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2011.10.15 Sat 島津亜矢と布施明 ふたりの「マイ・ウェイ」

逢うたびに うれしくて
逢えばまた せつなくて
逢えなきゃ 悲しくて
逢わずにいられない
それというのも 君のためだよ
ぼくのこの胸も 恋にふるえてる

 DVD2002年リサイタル「進化」で最初におどろいたのがこの歌、「恋」でした。わたしは布施明の特別のファンというのではありませんが、わたしと同い年で同時代を生きてきた者として、デビューの時からずっと親近感を持っていました。若い時からその豊かな声量と歌唱力は群をぬいていて、その声と歌唱力に触発されたのでしょう、すぐれた作詞家と作曲家によって「恋」をはじめ「霧の摩周湖」、「愛は不死鳥」、「積木の部屋」など、布施明がいたからこそつくられたのだと思う数々の名曲が生まれました。
 平尾昌晃作詞・作曲のこの歌は、布施明が20才の時の歌ですが、甘酸っぱくもせつない恋のよろこびにふるえる青年(少年)の心情が表現されていると思います。わたしは同年代なので、この歌を聞きながら自分にはなかなかやってこない恋に愛想をつかしながら、ビルの清掃のフリーターをしていました。この頃は今のようにたとえば「ミュージックステーション」に出る歌手と「歌謡コンサート」に出る歌手が完全に分かれているのではなく、あらゆる歌がひとつの音楽番組で歌われていました。
 その中でもザ・ピーナッツにあこがれて歌手になったという布施明はアイドルでありながら豊かな声量と歌唱力ある異色の歌手でした。演歌とポップスのちがいはありますが、島津亜矢もまた布施明に負けない声量と歌唱力を持っていて、二人はどこかよく似ていると思っていました。
 1967年の布施明のヒット曲「恋」を、島津亜矢は少しけだるい声で、恋にふるえる若い男の心情をこれほどまでにと見事に歌い上げ、とてもせつなく胸に響きました。「霧の摩周湖」も歌っていましたが、布施明の歌はやはり島津亜矢のように声量も歌唱力も兼ね備えたひとでなくては歌えないのでしょうね。

 そんなことを思いながら「恋」を聴いていると、昨年の12月に放送された「BSにっぽんの歌」での二人の共演がよみがえりました。
 スペシャルステージでの二人の共演は、島津亜矢ファンのみならず、たくさんのひとから「感動した」、「なみだが出た」などたくさんのコメントが寄せられ、反響をよびました。
 わたしも昨年はもっぱらテレビで島津亜矢を追いかけるだけで、ファンともいえなかったのですが、この放送を観てほんとうのファンになってしまいました。そして、彼女のライブに行ってみたくなり、とうとう今年はすでに3回と、亜矢姫のコアなファンには及びませんが彼女のライブに行き、あと2週間もすれば大阪の梅田芸術劇場に行くことにしています。
 わたしだけでなく、あの放送を観て島津亜矢のファンになったひとも多いではないでしょうか。いまあらためてまだ消されていないユーチューブの映像を観ると、また涙が出てきます。
 一曲目は「シクラメンのかほり」。まず布施明が歌い、キーを変えて島津亜矢が歌いました。その後布施明が歌うのですが、サビのところを島津亜矢が布施明のキーで歌いました。それは彼女にとってかなり高い音のはずなのですが無理のないナチュラルな声で歌い、布施明の声と共振し、見事なデュエットでした。
 そのつぎに感動したのが「感謝状~母へのメッセージ~」でした。この歌を二人がデュエットするのですが、布施明がこの歌を歌うと演歌のジャンルを飛び越え、その歌唱力は圧巻で島津亜矢に劣らずこの歌の心情が切々と伝わってきました。あらためてこの歌がほんとうにいい歌なのだとわかりました。そばにいる島津亜矢の表情はほんとうに素敵でした。おそらく、自分の持ち歌をこんなにも丁寧に歌ってくれる布施明に感動していたように思います。
 そして、最後の曲「マイ・ウェイ」はいまもたくさんのひとの記憶に残るすばらしいものでした。
 島津亜矢がまず歌うのですが、そばで観ている布施明は本心から彼女の歌声に感動しているのがよくわかるのです。
 そして、布施明が歌い出すと、島津亜矢は感極まってほんとうに泣いてしまいました。
 あとからどこかのサイトで知ったのですが、この放送の収録日はその直前に亡くなった島津亜矢の恩師である星野哲郎の通夜の日だったそうです。14歳の時から彼女を支えてきた恩師の通夜に出席したい気持ちを抑えてステージに立つ島津亜矢の心の内を思い計り、布施明はさりげなく黒のネクタイをしめ、星野哲郎への哀悼をあらわしながら、細やかな気配りをしていたと言うのです。
 そういえばこの歌の前に布施明が「歌を歌うことがわたしたちの使命ですから」、「歌を歌うことをぼくたちは選んだのですから、声がつづく限り歌いつづけましょう」とか、必要以上と思える長い話をしたのはそのためかも知れません。
 それがほんとうなら、父親のような大きな存在だった星野哲郎の死に心の底では打ちひしがれているはずの島津亜矢を励ました布施明は、ほんとうにすばらしくやさしい人なのですね。
 そのことが真実かどうかはわからないけれど、布施明はこの歌を、一緒に歌う島津亜矢にこそささげたのだということはまちがいないと思います。泣き出す彼女の顔をみつめ、「マイ・ウェイ」の歌詞そのままに、「だいじょうぶだよ、あなたはあなたの思う道を信じて進んでください」と心で言いながら歌うと、島津亜矢もまた布施明をみつめながら、「ありがとうございます。これからも精いっぱい歌い、生きて行きます」と心で応えているようでした。二人の気持ちが会場にあふれ、映像からあふれてきて、わたしのみならず多くのひとが涙を流したにちがいありません。人生はかなしみのただ中にいても、きっとすばらしいものだと、二人のこころの触れ合いが教えてくれました。
 そして最後は布施明が島津亜矢の手をしっかりと、やさしく握り、島津亜矢は涙をこらえてデュエットを終えたのでした。
 こうして後々まで語り継がれるだろう二人の共演は、感動の拍手につつまれて終わりました。
 この時の島津亜矢はほんとうにきれいでした。歌っている彼女はいつもきれいですが、自分が信頼でき、また自分を認めてくれるひととの共演により、彼女の心の底から特別な美しさが立ち上がり、あふれでるようでした。
 この時のもようをユーチューブにあげてくれているので、消されない前にぜひごらんくださいね。

 2002年のリサイタルの時には、こんなステージを経験するとは思いもしなかったでしょうが、歌を愛し、豊かな声量と歌唱力を持つ二人がジャンルを超えて出会うのは当然のことだったのかも知れません。


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