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2013.05.26 Sun 島津亜矢と美輪明宏と昨年の紅白

 島津亜矢のファンであるわたしは、昨年はもしすると島津亜矢が紅白歌合戦に出場するのではないかと、かすかな希望を持っていました。
 ここ2、3年の彼女は阿久悠の残した歌をアルバムにしたり座長公演を大成功に収めたりと、失礼だけれども演歌枠で出場する歌手にくらべてそん色がないどころかはるかに高いパフォーマンスを実現し、紅白の出場基準である「話題性」にもあふれています。
 その上に「BS日本のうた」や「歌謡コンサート」などでの圧倒的な歌唱力と表現力をNHK自身が大いに評価しているはずですから、実のところ昨年はほんとうにがっかりしてしまいました。2009年におなじように注目していた「いきものがかり」があっさりと出場し、昨年は大トリをつとめるまでになったのに比べると、やはり演歌枠ではなかなか出場は困難なように思ってしまいます。彼女がもしポップス歌手であったならその実力と長い経歴から言って連続出場も夢ではなかったはずです。
 紅白に出場しなくても東京ドームを満席にする大スターやビッグバンドはたくさんいますし、ましてやそのひとの音楽性が傷つくはずもないのですから、いまだに紅白が大衆音楽を担う人々の大きなステータスになる現実から解放されて、島津亜矢にはもっと自由な音楽活動の場が用意されることを願わずにはおられません。
 そうはいっても島津亜矢の多彩な才能が世代を越え、ジャンルにとらわれず、より幅広く浸透していくために紅白がいまだにその役割を持っていることもたしかである以上、わたしはここ数年、とても悩ましい年末を過ごしてきたのでした。ただ、わたしは軟弱なファンで、昨年も島津亜矢が出ない紅白を見てしまいました。

 昨年の紅白歌合戦のトピックスは、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」だといわれています。このひとについてはなかなか通り一遍には語れませんが、最近の紅白に対する警鐘としては意味のあるものだったと思います。
「ヨイトマケの唄」は、銀巴里を拠点に活躍していた丸山明宏(美輪明宏)が福岡の炭鉱労働者を前にシャンソンを歌ったとき、「このひとびとのことを歌うシャンソンがなければならない」と思い、作詞作曲した歌でした。
 戦争の爪痕が残る時代に社会の底辺で生きる多くのひとびとの切ない夢と希望といくつかの決意、そして時代が自信をとりもどしていくプロセスの中で、まだひとびとが「みんな幸福になれる」という幻想を抱くことができた時代までを歌った日本発のシャンソンとして、時代を越えて歌い継がれる名曲だと思います。
 島津亜矢はこの歌を、おそらくは美輪明宏自身が想像できないところから歌っていて、わたしは兄とともに私生児として生まれ、母が命をけずるようにしてわたしを育ててくれたことから、正直なところ「岸壁の母」よりも胸にせまってくるものがあります。
 高度経済成長のジェットコースターから振り落とされ、膨張し続けた幸福幻想が破裂した今、散らばった幸福幻想の破片にしがみつくように生み出される時代のあだ花(アイドルたち)のカタログとなった紅白歌合戦は、「のど自慢」とともに戦後民主主義を代弁してきた役割をすでに終えていることを、美輪明宏はモノクロの映像と過剰な表現でわたしたちに見せつけたのでした。
 わたしはアイドルも嫌いではなく、時代の風をもっとも敏感にキャッチした曲作りとパフォーマンスに圧倒されることもあります。
 しかしながら最近の紅白のようにアイドルのひとたちにおんぶにだっこの演出は、あまりにも貧しく、クリエイティブとは程遠いのではないでしょうか。
 とくにAKB48の若い女性たちをコンパニオンのように扱っているように見えて、とても不愉快になるのです。彼女たちには彼女たちの歌の世界があるのですから…。
 いつもの美輪明宏とはかけ離れた黒一色のシンプルなステージ(実はNHKの「SONGS」ではおなじみです)が、バラエティー化した昨今の紅白に辟易していたひとたちから圧倒的な支持を得たのは当然といえば当然のことでした。

美輪昭宏「ヨイトマケの唄」・2012年紅白歌合戦

島津亜矢「ヨイトマケの唄」

大竹しのぶ「ヨイトマケの唄」
この歌は島津亜矢以外にも多くの歌手がカパーしていますが、よくも悪くも美輪明宏の歌唱力と演出力に左右されてしまうのですが、大谷しのぶの唄はさすが稀代の女優らしく、見事な唄だとわたしは思います。とくにこの唄の「いまは機械の世の中で おまけにぼくはエンジニア 苦労苦労で死んでった かあちゃん見てくれ この姿」という歌詞は時代背景からすればその通りでよいのでしょうが、今のように高度経済成長の神話は崩れ、「普通の幸せ」を望むことが困難な時代にあっては少し違和感を感じます。
大谷しのぶの唄はそこを淡々とあまり偉そうに歌わない点で、私はすきです。
そして、ご紹介する動画がないのですが、島津亜矢は昨年今年とこの歌を再度コンサートで歌っていて、今の歌い方は2007年当時よりは抑揚があり、少し大竹しのぶに近いと感じました。それはまさしく、芝居を経験したからだと思います。
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katuo ike : URL 島津亜矢

Edit  2013.05.30 Thu 19:58

みわ あきひろ、そして、大竹しのぶ。 彼らの歌を?高く評価されていますが、そうでしょうか。
私は所謂ファンでなく、島津亜矢が好きです。 歌手は声です。 声のある歌手、今は島津亜矢しかいません。
シャンソンと言われますが、女性ではエディット・ピアフでしょう。 150センチにも満たない彼女大きな
声でした。 路上で歌っていたからです。 歌の基本は声です。 美空ひばりを、あんなに高く評価する人多
いけど、私は芸人としては、評価しますが、歌手としては疑問です。 ただ、残念なことに昔の歌手上手かった。
「iwill allways love you」島津亜矢、聞いて下さい。上記のお二人さん、そして、美空ひばり。
歌えるかな? 芸では確かにこれから学ぶところあります。しかし声、無論声量、音域ずば抜けている事、
お認めになるでしょう? そして、飾らない、素直で素晴らしい歌唱力。 時代だからしょうがないが、
これだけの人、きっと、大ヒット出します。 その時、渋谷さまは? 島津亜矢は出ません!

tunehiko : URL Re: Re: 貴重なコメントありがとうございます。

2013.05.30 Thu 22:43

katuo ike様
このたびはわたしのつたないブログを訪ねてくださり、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、島津亜矢さんは今もこれからも稀代のリーバでありつづけることでしょう。
わたしは正直なところ音楽のこともよく知らないのに、島津亜矢をはじめとする歌にかかわる記事を多く書いてしまい、間違っているところがたくさんあると思います。ご指摘の通り、的をはずれている点はお詫びします。

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