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2013.02.21 Thu 島津亜矢・新歌舞伎座座長公演 第一部

島津亜矢・新歌舞伎座座長公演
 
 昨日、大阪新歌舞伎座に行ってきました。
 第一部の芝居も第二部のショーも、新しい島津亜矢を見ることができました。
 体調がよくなかった1月25日の尼崎とは別人のようでした。この人の音楽的冒険、大衆芸能的な可能性がどこまであるのか、わたしたちをどこに連れて行ってくれるのかと、あらためて感嘆するばかりです。
 わたしがそう感じるのは、彼女の音楽や芝居がすでに完成し、円熟しているからではありません。むしろ、正直なところ音楽は別にして芝居に関しては2回目で、演技がどうとかいえるような段階ではないかもしれません。しかしながら彼女の場合、ひたむきに芝居と向き合うことでベテランの役者とひけを取らない覚悟のようなものがあり、百戦練磨の共演者の情熱をかりたて、共に芝居をつくっていこうという熱意を引き出すのだと思います。

 その一部の芝居ですが、実のところわたしは唐十郎に代表されるテント芝居しか見たことがなく、新劇も新派も歌舞伎も能も狂言もミュージカルも、全く見ていないか一度見たぐらいの経験しかありません。新歌舞伎座も島津亜矢の公演でしか入ったことがありません。唐十郎のテント芝居を経験すると、路上劇や、ギリシャなどヨーロッパの野外劇場とつながるところがあり、先日惜しくも亡くなった中村勘三郎が渡辺えり子の誘いで唐の芝居を観て平成中村座をつくったように、大劇場では味わえない小劇場やテント小屋ならではの演劇空間を共有できるのです。
 そんなわけで、この座長公演でなされる芝居についてはよくわからず、的外れかも知れませんが、今回の芝居で感じたことを率直に書いてみようと思います。
 幕が開くと、阪田三吉が住む長屋の住人が何か困ったげにそわそわしています。今日は三吉と小春の見合いの日なのに、三吉がいなくなっているのでした。
 やっと三吉を連れ戻し、みんなが見合いをする料亭へと準備に行ってしまうと、ついうとうと寝てしまっていた三吉の家に直接、小春がやってきます。
 ここで小春を演じる島津亜矢が登場するのですが、昨年の御園座での初座長公演とはまったくちがっていました。どこがちがうのかなと思っていると、それはすぐにわかりました。当然のことながら演目、つまり本(脚本)のちがいが大いにあります。前回は今NHKの大河ドラマで話題の新島八重の会津戦争までを描いた物語で、座長公演にふさわしく芝居の中でも八重を演じる島津亜矢を盛り立て、引き立てるように構成されていたのではないでしょうか。ですから、かねてから定評のある浪曲歌謡や名作歌謡劇場などで培われた演技力がそのまま生かされる芝居でした。最初の座長公演ということもあり、彼女の凛々しい姿を見せる物語と演出が求められたのは当然で、はじめての試みへの緊張感も計算に入れた芝居だったと思います。
 それにくらべて今回の芝居はとても難易度が髙いと思いました。物語自体が前回のような派手なものではない上に、難しい分野といわれる喜劇であること、さらには大阪のお客さんを前にしての大阪弁のせりふ、そして、もっとも難しいのはこの芝居は引き立てられる役どころではなく、阪田三吉を支え、引き立てる妻・小春を演じるということにあります。
 前回の芝居とちがい、セリフが中心で派手な立ち振る舞いがないことは本格的な芝居に求められる立ち振る舞いが大切になります。新歌舞伎座での初座長公演、実質2度目の芝居にしてはかなりの難題を彼女に与えたという意味で、この芝居を企画し、プロデュースしたひとたちはそれだけ島津亜矢の潜在能力に賭けたのではないでしょうか。
 果たして島津亜矢はこの芝居をどう受け止め、小春をどう演じたのかといえば、予想外の演出による予想外の演技をしてくれました。
 前回の芝居では緊張感が走るような登場でしたが、今回の芝居ではまず、舞台空間に馴染んでいて、びっくりしてしまいました。緊張感を排除した人情喜劇のこの芝居ではそのことがとても重要な要素だったとわたしは思うのですが、島津亜矢がこの芝居を受け止め、この物語での小春の立ち位置を決めることができたところから、演技力を問う前にこの芝居は成功していたのだと思います。
 カタログによると当初の予定ではタイトルにもありますように、小春の生涯を描く内容のようでしたが、幕前の長屋のひとたちの狂言回しを取り入れても、やはり時間的にそこまで行けなかったのか、阪田三吉が関根八段に勝ったところで幕になりました。
 また、小春がもっと肝っ玉母さんのような感じかなと予想しましたが、実際は小春が控えめながらも芯が強く、情にあふれた女性として演出されることで、島津亜矢はかえって大阪の空気感を持った女性を好演していました。その反面ややゆったりとした舞台転換のため、「生涯」にまではいかなかったのでしょう。
 それにしても、赤井英和のゆるい演技は素晴らしいものでした。この人もまた、その外観やイメージとはちがい、いい意味でプロの役者とはまた違う瑞々しさを持った芝居をする人だとかねてから思っていましたが、島津亜矢の律儀な芝居につっこんだりボケたり、大阪の空気感を島津亜矢に一生懸命にそそぎ、島津亜矢のかわいらしさを見事に引き出していたと思います。
 その周りを田口計や宮内洋、時代吉二郎、竜川剛、山田スミ子がかため、芦田昌太郎など若手の役者も好演しています。
 そして、びっくりしたのは関根金次郎を好演しているおりも政夫です。フォーリーブス時代から、バラエティ番組の司会とテレビドラマぐらいしか印象がなく、また新歌舞伎座は初舞台ということですが、なかなか存在感のある芝居をしていました。
 第二部では「見上げてごらん夜の星を」を歌いましたが、こちらの方もなかなかの歌唱力でしたし、定評あるトークでも「島津亜矢さんの歌唱力にぶっ飛びます」というと、客席がどっと沸きました。
 また、関根八段に勝った三吉が土下座をしながら、「みんなお前のおかげや」というと、小春が「あんたの人徳や」といい、三吉が「人徳てなんや」と返す場面の島津亜矢の演技をほめていましたが、この場面の赤井英和と島津亜矢の芝居にお客さんが泣いて笑ってしまったところです。
 出演者が島津亜矢の人柄に共感し、チームワークのよさが舞台ににじみ出ていて、とても気持ちのいい芝居でした。カタログのインタービュアーが、「島津亜矢さんの持つ『力』、それは『歌唱力』や『演技力』とは別に、『人の心を動かす力』だと、舞台から感じることがあります。」と言っていますが、まさしくその、島津亜矢の「人の心を動かす力」が共演者とお客さんをこの新歌舞伎座に引き寄せ、感動を呼び寄せたのだと思いました。
第二部については次回に感想を書きたいと思います。
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MORI : URL 同じ思いでした

2013.02.21 Thu 16:13

tunehiko様、おつかれさまでした。
第一部の感想を読ませて頂いて、私も共感するところが沢山ありました。
見事に大阪のおばちゃんのイメージを崩してくれました。
目頭が熱くなったところで、ストンと笑わせてくれる、tunehiko様のおっしゃるとおり、泣きながら笑ってしまいました。
オール巨人さんも観覧されたようです。
ボクシングの内藤さんもテレビ番組の収録でお母さんといっしょに来場されたようです。(後日放送もあるようです)
千秋楽はどんなことになるのか想像もつきません。
第二部の感想を楽しみにしています。

tunehiko : URL まだ興奮しています。

2013.02.21 Thu 18:34

MORI様
いつもあたたかいコメントありがとうございます。
千秋楽だけのつもりでしたが、我慢できず行ってきました。
ほんとうに、何度もいいますが、島津亜矢さんのファンでいられて
幸せです。彼女がいなければ、おそらく新歌舞伎座にも行くことがないと思います。
亜矢さんはほんとうにどこまでいくのでしょう。第二部でひさしぶりに歌いなおしたものも、新しいものも、もう昨日までの歌とは違うのです。

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