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2012.05.15 Tue さまざまな壁を楽々とのりこえ、こころに伝わるジャズと津軽弁

 これまで私は自分からジャズを聞こうと思ったこともないし、ジャズに精通している人たちの会話には全くついていけない疎外感もあった。
 その私の中の偏見が、あるCDを聞いた時、少し変わった。伊藤君子さんの「津軽弁ジャズ」。何年か前に仕事でへとへとになる日々が続いていた頃、同僚のつれあいさんが私にプレゼントしてくれた。
 床にゴロンと横たわり、目を閉じてCDを聞いた。英語と津軽弁が何の不自然さもなくつながっている。英語も津軽弁もところどころ少し意味がわかる感じがするが、聞いているだけでは意味がほとんどわからない。でも、力強い声量たっぷりの、のびる歌声に心地よい解放感を感じた。中でも「My Favorite Things=私(わ)の好ぎなもの」の津軽弁は、何となく意味がわかる。「もうまいったなと思うときも好きなものを思い出せば大丈夫!」というこの歌で、浅かった呼吸が少し楽になった。

 去る4月13日、その伊藤君子さんが大阪に来るということで、人生で初めて「ジャズ」のライブに臨んだ。同僚、知人と7名で梅田のロイヤルホースへ。緊張する。開演までの間、おいしい食事とビールでちょっとホッとする。予定時刻より幾分遅れて開演。ピアノとベースの軽快な演奏ではじまり、伊藤君子さんが登場。シックな黒の衣装に大きなイヤリングがキラキラ眩しい。「なんかみんな硬いよー。海の底にいるみたい。」と会場を見渡し、伊藤君子さんがひとり一人の顔を見て語りかける。「リラックスして楽しんでくださいね。」お客さんひとり一人に語りかけるように伊藤君子さんの歌が始まった。
 やがて歌にマッサージされるかのように、硬かった体が徐々にもみほぐされていく。一曲終わるごとに伊藤さんの言葉が入り、思っていたより随分気さくな人となりが伝わってきた。CDで聞くのと最も違う点は、その場に居る人と一緒に同じ時間を共有し、コミュニケーションを楽しんでいるという実感である。ピアノやベースの人に対する心遣いを常に忘れず、観客ひとり一人が楽しめているかどうか、気を配りながらライブがすすめられていくところに伊藤君子さんの温かい人柄を感じた。
 最初は英語を聞き取ろうとしたり、意味を考えたりしていたが、途中から頭で考えることをやめた。時には遠浅の海に浮かんで音楽を聴いているような、また時には全身の力をふりしぼってこころに溜まったもやもやを吐き出すような肌の細胞からストレートに音楽が入ってくる感覚が気持ちよかった。
 
 歌は、さまざまな壁を楽々とのりこえて人のこころを動かすことができると思う。
また、津軽弁という方言は、単に意味をあらわす記号としての文字にとどまらず、その言葉が生まれた風土や文化がその背景にある。
 伊藤君子さんの津軽弁ジャズのCDの最後に、「別離(へばだば)」という曲があり、伊奈かっぺいさんと伊藤君子さんがボーカルで歌っている。津軽弁の歌詞は標準語訳の歌詞を見なければほとんど意味がわからない。コテコテの大阪人である私には外国語と同じでようなものである。しかし、心がキュッとなるようなさびしさと相手を包み込むようなやさしさが伝わってくる。津軽弁の訛りには、朴訥(ぼくとつ)とした、飾らないやさしさがある。津軽に行ったことはないけれど、伊奈かっぺいさんの育った土地のにおいや海の波しぶき、人々の習慣など故郷のぬくもりが津軽弁のなかにあるからこそ、こころに響くものがあるのだと思う。

 6月24日のイベント「伊奈かっぺい&伊藤君子ライブ(トークとジャズ)」がどんな展開になるのか、主催者側である私たちもドキドキしている。でも、伊奈かっぺいさん、伊藤君子さんと共に過ごす時間の中で、日頃忙しさでストレスに縛られているこころと体が少しでも解きほぐされることを願っている。豊能障害者労働センター30周年記念のこのイベントが、また新たな一歩を踏み出せる出発の時となりますように。
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     これまで私は自分からジャズを聞こうと思ったこともないし、ジャズに精通している人たちの会話には全くついていけない疎外感もあった。 その私の中の偏見が、あるCDを聞いた時... まとめwoネタ速neo - 2012.05.16 05:36