ってほしいと願うばかりです。

フィレオ― : URL Aya・Shimazu

Edit  2013.09.27 Fri 19:34

今晩は。
何時も熱いメッセージ感服しております。 ありがとうございます。
確かにこのアルバムは、Ayaさんを含めて他の追従を許さない
名盤です。スプレンディド!。私は今は音楽の低迷期だと思います。
その中にあって、Ayaさん一人燦然と輝く正にスターです。
バック特に、PFが優れていますし、オーケストラいいですね~
Ayaさんの歌とバックの音が混然としてしかし、一体感があり、
素晴らしい作品です。社交辞令を知らない私ですが、間違いなく
世界に出しても一級品でしょう。

tunehiko : URL

Edit  2013.09.27 Fri 23:00

フィレオ― 様
コメントありがとうございます。わたしはいま、このアルバムをレコーダーでずっと聞いています。専門的なことはわからないのですが、亜矢さんはこのアルバムで、いままでにない新しい声を手に入れたように思います。「かもめはかもめ」、「わかってください」にそれを感じます。「わかってください」のピアノはすばらしいですね。このアルバムの場合、一曲ずつのバンドリストがほしいです。

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