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2018.01.06 Sat 2017年紅白 島津亜矢「ローズ」と竹原ピストルとエレファントカシマシとSEKAI NO OWARI

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 昨年の紅白に出演した島津亜矢は「The Rose(ローズ)」を歌いました。
 第一部の紅組のトリで、前後にWANIMAと郷ひろみに挟まれて、教会風の舞台にいくつものバラが置かれ、本人は黒い振り袖姿で静かに歌いはじめました。
 バックに大人数の合唱団が控え、後半はゴスペル風のアレンジで熱唱しました。島津亜矢ファンのみならずその圧倒的な歌唱力はたくさんの心に届いたことでしょう。
 演歌歌手にとっては今でも紅白出場はそのまま営業に影響すると言われていますから、本来ならオリジナルの演歌や昨年のように美空ひばりなどの名曲のカバーが順当なところでした。
 しかしながら、島津亜矢が並外れた歌唱力で歌うポップスが評価され、昨年は大きな話題を呼んだことで、番組編成のチームはあえて彼女に洋楽を提案したのでしょう。
 その選曲にあたっても、多方面に驚きと共に高く評価されているホイットニー・ヒューストンの「I will always love you」のカバーが順当なところだったのでしょうが、ここでももう一歩踏み込み、島津亜矢の本質に迫る楽曲として彼女のポップスのアルバム「SINGER3」に収録されている「The Rose(ローズ)」を提案したのだと思います。
 わたしはかねてより島津亜矢がリズム&ブルースやソウル、ゴスペルなどを歌うと、「この人にはもともと黒人音楽のルーツが隠れている」と思わせるものがあり、不思議なことに大地の底を流れ、海をわたってやってきたその音楽が、彼女の出自である「演歌」と深くつながっていると思ってきました。
 それはかつて美空ひばりや浅川マキ、ちあきなおみなどの先人が切り開いてきた至高の音楽の荒野に、島津亜矢が到達した証でもあると思っています。
 ジャニス・ジョプリンをモデルにしたとされる映画「ローズ」の主題歌で、主演女優のベット・ミドラーが歌って大ヒットした名曲「ローズ」にゴスペルのコーラスを入れたのも、「結婚式でよく使われている」というだけではないと思います。
そこには島津亜矢に本格的なゴスペルを歌わせたいと願ったNHKの音楽番組チームの島津亜矢シンパのなせる業だったのだと思うのです。
 果せるかなその願いに見事に応え、島津亜矢は曲の入りはとても静かで、後半のゴスペルコーラスのパートでは黒人音楽の血がたぎるように体を揺らしながら、海の向こうの「密やかで切実な合図」を受け取るように歌い上げたのでした。
 島津亜矢の演歌の中にも脈々と流れている、「愛を必要とする心に届く音楽」はジャンルを軽々と超え、アメリカ大陸の長い歴史の底で声なき叫びを歌にしてきた黒人音楽のルーツとつながり、悲しみの中にも希望をさぐりあてる「ひとびと賛歌」になるのでした。
 もし、NHKの紅白チームが目先の流行だけでなく、「歌が生まれ、歌が眠る墓場」から立ち上る長大な叙事詩が時には演歌になり時にはリズム&ブルースになったりして、いつの時代にもひとびとをなぐさめ、勇気を与えるために届けられることを信じているとすれば、島津亜矢はそのことを体現する稀有の歌手として、演歌からジャズ、シャンソン、ブルースにいたるまでさまざまな音楽的冒険とともに紅白の出演を求められることでしょう。
 欲を言えば、せっかくゴスペルコーラスが入るのなら、もう一小節か二小節長く歌ってほしかった。そうすればゴスペルコーラスも島津亜矢ももっと一体化した素晴らしいものになったのではないでしょうか。あっけなく終わってしまったのは残念でした。
 それと、たいしたことではないですが、たしかテロップの日本語の訳は高畑勲で、映画「思い出ぽろぽろ」の主題歌「愛は花、君はその種子」というタイトルで都はるみが歌ったものになっています。わたしの好みでは直訳詩の方がこの歌らしいと思いました。
 高畑勲氏の訳では、自分の少女時代を振り返りながら精神的に自立してゆく女性の姿を描く映画にふさわしく、警句や予言、啓示など宗教的な黙示録のように自立しようとする女性の背中を押す歌詞になっています。
 直訳の方は「ある人は…」と続き、最後に「私は…」と歌う映画「ローズ」の内容になっています。ほとんど違いがないようですが、「思い出ぽろぽろ」の影響が強いのかわかりませんが、日本での数多くのカバーがどこか重々しくやや説教臭いのが気になります。
 ところが、日本での本家・都はるみの歌はほんとうにさりげなく、遠慮がちにとつとつと歌っています。都はるみもまたこぶしとうなりの演歌歌手とされていますが、ずいぶん前からさまざまなジャンルの音楽を歌ってきた歌手で、高畑勲はおそらくそんな全方向的な都はるみに「ローズ」のカバーではなく、「思い出ぽろぽろ」の主題歌としてこの歌を歌ってほしかったのでしょう。
 ベット・ミドラーも島津亜矢も、この歌を歌うときに陥りがちな教訓調ではなく、さまざまな悲しい出来事を通り過ぎてきた後のがれきに咲く一本のバラに、最後かもしれない愛を手繰り寄せる切ない女の心情を歌っていると思います。

 視聴率は芳しくなかったようですが、今回の紅白はそれなりのグレードを保った音楽バラエティ番組になっていたと思います。たしかに年に一度のお祭りと考えれば、紅白もまたバラエティ番組になっていくのは仕方がないことなのでしょう。
 その中でも竹原ピストルはアコースティックに歌の直接的な言葉が聴く者の胸に突き刺さる快感を共有することに成功していましたし、エレファントカシマシは過酷な日常や時代を乗り越える「友情」をいつも通りに歌ってくれました。また「SEKAI NO OWARI」は「世界の終わりから始めてみよう」という想いが込められたバンド名にふさわしく、自分らしく生きることの難しさを抱える若者に、「そのままで大丈夫」と勇気づける音楽を届けてくれました。
 さらに、今年もっともびっくりしたのは三浦大知でした。一年以上前になりますが、古館一郎が報道ステーションを降板した後のフジテレビ系の番組で、島津亜矢と競演してしているのを見たのがはじめてでしたが、その後の音楽番組での出演を見て、「ああ、日本にもマイケル・ジャクソンと太刀打ちできるダンスミュージックのエンタ-テイナーがいたのだと思いました。1987年生まれ、くしくも安室奈美恵も所属していた沖縄アクターズスクール出身で9歳でプロデビューし、2005年にソロデビューしていると知りました。もともとダンス音楽には興味がないわたしにはほとんどなじめないジャンルではありますが、アイドルグループのダンスとは全く別次元の「キレ」のあるダンスは舞踏に近いものを感じました。紅白では何といっても音楽なしで踊る「無音ダンス」にびっくりしました。日本の音楽シーンは別にして、世界の音楽シーンで活躍できるもっとも近い存在だと思いました。
 「いきものがかり」が休憩中で少し寂しく思いますが、もっとも1960年代の歌謡曲に近い存在と思っている桑田佳祐の「若い広場」もノスタルジーにあふれたステージでした。
 ここに挙げた人たちは演歌とは遠い存在ですが、わたしにとって島津亜矢と同じ匂いを感じるひとたちで、その匂いとは先ほど書いた「音楽は愛を必要とする心に届く」ことを体現している人たちで、その中には島津亜矢に楽曲提供してもおかしくない人たちがいます。
 今年の島津亜矢に期待するものといえば、演歌でもなんでもいいのですが、百花繚乱の様相を呈してきた音楽の作り手たちに固定観念を持たずに楽曲を提供してもらうプロデュースをぜひ進めてもらいたいと願っています。
いま、Jポップと呼ばれているジャンルはすでに歌謡曲と同義語でもあり、演歌・歌謡曲を作りたいと思っているソングライターがけっこういると思うのです。
 「ローズ」を聴き、太平洋を行き来する音楽の冒険を島津亜矢と一緒にしたいと思うソングライターの出現を待ち望んでいます。
 ところで、島津亜矢は竹原ピストルと話ができたのでしょうか。島津亜矢は紅白前のインタビューで竹原ピストルの生歌が聴けることを楽しみにしていると話していました。
 島津亜矢の感性の鋭さは、早くから竹原ピストルを見つけていたのですね。

島津亜矢「The Rose」

ベット・ミドラー「The Rose 」日本語訳付き

竹原ピストル / よー、そこの若いの(2015/11/25 LIVE at 吉祥寺Planet K)

エレファントカシマシ - 今宵の月のように & 俺たちの明日- ap bank fes 10 LIVE.

SEKAI NO OWARI 「RAIN」 Short Version PV 主題歌映画「メアリと魔女の花」

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