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2013.03.17 Sun 島津亜矢と桑田佳祐と美輪明宏と「ヨイトマケの唄」

 3月16日の朝日新聞の土曜日付録紙「be」の特集記事として「フロントランナー」で桑田佳祐を、「うたの旅人」で「ヨイトマケの唄」を取り上げていました。
 島津亜矢は新しい演歌・歌謡曲として「ヨイトマケの唄」を熱唱していますが、くしくも桑田佳祐は「21世紀に残したい歌」としてカバーしています。
 この歌は「土方」、「ヨイトマケ」という言葉が差別表現として民法各社から敬遠されてきましたが、2000年、桑田佳祐は自身の番組『桑田佳祐の音楽寅さん 〜MUSIC TIGER〜』(フジテレビ)でこの曲を歌いました。番組では「この唄は、俗に放送禁止用語と呼称される実体のない呪縛により長い間、封印されてきた。今回のチョイスは桑田佳祐自身によるものであり、このテイクはテレビ業界初の試みである」と説明され、以降多くの歌手がテレビでも歌うきっかけとなったといわれます。島津亜矢が歌うことになったのもそのあたりではないかと思っています。

 昨年の紅白歌合戦で美輪明宏が歌った「ヨイトマケの唄」は大きな反響を呼び、あの2チャンネルでも絶賛されたそうです。ただ、わたしは美輪明宏のシャンソンについては若い時は若い時なりの、今はより豊かな表現力でさすがと思うのですが、「花」や「愛の讃歌」や「ヨイトマケの唄」については過剰な表現で、正直のところ満腹状態になります。とくに「ヨイトマケの唄」は初期の頃の、あっさり歌いながらも充分すぎる演劇的表現で1960年代の風景を映し出していて、わたしは好きです。
 島津亜矢の「ヨイトマケの唄」には、不安定なグライダーのように夢と希望と絶望を乗せて低空飛行を繰り返していた時代の叫びが詰まっていて、わたしは彼女が切り開くことになるであろう「新しい演歌」、「新しい歌謡曲」のひとつの可能性を感じています。
 それはこの歌が時代そのものを歌うことで、時代をつくり、時代を生き、時代を去って行った幾多の人々の心をくぐりぬけてきた名曲であるからにちがいありません。
 そして、島津亜矢という稀代の歌手にこそふさわしい新しい時代の日本の歌が彼女のオリジナル曲と生まれ、続々と歌われることを強く願わずにおれません。
 余談ですが、紅白での美輪明宏の「ヨイトマケの唄」が圧倒的な支持を受けたことは、いろいろな意見はあるでしょうが、白組の演歌歌手の歌にまでAKB48をまるでコンパニオンのように便利使いした、「女性差別」とも言われかねない迎合的な演出への批判も含まれているとわたしは思います。

 さて、桑田佳祐ですが、わたしはいま、この人の歌謡曲への傾倒にとても期待しています。彼の曲は以前から歌謡曲と思ってきましたが、最近はますますその傾向が強く、この記事でも、「やっぱり自分の血とか本音をリアルに歌えるのは日本語なんです。外人のマネばっかりじゃラチがあかない。いつのまにか歌謡曲というジャンルが日本の音楽シーンから消えていったけど、僕の中では歌謡曲の歌詞だとか節回しだとかが、連綿と残っている。」と話しています。
 昭和の歌謡曲を評価し、歌い始めている彼は、決して活気があふれているとは言えない演歌のジャンルに新風を吹き込む可能性を持っていて、その時に彼の歌を歌えるのは島津亜矢しかいないと思っています。願わくば桑田佳祐さん、ゆめゆめアイドル演歌にその才能を利用されず、島津亜矢というある意味御しがたく、骨太の大器と格闘し、新しい「演歌」と新しい時代を彼女と一緒につくっていただきたい。
 これも余談になるかも知れませんが、昨年の12月14日の三宅裕司のジャズバンドとのセッションの様子を伝える音源があり、島津亜矢が「車屋さん」を難しいアレンジにもかかわらず歌うのを聴くことができます。
 これを聴くと、三宅裕司をはじめこのバンドがかなりの演奏をしているだけでなく、「もし戦争がなかったら日本の歌謡曲はどうなっていたでショー」というコンセプトで、島津亜矢をゲストにしたのは、彼女がジャズスタンダードを見事に歌いこなすことではなく、ど演歌といわれるジャンルの歌を聴き、美空ひばり亡き今、彼らの要求に応えられる歌手として島津亜矢を正しく評価したのだということがよくわかります。
 そして、このバンドのメンバーでアレンジを担当したひとが島津亜矢にけっこうな無理難題を押し付けたようなのですが、緊張しながらもそれをさらっとやってのけてしまうことに、三宅裕司がほめまくっています。島津亜矢の「新しい演歌」への可能性が垣間見えた試みだったことが想像できます。

 今日は午後7時30分からNHKのBS放送で、昨年の2月に放送された「BSにほんの歌」の再放送があり、島津亜矢が水森かおりと40分間のスペシャルステージで共演します。この放送は島津亜矢と水森かおりのファンでなくても感動できるグレードの高いものになっていると思います。とくに島津亜矢の「さくら-独唱」、そして 「瞼の母」は必見必聴です。「瞼の母」については何度も言うようですが、他の歌い手さんが「語り」でこの歌を歌っているのにくらべて、島津亜矢の「瞼の母」は行き所のない青春の暗闇でなみだと刃を光らせる忠太郎という孤独な少年・青年の心情が歌からあふれ、わたしたちの心を震わせます。そして、若い時の唄とはまったくちがい、5月には初めての芝居を経験する前にあり、その準備ができていることを証明してくれたすばらししいセリフ回しにびっくりしたものでした。早いもので、あれからすでに2回もまったくちがったタイプの芝居を演じてしまったのですね。
 そして、火曜日の午後8時からは生放送でNHKの「歌謡コンサート」に出演します。昨年、座長公演の後に大きく変わった島津亜矢を見ることができました。
今回はどのように変わった島津亜矢をみることができるかと、とても楽しみにしています。

この歌と島津亜矢、そしてわたしの母の思い出などを以前にこのブログで書きました。
 
美輪(丸山)明宏「ヨイトマケの唄

島津亜矢&三宅裕司ジャズバンド「車屋さん」
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