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2013.09.04 Wed 島津亜矢「歌謡コンサート」

 9月3日、NHK歌謡コンサートに島津亜矢が出演し、「感謝状~母へのメッセージ~」を歌いました。残念ながらフルコーラスではありませんでしたが、最近の島津亜矢の歌を聴くとそんなことはどうでもよいほどの歌唱力で、はじめて聴く人にとってはそれがフルコーラスであると感じてしまうほどでしょう。
 この歌は2001年の紅白歌合戦でも歌い、彼女のコンサートでは欠かせない歌で、数えきれないほど歌ってきたステージの中には、涙がこみあげて歌えなくなりそうな場面もよくありました。おそらく彼女の実人生における母と娘の語りつくせない出来事や思い出がかけめぐり、抑えようとしても抑えられない感情があふれ出てしまうのでしょう。
 プロの歌手としてはあってはいけないことなのでしょうが、その場に居ればなおのこと、テレビ画面を通してでさえ、普通では決して音やリズムをはずしたり声を枯らしたりしないこの天才歌手のNGに感動し、思わずもらい泣きしてしまうのでした。もちろん、わたしもその例外ではありません。
 最近の島津亜矢は感情のコントロールがとてもうまくなったように感じます。もちろん、若い時から彼女のたぐいまれな才能はもちろんのこと、歌に対する真摯な姿勢や何よりもお客さんを大切にするサービス精神、歌うことにも最近のように芝居を演じることにも一生懸命な人柄は、これからも多くのファンを増やし、深く魅了してやまないことでしょう。
 しかしながら、最近の彼女には何かそれ以上の安定感と果てしない可能性が彼女の歩く道を大きく開いていて、まことに失礼ながら他の歌い手さんとは立っている場所もこれから向かおうとする場所もまったくちがうような気がします。
 今回の「感謝状~母へのメッセージ~」にしても、たしかに彼女が歌っているには違いないのですが、歌が彼女を引き寄せるというか、歌が彼女を抱き寄せるというか、肉感的でセクシーな歌の女神が乗り移り、彼女の肉体そのものを楽器にしてしまうようなのです。
 その歌は彼女とわたしたちをつつむ大地や風、川の流れや草いきれ、森の眠りや山のささやき、光る海や空のなみだ…、時と場所を越えてこの星の生きとし生けるものたちの奏でる音たちが手をつないでやってくるような、悲しみの中に希望を探し、絶望の中に夢を見つける「新しい歌謡曲」であることでしょう。
 「新しい歌謡曲」のステージに立つ島津亜矢は、以前よりもましてゆったりふっくらしていて、今まで「個性」とよばれる余分なものをどんどん捨てていくことで歌を恋人にしていくようです。時代の不運は彼女に多くの苦難と緊張を与えてきたのだと思いますが、そのために彼女の天賦の才能はたゆまない努力によって鍛えられ、その透き通る声は透明なまま多様な色と形と香りを生み出し、オリジナルでもカバーでもどんなジャンルのどんな歌も真綿に沁み込むように彼女の心にとけていき、そこから湧き出るように彼女の歌が誕生する…。島津亜矢もわたしたちもその「新しい歌謡曲」の誕生する瞬間に立会える幸福感に満たされていて、時代が島津亜矢に追いつく日もそう遠くではないように思うのです。ファンの方だけではなく、多くの方が島津亜矢の最近の変化・進化を感じておられるのも、そのことから来ているのではないでしょうか。

 わたしはこれまで島津亜矢の記事に限らず、子ども時代のことや母との思い出もたくさん書いてきましたし、「感謝状~母へのメッセージ~」のことについても何度も書いてきましたから、もうこの歌のことや母のことなど書くことがないとも思ったり、そんなことを読んでいただくのも迷惑な話かも知れないとも思います。
 しかしながら、ひとはそれぞれちがう人生を生きながら、やはり同じ時代を生きているのでしょうから、わたしの特別変わったものでもない人生でも、その時代を証言することもあるのではないかと思っています。
 そして歌がその時代を生きる個々の人生を語り、歌うことで時代の記憶を用意してくれるのだとすれば、わたしにとって「感謝状~母へのメッセージ~」は母と兄とわたしが身を寄せ合って生きていた子ども時代を思い出させ、母への感謝の気持ちとともに、必死に生きたはずの母の人生がどれだけの悲しみとどれだけの絶望とともにあったのか、そしてそれほど親孝行とは言えなかったわたしが彼女の深い愛情に報いることができなかった後悔も呼び起こし、切ないという言葉では言い表せない感情に震えてしまうのです。

2012年9月9日の記事・島津亜矢「感謝状~母へのメッセージ~」
今年の7月、母の17回忌の御講を兄の家で行いました。

島津亜矢「感謝状~母へのメッセージ~」
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