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2012.05.22 Tue 島津亜矢座長公演3

 加藤訓さん率いる藤秋会のみなさんの津軽三味線の演奏、そしてさわやかな笑顔で島津亜矢が登場し、「流れて津軽」を歌う…。 
 島津亜矢座長公演の第二部、菅原道則・構成/演出による「熱唱!島津亜矢 愛・夢・感動」は、いままでのリサイタルやコンサートのオープニングとはかなり雰囲気のちがう空気につつまれて始まりました。
 わたしは2階から観ていたので細かい表情まではわかりませんが、長丁場の芝居を無事終えた達成感からか、あるいは「本業」の歌を歌える安心感からか、第一部の緊張から解放された島津亜矢が舞台に出ると、やさしいオーラにつつまれたしなやかな色気が立ちのぼってくるのでした。
 ほんとうに、星野哲郎がこの舞台を観ていたらと本人、関係者、そしてわたしたちファンも胸が熱くなる中、その星野哲郎が島津亜矢に送った最高の贈り物「海で一生終わりたかった」と「海鳴りの歌」を熱唱し、早い場面転換で田中健が白いスーツに白い帽子で登場し、少し長めのトークがありました。
 ちょうどわたしが観に行った17日の夜の部で、立ち回りの最中に田中健が持っていた刀が聞く席まで飛んでしまうというアクシデントがあり、何度もそれを謝っていました。
 わたしは舞台、テレビを通じて田中健の時代劇は観た記憶がないのですが、ずっと好きな役者さんでした。今回、島津亜矢の相手役で盛り立て役という、それなりに難しい役柄を見事に演じられてさすがと思いました。それと、何といっても人柄のよさが伝わってきます。この時のお話でも島津亜矢へのあたたかい心遣いとともに、彼女の芝居に向き合うひたむきな姿勢、表現することへの貪欲さ、そして役者としても大化けするかも知れない予感を、言葉の端々にわたしたちに伝えてくれました。
 トークが終わり、ケーナで「コンドルは飛んでいく」を演奏してくれました。パンフレットによると「帰らんちゃよか」を島津亜矢と共演するとありましたが、残念ながらそれはありませんでした。演奏の後半、素川欣也の尺八がからみ、また亜矢スペシャルバンドの演奏も素晴らしかったです。
 この後、「スワニー」、「Come On A My House」、「テネシー・ワルツ」とスタンダード・ジャズを歌いましたが、構成・演出された菅原道則さんが意図されたとおり、島津亜矢は美空ひばりがいない現在、ジャズを歌える数少ない演歌歌手であることをあらためて認識させられました。もっともこの3曲は美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみを手本にしていると思うのですが、島津亜矢にはもっと黒っぽいジャズを歌ってくれないかなと思います。ルイ・アームストロング、ビリーホリデイ、アガサ・フランクリンなどのジャズやR&B、ソウルなどを歌えるはずで、島津亜矢の新しい魅力を発見できるのではないかと思うのです。
 亜矢スペシャルバンドは島津亜矢のボーカルバンドではありますが、それだけではない高い音楽性を持っていて、コンサートやリサイタルでいつも感心していたのですが、このステージでもその実力をみせてくれました。このバンドなら本格的なジャズを演奏できるので、島津亜矢の本格的なジャズも夢ではないでしょう。

 そして、このステージの最高のパフォーマンスはなんといっても葵好太郎との共演でした。名作歌謡劇場「梅川」をモチーフにした舞踊になるのでしょうか、最高でした。はじめてライブで大衆演劇の看板役者・葵好太郎の芝居も舞踊も立ち回りも見せてもらいましたが、その存在感たるやすごいものがありました。お客さんとの距離が近い舞台で演じる大衆演劇の役者独特の立ち振る舞い、摺り足の演技、背中の演技に華と色気が匂い立っていました。
 それよりもびっくりしたのは島津亜矢が葵好太郎に劣らず見事な演技で、二人が寄り添い、絡み合う後姿は、元に戻れない悲しい運命へと導かれる「梅川」の物語を語ってくれました。その間、歌もなく、たしか舞台上段で葵好太郎が役人に引っ張られていく場面一か所だけ、島津亜矢のセリフが入りました。
 すぐれた演出と、おそらく島津亜矢が持っている大衆芸能の本流への鋭いアンテナが働いた結果なのか、この時の島津亜矢のセリフには名作歌謡劇場でのもっとも盛り上がる絶叫はなく、ぐっと抑えたセリフ回しの中に切ない情念が込められていました。のどの調子で声が出なかったという意見もありますが、初座長公演ですでに名作歌謡劇場とはちがう新しい表現を身に付けたのだと、わたしは思いました。
 その後、すぐに阿久悠作詞の名曲「想い出よありがとう」をもって来る構成には、島津亜矢という稀代の歌手がもっともきらめくところを熟知している演出家のセンスの良さを感じました。「恋慕海峡」、「一本釣り」とつづく熱唱の後、最後の「おてもやん」にたどり着きました。
 2部のショーは時間的には短く、歌もすくなかったのですが、とても中味の濃いステージでした。彼女のコンサートやリサイタルとちがい、田中健や葵好太郎、そして津軽三味線やダンス、亜矢スペシャルバンドと、それぞれのパフォーマンスが舞台を華やかに、そして奥行きのあるものにしていて、とても楽しかったです。
 リサイタルやコンサートでは島津亜矢はたった一人で舞台に立ち、たくさんの観客を魅了し、リピーターを増やし続けているのですからほんとうにすごいと思う一方で、だれかひとりでもゲストを呼べば、少しは彼女の負担が軽くなり、またゲストに刺激されてより素晴らしい舞台になるかも知れないと、勝手なことを思ってしまいました。
 そして、単に歌手の座長公演では満足せず、2幕7場、約2時間、本格的な芝居を中心につくり上げた今回の公演の関係者の方々、出演者の方々、そしてわれらが座長・島津亜矢の心意気とひたむきさに感動しました。
 願わくば、千秋楽まであと少し、みなさん体調を崩されませんように…。

 名古屋には依然仕事で来たことはありましたが、今回はじめて名古屋見物をしました。といっても2つの庭園に行っただけで、どうもわたしの行くところはひと気のない所ばかりで、朝ごはんも昼ごはんもお店がほとんどなくて苦労しました。
 17日の昼は御園座の近くにある名古屋市立美術館に行きましたが、そこで高校生の頃気になっていた荒川修作の作品と遭遇し、思わぬできごとでとてもうれしく思いました。
 残念ながら一昨年に亡くなってしまいましたが、彼が愛知県出身であることもはじめて知りました。
彼の作品はおよそ一般的な絵画とはほど遠く、今見てもやっぱりよくわからないのですが、もともと芸術や表現をわかるとかわからないとかで観てしまうこと自体がナンセンスだと教えてくれた作家です。
 今回久しぶりに作品を見たのですが、その場ではじっと見ていてもしかたないと思うのですが、あとになってずっとその作品が目に浮かんできてしまうのです。その時にはもうわたしは彼の術中にはまってしまっていて、彼の芸術そのものというか、不思議な思考空間の中に居心地悪そうなわたしの心が迷い込んでしまうのです。
 うまく伝えられないのですが、アートというか美術と言うか絵画と言うか、言葉で語ってくれたり歌を歌ってくれたりしない、静かないじわるをしてくる現代芸術の中でも、荒川修作は特別なひとで、ずっと付き合うのは疲れるのですが、時々は非日常な体験をするのもいいのかなと教えてくれる芸術家でした。
 島津亜矢と荒川修作、この組み合わせはわたしにとっても最大のミスマッチではありましたが、高校生の時、美術部員だったわたしの青春の1ページに荒川修作がいたことをあらためて教えてくれた今回の名古屋行きは、とても楽しい旅行でした。
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