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2012.05.20 Sun 島津亜矢座長公演2

島津亜矢座長公演

 前回は公演の内容について書きませんでしたので、今回は一部の芝居の方から、内容をお伝えしたいと思います。
 堀越真・脚本、北村文典・演出による「会津のジャンヌ・ダルク~山本八重の半生~」のモデル・山本八重(新島八重)は、幕末から明治、大正、昭和にかけて、激動の時代を生き抜いた稀有の女性として知られています。
山元八重の生涯はおよそ3つの時代に分けることができます。会津若松に生まれ育ち、戊辰(ぼしん)戦争で洋式銃をとって戦いぬいた娘時代、のちに兄の覚馬を頼って京都に出て新島襄(にいじまじょう)と結婚、洋装のクリスチャン・レディとして生きた時代。そして襄の死後、静かに自適の生活をおくりながら、日清・日露戦争の時の篤志(とくし)看護婦として救護活動に奔走しました。
 ちなみに、来年の大河ドラマでは綾瀬はるか主演でその生涯が描かれるようですが、今回の芝居では娘時代、戊辰戦争で維新派の薩摩郡を相手の籠城作戦で、洋式銃を持って戦うも、城を明け渡すまでの青春時代が描かれています。
 島津亜矢の歌には、男に仕えたり依存したり、また「耐える女」の歌は数少なく、凛とした女性の歌が多いのでわたしは好きですが、ただし、名作歌謡劇場は題材が近松などの心中ものが多く、女性にとって不幸な時代に翻弄される女性の悲劇が描かれています。そのためにいまでもわたしはすんなりとはその世界に入れないでいるのですが、ただしこのシリーズで島津亜矢はドラマツルギーを学び、また情感あふれる女歌の表現を学んだことはよくわかります。
 そんなことを思うとこの芝居は島津亜矢にぴったりで、山本八重のまっすぐな生き方、男勝りと言われてしまうけれど、ほんとうはとてもかわいらしい心持をたずさえた会津武家の娘という役どころは島津亜矢の実像と重なるところが多く、役柄に共感しながら演じる彼女の姿がとても愛おしく感じました。
 共演者は田中健他、舞台経験が豊かな役者揃いで、芸達者な役者で脇を固める座長公演のセオリー通りなんでしょうが、その分ある意味、島津亜矢という「新人役者」の演技がより新鮮に見えました。それもまた、いい共演者に恵まれた結果だと思いますが…。
 そして、わたしの個人的な好みで言えば、葵好太郎がすごく良かったと思います。大衆演劇の劇団の座長をつとめるこの役者には、河原乞食につながる大衆芸能の匂いがあり、島津亜矢の魅力とどこかでつながっているように感じました。
 この芝居の見せ場として、会津の殿様が京都から戻り、山本八重が殿様にお目見えする場面がありました。八重と家が隣同志で弟のように可愛がっていた葵好太郎演ずる白虎隊隊士・伊藤悌二郎が、白虎隊自刃の場・飯盛山をイメージした舞台上段で、仲間と共に切腹します。間髪を入れずに舞台前面にうずくまっていた八重が、「もうこれ以上、一人も死なせたくない」と、戦いをやめるべきだと叫びます。まわりの武士は何を言うかと八重を制止しようとすると、佐野圭亮演ずる殿様が自分もそう考えていたと言うのでした。
 それまでにも葵好太郎と島津亜矢のからみがいちばんなじんでいると思ったのですが、この場面での葵好太郎も島津亜矢もこの芝居で一番良かったのではないかと思いました。脚本もよかったのですが、飯盛山のイメージを舞台上段に置くことで回想のような効果をつくり、舞台空間を複層化する演出も光っていました。
 今生の別れとなる夫・川崎尚之助を演じた田中健が「絶対に死んでは行かん」と説得力のあるセリフとともに花道を去るラストの場面もあわせて、この芝居の脚本家も演出家も、戦いの中で多くのいのちが奪われてしまうことへの怒りや悲しみと、もうこれ以上いのちがうばわれ、傷つかないことを祈らずにはいられない、そんな思いがメッセージとしてこめられていたのだと思います。それはまさしく、東日本大震災の被災地・福島に熱い思いを寄せながら、奪われた無数のいのちへの鎮魂の祈りをささげることと重なっていたにちがいありません。
 そして、山本八重が、最後の最後に「生きてみよう、新しい時代を生きてみよう」と言う時、すでに彼女の未来に新しい時代の風が吹いていることをわたしたちに予感させて、芝居の幕が下りるのでした。
 島津亜矢の浪曲による狂言回しでつなぎながら、二幕七場の本格的な構成による芝居をいつも凛とした立ち振る舞いで演じてみせた島津亜矢の熱演は、千秋楽に向けてますます進化することでしょう。一回しか観れなくてとても残念な思いです。

 一部の芝居のことでまた長い文章になってしまいましたので、次回は2部のショーについて書かせていただきます。

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  2. まとめtyaiました【島津亜矢座長公演2】

     前回は公演の内容について書きませんでしたので、今回は一部の芝居の方から、内容をお伝えしたいと思います。 堀越真・脚本、北村文典・演出による「会津のジャンヌ・ダルク~山... まとめwoネタ速neo - 2012.05.21 12:34