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2018.10.23 Tue ピアノ・宮川真由美、タンバリン・田島隆、アコーディオン・佐藤芳明・音楽的野心にあふれた演奏。10月21日「桜の庄兵衛ギャラリー」

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 10月21日、大阪府豊中市の「桜の庄兵衛ギャラリー」で開かれたコンサートに行きました。何度か紹介していますが、「桜の庄兵衛ギャラリー」は江戸時代からつづく旧家で、1995年の阪神淡路大震災で建物の一部が破損し、補修再建にあたり本来客間であったところをギャラリーとして開放し、定期的にコンサートなどのイベントを開かれています。
 わたしはかれこれ3年になるでしょうか、「桜の庄兵衛ギャラリー」で開かれるコンサートをとても楽しみにしています。

 「桜の庄兵衛」での音楽的体験は稀有の体験で、あまり音楽のことを知らないのですが、出演者の名前も知らず初めて聴く演奏なのに心の底のもっとも柔らかい所に深く突き刺さり、心地よい疼きがいつまでも残るのです。
 というのも、クラシックからジャズ、和楽、落語までほんとうに幅広いジャンルのプレイヤーたちが時には異色のコラボをして、「桜の庄兵衛」スタイルと言ったらいいのか、特別な場所で特別な演奏を繰り広げ、わたしたちを特別な音楽的冒険の旅に連れて行ってくれるからなのです。

 「十三夜 雲あそび来るコンサート」と素敵なタイトルがついた今回のコンサートの出演者はlenscontactrio(レンズコンタクトリオ)=超接触三重奏というユニットで、ピアノ・宮川真由美、タンバリン・田島隆、アコーディオン・佐藤芳明による超キレキレかつエモーショナル、超あそび心満載かつ音楽的野心にあふれた演奏に心をさらわれてしまいました。
 開演時間になるとまずピアノの宮川真由美さんがあらわれ、ピアノソロがはじまりました。わたしはここ最近ピアノ演奏を聴くたびに、個々のピアニストが行く先々の会場にずっと前から待っているピアノと、あるひとは格闘し、あるひとはおしゃべりし、あるひとは愛し合いながら、同じピアノからまったくちがう風景を描き、物語を紡ぎだすことに密やかな驚きと感動を覚えるようになりました。
 思えば子どもの頃、わたしが見た初めてのピアノは同級生の女の子のお金持ちの家にあり、とてつもなく巨大で黒光りするピアノが子ども心にとてもエロチックに見えたものでした。大人になってジャズやブルースのライブに行くようになり、子どもの頃にわたしが感じた官能は的外れではなく、ピアノと数多くのピアニストが一夜限りの恋を語り、叩く鍵盤の痛みが妙なるメロディーとリズムをつくりだす、そんな切ない官能がピアノそのものにかくれているのだと思います。
 宮川真由美さんのピアノは最初の静かなソロの演奏も、その後のタンバリンの田島隆さんとアコーディオンの佐藤芳明さんを扇動し、「踊るピアニスト」と称せられるどこまでも行ってしまいそうな躍動感あふれる演奏もからっとした透き通る青空のようで、聴いているわたしたちは彼女の演奏にわくわくし、はれやかな気持ちになりました。
 彼女の演奏を聴きながら、かつて戦前の詩人が詠んだ三行詩を思い出しました。「(覆された宝石)のやうな朝 何人か戸口にて誰かとさゝやく それは神の生誕の日。」(西脇順三郎「天気」)
 ほんとうに彼女の指先からこぼれ落ちる音たちは「(覆された宝石)のやうな朝」さながらに、無数のダイアモンドのようにきらきらしていました。
 2曲目から、まず田島隆さんが登場し、しばらく宮川さんと音楽のおしゃべりを楽しんだ後、佐藤芳明さんも登場したのですが、この二人がとんでもないひとたちでした。
 まずは田島隆さん。ほんとうにびっくりしました。タンバリンといえばカラオケスナックで歌を盛り上げるものという先入観は、かれが一音叩くだけでひっくり返ってしまいました。彼がタンバリンを連続して5本の指、時には10本の指でかき鳴らすと、叩き方ひとつでタンバリンがまるでドラムセットやパーカッションや和太鼓のように無限の音色が奏でられます。田島隆さんは世界中のありとあらゆるタンバリンを演奏する日本で唯一のタンバリン専門の演奏家で、「タンバリン博士」と呼ばれているとのことです。
 そして、もう一人の曲者・佐藤芳明さんのアコーディオンはほんとうに癖になる麻薬のような演奏でした。このひとの場合はやや斜めに構えたスタイルで、ピアノとタンバリンの掛け合いにすっと入り込むと、タンバリンのたたみみかけるようなリズムの隙間に美しくもはかなく、瑞々しくも豊穣なワインのようなメロディーに胸をかきむしられるようでした。
 佐藤芳明さんは既存のアコーディオンのイメージにとらわれない独自のサウンドでソロでもユニットでも積極的にライブ活動をする一方、クラシックからジャズ、Jポップ、演歌に至るまでジャンルを越えて数多くのアーティストをサポート、スタジオミュージシャンとしても活躍されています。
 今回のライブではソロではポール・マッカートニーのBlack birdとアストル・ピアソラの名曲「リベルタンゴ」を独自のアレンジで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

 彼女彼たち3人それぞれがたしかな音楽的視野と、5重奏と聞き間違うほどの奥行を感じさせる一方で、あそび心にあふれたジャズのアドリブのような(実際にアドリブがあったのかはわたしにはわかりかねましたが)お互いがお互いを高めあい、至高の音楽へと登りつめようとする情熱は、何度か共演していて勝手知ったる間柄とはいえ、ここ、「桜の庄兵衛」ならではのライブだったのかも知れません。
 「ジャンルはジャズ?クラシック・ラテン・世界の様々な民族音楽?地球上の、楽しいリズム、美しい旋律、まばゆいハーモニーをブレンドし、普段は異なったテリトリーで活動する3人が何故か古代から組んでいたかのような融合間で独特の世界をお届けいたします。」と今回の案内チラシの書かれていたのは言い得て妙で、まさしくその期待通りのコンサートでした。
 いつも感心するのですが、「桜の庄兵衛」さんが開くコンサートに呼ぶアーティストにはずれはひとつもありません。こんな素晴らしい音楽を大阪に出ていくことなく、気軽に聴ける機会を用意してくれることに感謝します。

2014/06/16 踊るピアニスト宮川真由美さん@奈良ムジークフェスト

田島 隆(Tambourine) vs 菅沼 孝三(Dr.)

「Cecen Kizi」 NADA ( 吉見征樹(tabla) 鬼怒無月(g) 佐藤芳明(Acc))

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