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2011.03.11 Fri コミュニケーションの狩人

 わたしは1987年7月から2003年12月まで16年間、豊能障害者労働センターで働いていました。かかわりから言えば1982年の設立時からのつきあいです。その間のさまざまなできごとは恋する経済&障害者市民事業ネットワークの豊能障害者労働センター30年ストーリーに書いたとおりです。
 その後3年間、関連の障害者団体での活動をへて2008年からアルバイトスタッフとして、週に2回ほど豊能障害者労働センターに行っています。

 ひさしぶりに労働センターに足を踏み入れると、なつかしさよりも圧倒的におどろきの方が大きかったです。
 わたしがいた16年間、今はこうしかできないけれどきっと何年間先には実現しているでしょう、そうなったらいいな、いやそうなるように努力しなくてはと悪戦苦闘しながら夢見たことを、わたしの在籍時にはいなかった若いひとたちもふくめて障害者スタッフたちが実行しているのです。
 障害者スタッフの立ち振る舞いをみていると、つくづくこのひとたちがコミュニケーションの狩人、人生の達人だと感心します。

 それは、なにかができるようになったとかいうようなことではないのです。ここでは、ひとりひとりが自分の個性をそのままあらわにしながら、「自分のことはかえりみず」、他者への心配りを決して忘れません。
 誤解を恐れずにいうなら、豊能障害者労働センターの障害者スタッフが一般企業に就職することはまず無理だと思います。それは、ひとつはたしかに企業のハードルを越えられない重度と言われる障害者だからといえるかも知れません。
 けれどももうひとつは、実は彼らは自分をふくめこの集団の構成員を認め合い、そこから豊能障害者労働センターの経営者としての役割をになうことを日々学びあい、成長しているからなのです。学校が本来教育するところではなく、学び合うところであるように…。それはけっして福祉的就労の場である授産施設(B型就労継続支援事業所)でも、またおそらくは一般企業でも学べないことなのだと思うのです。
 ですから経営者としての誇りを持ち、労働者として企業にあわせることをしない彼らは一般企業に就職できない「重度」といわれてしまうのかも知れません。

 はたから見れば仕事をするどころか他人の仕事のじゃまばかりしていて、まわりからさんざんブーイングされていても、「ところで…」とそばにいるわたしに話しかけてきます。時々、本気に誰かが怒るとさっと身を引き、反省している演技なのかほんとうに反省しているのか、まったくわかりません。
 そんな曲者がたくさんいてそれぞれ自分勝手に行動しているのですが、ふしぎなもので全体としてはその日の仕事ができていくのでした。
 たとえばだれかが発作でたおれたら、われもわれもと現場にかけつけ、大騒ぎになります。そのうちそんなにひとがいてもしかたがないことがわかってくると、何人かは離れた場所で心配しながら状況をみつめています。何かもっと異変があれば、我先に駆けつけますぞと身を構えながら…。
 
 まわりのひとがそんな彼らのことをよくわからず、いろいろな「説教」をしても、彼らはさらりと受け流し、その「おせっかい」な親切にはそれなりの礼をつくすという案配で、それはみごとな立ち振る舞いをさらりとしてしまいます。
 健全者の新人をもりたてるのにも余念がなく、スキンシップもふくめてその新人が豊能障害者労働センターの「社風」(?)に早く溶け込むようにさまざまな気配りをします。
 かぞえあげたらきりがない。こんな職場だったからわたしも働けたのだと感謝してしまいます。

 そして、かれらの活躍が縦横無尽に発揮されるのはなんといってもバザーの時です。よくもまあ、そんなに気がつくなとおもうほど素早く仕事をし、素早く仕事をのがれます。
 はじめてのひとが見たら、「訓練が行き届いている軍隊」とまちがい、そこから「このひとたちは一般企業で働けるのを、豊能障害者労働センターの健全者が無理やりひきとめ、ひどい訓練をしている」と誤解されるかもしれません。
 けれどもけっして忘れてはならないのは、彼らはいまある一般企業に就職できるわけではおそらくないのです。反対にこんなに生き生きと仕事ができるはずの彼らを雇用できない職場のあり方、社会のあり方の方こそ問われるべきなのかもしれません。
 彼らが生き生きと仕事をしているのは、さまざまなとんちんかんに心ゆすぶられながらも友情から生れる、ドラッカーなみの経営学をもってバザーを、そして豊能障害者労働センターをマネージしているからなのだと思います。
 はたしてこんなに豊かな職場関係をもっている企業が社会的企業をふくめてあるでしょうか。いま社会的企業が注目されていますが、そこでも障害者は「お客さん」でしかなくなることをわたしは心配しています。
 「障害者が担う」とか「障害者が運営する」というと、ほとんどのひとに「それは建前だ」と思われてしまいます。
 けれどもよく見てもらいたいのです。豊能障害者労働センターの障害者たちの「大活躍」を。(ただし、彼らは奥ゆかしいので、ぱっと見でだまされないようにしましょう。)

 豊能障害者労働センターの半開きのドアをあけて中に入ると、ここはまさしく人生の宝探しの場です。
 この宝の山をひとりじめするのは贅沢すぎると思っています。もしこの文章を読んでくれたあなたとも分け合いたいと思うのですが、もう語る言葉が見つかりません。

 豊能障害者労働センター主催のみんなでつくる春の大バザーは5月14日(土)11時から15時まで、箕面市立メイプルホール・芦原公園で開かれます。毎年恒例の大きなバザーで、掘り出し物がいっぱいです。ぜひお越しください。
 バザー用品を提供して下さる方がおられましたら、072-724-0324までお電話ください。お待ちしています。
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