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2012.05.20 Sun 島津亜矢座長公演1

島津亜矢座長公演

 17日、名古屋の御園座で開催されている島津亜矢の座長公演を観に行きました。わたし自身、まさか名古屋まで追っかけするほど深みにはまってしまったのかと、いささかとまどっています。最初は日帰りも考えたのですが、夜の部で終了が午後8時で、新大阪までは帰れても能勢の家までは難しいので、そのまま名古屋で1泊し、18日はゆっくり名古屋見物をして帰ってきました。

 座長公演の方ですが、ただただ無事に終わってくれることを祈るファン心理が働き、幕が開くまで落ち着きませんでしたが、始まってみるとベテランの共演者を相手に凛とした女性を熱演しました。
 もちろん、歌手の座長公演ですから島津亜矢を盛りたてるための芝居であることにはちがいなく、田中健、山田スミ子、瀬川菊之丞、佐野圭亮をはじめとする役者陣に支えられてこその舞台だと思います。島津亜矢はそのことを充分すぎるほどわかっていて、共演者の心配りに応えられる役者としての力量が問われる緊張の中、彼女の本領であるひたむきさが伝わってきて、初々しくも堂々とした芝居を見せてくれました。
 わたしは座長公演を知った時、どうなるのかなと不安に思うところがありました。セリフ入りの歌と名作歌謡劇場シリーズ、そして歌謡浪曲シリーズでは完璧なまでの演劇性を獲得してきた彼女ですが、共演者とともにつくりあげるほんとうの芝居では自分がすべてを語ってはいけないダイアローグの演劇性を求められます。
 せりふ入りの歌や名作歌謡劇場は見えない相手に向かって語り尽くすモノローグの世界で、島津亜矢は長い年月をかけて独り芝居ともまたちがう独自の世界を築いてしまっています。わたしはそのことがかえってダイアローグの世界である芝居のじゃまになってしまうのではないかと思ったのです。
 しかしながらそんな素人の考えることは島津亜矢にはわかりきっていて、名作歌謡劇場での今までの表現が芝居には通じないと、パンフレットの対談で語っていました。
 いざ芝居が始まると、初舞台でぎこちなさはあるかも知れませんが共演者の暖かいサポートのおかげもあり、過度なモノローグの世界を捨てて芝居の中に溶け込んでいました。彼女のしなやかな感性となみなみならぬ努力が垣間見えて、さすがだと思いました。
 最初の心配もなくなり、芝居そのものを楽しむことができました。

 今回の座長公演で島津亜矢が得るものはとてつもない財産になることでしょう。デビュー以来、天賦の才能を自らのたゆまぬ努力で磨き上げてきた彼女は、おそらくこじんまりとまとまってもいい演歌の世界にただ安住することなく、世界のポップスや日本のポップスから戦前にまでさかのぼる歌謡曲に挑戦してきました。
 わたしは島津亜矢の存在を知ることで、唐十郎の「特権的肉体論」ではありませんが、歌の作り手としての作詞家や作曲家よりもお客さんと直接対置する歌手の存在が歌のすべてであることにあらためて気づかされました。
 海の向こうのジャズの場合はもっとはっきりしていて、歌の作り手はほとんど意味をなさず、その場での演奏者たちのバトルにこそ音楽のすべてがあるといわれます。
 島津亜矢のさまざまなカバー曲を聴いて、わたしはその曲のすばらしさに感動するだけでなく、オリジナルの歌手さえも好きになってしまいました。実を言うとわたしは谷村新治やさだまさし、松山千春がそれほど好きではありませんでしたが、「Singer」というカバー曲を収録したアルバムで島津亜矢が歌う「昴」、「秋桜」、「恋」を聴いて、これらの曲があらためてとてもいい曲であることを教えてもらっただけでなく、彼らのことも少し好きになってしまったのでした。
 それほど、それらの歌が生まれる瞬間の空気や作り手の心のゆらぎをとらえ、真摯に歌う島津亜矢のカバー曲は、すでに自分の歌といっていいほど完成されています。
 そんな彼女ですから、座長公演という舞台でなにもかも新しい経験を得ることで、彼女の歌はより豊かな表現力をもつにちがいありません。いや、すでに2部のショーでは、その片鱗がうかがえました。

 伝え聞くところによると、来年2月には大阪の新歌舞伎座で座長公演が開かれるそうです。初演でこれだけの内容で、また連日の大入り満員と来れば、当然のことだと思います。これからどんどん大化けしていく島津亜矢を、わたしたちファンは戸惑いながらもわくわくしながら追いかけることになりそうです。
 その上で、これはわたしのわがままですが、島津亜矢はあくまでも歌姫でいてほしいのです。彼女の好奇心から行くとそれはむりなことで、芝居の魔力にとりつかれるかも知れません。
 座長公演を重ねることで「単なる座長公演」を越え、しかも新派でも新劇でもなく、どちらかといえば大衆演劇に近いパフォーマンスへと向かえば素晴らしい舞台をみせてくれるかも知れないと思う一方で、やはり彼女の天才は歌にあり、天命もまた歌うことであると思います。これからのとてもゆたかな時間を、願わくば世界に届く日本の歌を歌える人でいてほしいと思います。
 
 まずは初座長公演の大成功を喜びつつ、1部の芝居を楽しんだことを書いていたらすでに長い文章になってしまいました。
 芝居の内容や2部のショーのこと、名古屋見物のことは次につづけて書こうと思います。

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