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2018.03.31 Sat 島津亜矢の未曽有ともいえる音楽の鉱脈を発掘しようとする番組制作者たちの強い意志を感じた「UTAGE!」

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 ほんとうは島津亜矢のBS民放放送の美空ひばり特集からNHK「うたコン」の松本隆特集と、感動、興奮する音楽番組が続く中、何も書き残せないまま来ていますし、島津亜矢関連以外でも森友学園から財務省の決裁文書改ざんという、まさかまさかのとんでもない犯罪行為によってわたしたちの社会の未来を絶望させる事件のことや、猛スピードで進む朝鮮半島における対話路線について、またそれらとかかわる形で毎年開いている「ピースマーケット・のせ」のお知らせなどなど、筆力が弱っていることもあってなかなか追いつけずあせってしまう毎日です。
  それでも、たとえば3月29日のTBS「UTAGE!」での島津亜矢の圧倒的なパフォーマンスをまのあたりにすると心が騒ぎ、ほかのニュースソースを後まわしにしてこの音楽的大事件について書いておかなくてはと思うのです。
 前情報でケミストリーの川端要とのコラボと、宇多田ヒカルをアカペラで何人かで歌うと聴き、とても楽しみにしていました。
 「UTAGE!」が他の音楽フェスとちがうところはタイトルどおり、いろいろなミュージシャンが「宴会芸」という仲間内の芸を披露する場と設定することで、ジャンルの違いなどで普段ではあり得ない組み合わせが実現したり、普通のステージよりリスクのある音楽的冒険が可能になり、またそんな挑戦ができる人しか出場できないというところにあります。
 島津亜矢の場合、去年の秋の初出場を経て、今回は彼女のボーカリストとしての魅力を最大限に引き出そうとしている意図がわかります。そこには「金スマ」以後、芸能界に絶大な影響力を持つ中居正広の密やかな推薦があるのかもしれません。

 島津亜矢の異色のコラボの1曲目は槇原敬之の「遠く遠く」で、松本明子のピアノと島津亜矢のタンバリン、島袋寛子のパーカッション、高橋愛のカスタネットと、日ごろは演奏したことがない楽器を弾きながらの歌唱でした。わたしの興味はあの元SPEEDのメンバーで、そのたぐいまれな歌唱力で日本を代表するボーカリストとして活躍する島袋寛子とのコラボでした。SPEEDが音楽シーンをけん引していた時代、一体だれが島津亜矢と島袋寛子のコラボを想像できたでしょう。あたかも今、音楽のメインストリームに突如現れた(合流した)島津亜矢によって、時代は大きく激しく塗り替えられようとしているのだと思います。
  「遠く遠く」は槇原敬之の1992年発売のアルバム「君は僕の宝物」に抄録された楽曲です。1992年と言えばバブル崩壊直後で、まだわたしたちはその後の「失われた20年」の始まりとは思わなかった頃ですが、就職できなかった多くの若者がフリーターやニートとなり、就職氷河期世代と呼ばれ、彼らの生活・雇用の不安定さ、社会保障の負担が充分にできずにセーフティーネットから外れ、困窮する状態に陥るなど、大きな社会問題となっていました。
 この歌は地方から東京に出てきた若者の不安を隠した切ない心情と、かすかな希望と夢を繊細につづった名曲で、かつては「ああ上野駅」のように歌謡曲が人々の心情を代弁したものですが、今の時代は演歌・歌謡曲ではなく、槇原敬之に代表されるJポップが得意とする分野で、それだけをとっても今の演歌がいかに若い人たちの等身大の共感を得られていないかを証明しています。
 島津亜矢は出自の演歌・歌謡曲のジャンルでは実現しない音楽的冒険を共に担う共演者とのコラボを楽しみながら、この歌のもっとも切ない物語を語るように歌いました。
 2曲目はケミストリーの川畑要とのデュオで、コブクロの「桜」を熱唱しました。昨年の秋にケミストリーの堂珍嘉邦と「美女と野獣」を歌い、びっくりさせた島津亜矢ですが、この番組は相棒の川畑要とコラボするとどんな化学反応を起こすのかを実験してみたかったのでしょうか。はてまたわたしの我田引水的推理によれば、川畑要もまた堂珍嘉邦とのコラボを聴き、彼の音楽への限りない好奇心と冒険心を駆り立てられ、島津亜矢との競演を楽しみにしていたのではないかと思います。
ケミストリーの中でも川畑要は特にその音楽性向もそれをささえる思想的にもR&Bに傾倒していて、わたしはこのコラボが島津亜矢が心の底にあるR&Bに目覚める大きなチャンスと見ていました。
 実際のコラボは見事なもので、川畑要が素晴らしかった。ややもすれば遠慮がちになる島津亜矢にリードボーカルを任せきったハーモニーが絶妙でした。コブクロの「桜」が黒っぽいR&Bのサウンドになりました。川畑要が「島津亜矢と競演してみたい」と思ったという私の妄想もそれほど外れていなかったのではないでしょうか。
 島津亜矢のファンとしては、これで役者がそろい、ケミストリーの産みの親でもあり、島津亜矢を高く評価する松尾潔氏のプロデュースでシングルでもアルバムでも作っていただけないかと切に思います。現に松尾潔氏は少し前なら坂本冬美に、最近は山内惠介にも楽曲を提供していますが、島津亜矢とケミストリーのためならかなり刺激的な音楽が生まれるはずです。
 そして、3曲目は宇多田ヒカルの「First Love」を、実力派の女性ボーカルグループ・Little Glee Monsterのかれんと、高い歌唱力を評価されているBENIという贅沢なコーラスに、高橋愛のベース、AKB48の峰岸のボイスパーカッションという異色の組み合わせによるアカペラ演奏のリードボーカルを披露しました。
 昨年の秋はまだ少しぎこちなさが残っていましたが、今回2度目の出演となる島津亜矢は完全に心が解放されているように感じました。この番組ではすでに彼女が演歌歌手であることよりも実力派の女性ボーカリストとして受け入れていられて、実力派の女性ボーカリストに囲まれた島津亜矢が、彼女たちとの競演によってさらなる音楽の高みにたどり着く瞬間に立ち会えた幸運に恵まれたことに感謝以外ありません。
 3曲目ではっきりとわかったのですが、島津亜矢はJポップのゆりかごのような「UTAGE!」という番組の中で、音楽が生まれ育つ場をけん引する「覚悟を決めた」のだと思いました。演歌・歌謡曲のジャンルの番組では以前はどこか遠慮がちで表情硬くしていて、閉鎖的なフィールドで思う存分声を出すことすら憚れる時代があったように思います。それに引き換え、「UTAGE!」では、彼女の才能を無条件に受け入れ、他の才能のあるボーカリストとの競演から、彼女の未曽有ともいえる音楽の鉱脈を発掘しようとする番組制作者たちの強い意志を感じるのです。それにこたえようとする彼女の才能と好奇心とまじめさは、この番組と周りの出演者と視聴者に期待以上の豊穣な音楽を届けてくれたのでした。
 しかも、わたしがかねてから願い続けた宇多田ヒカルのカバーであったことに、涙が出るほどうれしく思いました。というのも、わたしは以前より宇多田ヒカルは島津亜矢のかなり近いところにいるアーティストで、彼女のつくる音楽は日本の演歌の最も無垢で純粋なところでつながっていると思っていて、R&Bを根底に持つ島津亜矢なら、宇多田ヒカルの数あるカバーがほぼポップス調であるのに対して、ソウルやブルースのにおいのするカバーにしてくれると思っていました。今回のコラボでは思ったとおり、かれんとBENIの最高のコーラスにも助けられ、素晴らしい歌を披露してくれました。
 ここでもファンの一人として、ここまで演歌とR&Bを近づけられる稀有の歌手・島津亜矢に宇多田ヒカルが歌をつくってくれないものかと思います。
 島津亜矢は若い頃に演歌のジャンルで思い扉を開いたものの、演歌界の閉鎖性のもとでなかなかブレイクできず、星野哲郎や北島三郎に助けられて少しずつ彼女の才能が受け入れられてきました。
 それにひきかえJポップのミュージシャンたちとのコラボが驚きと称賛を得たり、また先日のNHKの「うたコン」での松本隆特集で「DREAMING GIRL」を熱唱し、松本隆をして「島津亜矢最強ですね!ハッキリ言ってノックアウトされました!」と言わしめたりと、やはり断然すそ野の広いJポップでは反響も大きく認知のスピードも桁違いです。
 3万枚売ればヒットと言われる演歌にくらべて、案外メガヒットがこの分野でのオリジナルで実現するかもしれません。もっともわたしはポップスというわけではなく、反対にこれらの匠や天才と言われるアーテイストが島津亜矢の魅力を引き出すためにどんな歌をつくり出すのかを楽しみにしています。その意味において、もう少し彼女の音楽的冒険を誘い出す思い切ったプロデュースが望まれます。

かれん&BENI&島津亜矢&高橋愛&峯岸みなみ「First Love」

島津亜矢&川畑要「桜」

松本明子×島津亜矢×島袋寛子×高橋愛 「遠く遠く」

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