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2017.03.08 Wed 「うたコン」は島津亜矢に時代が追いつくための音楽的冒険の場

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3月7日、島津亜矢がNHK「うたコン」に出演し、「感謝状~母へのメッセージ~」を歌いました。
 今回の放送は東日本大震災6年の節目を迎え、「東北に届け!春を告げる歌の花束SP」
と題し、30分延長されて放送されました。
 演歌・歌謡曲の人気番組だった「歌謡コンサート」と、Jポップの人気番組「MUSIC JAPAN」が終了し、両者を合体させた「うたコン」が始まって一年が経ちましたが、この番組への批判の声は一向に収まりません。もともと、視聴者の大半が高齢者だった「歌謡コンサート」と、10代から20代が視聴者で、Jポップの新人の登竜門だった「MUSIC JAPAN」を一つにして、世代やジャンルを越えて新しい音楽体験を生み出そうというコンセプトは魅力的なものの、実際は日本の音楽シーンがここ10年劇的に変化し、季節ごとの大きな音楽フェスをメインとしたライブがメインとなったことと相まって、テレビの音楽番組もまた季節ごとの長時間番組にシフトし、週一回放送の音楽番組の制作がむずかしくなったことなどが背景にあると思います。
 また、年末の紅白歌合戦のときだけ、演歌・歌謡曲とJポップが混在する状況ではあっちがたてばこっちがたたずという感じで、また同じジャンルの中でも出演歌手をめぐってさまざまな批判が寄せられ、その結果を反映してか視聴率の低下が年々問題になっています。そこで、一年を通じて演歌・歌謡曲とJポップが混在する状況をつくりだすことは、NHKの音楽番組制作担当者にとって切迫した課題であったのでしょう。
 そんな事情から一年前に船出した「うたコン」ですが、やはり「NHK歌謡コンサート」の視聴者だった、主に高齢者を中心にした演歌・歌謡曲ファンの批判・不満が数多く寄せられた一年でした。
 この番組の視聴率は音楽番組ではJポップの超人気番組「ミュージックステーション」よりも高く、一年を通じて10パーセント以上を確保しています。この時間帯をはじめ、特番の音楽フェスを除いた音楽番組の中でダントツの視聴率を稼いでいるわけですが、その高い視聴率を支えているのは演歌・歌謡曲ファンで、歌謡コンサートの視聴者であった人たちです。ちなみに歌謡コンサートは超マンネリのお化け番組で12、3パーセントの視聴率を誇っていたわけで、合体した「MUSIC JAPAN」は土曜日の深夜ということもあり、5パーセントも行かなかったようですから、「うたコン」を支える視聴者は圧倒的に演歌・歌謡曲を望んでいて、「歌謡コンサート」に戻してほしいというのが本音だと思います。

 しかしながら、一年前にこのブログで書きましたが、わたしは島津亜矢のファンとして、「うたコン」は先祖返りして「歌謡コンサート」に戻らず、演歌・歌謡曲とJポップが混在する今のコンセプトをつらぬいてほしいと思っています。民放のようにスポンサーがいるわけではないので公共放送の利点を生かし、不人気であっても新しい試みをつづけてほしいと思うのです。
 かつてのNHK「歌謡コンサート」のようにベテランの演歌歌手が重用されるのではなく、現在では普段出会うことがなくなってしまった演歌歌手とJポップの歌手が顔を合わせ、お互いの歌を同じ舞台で歌い聴くことから、演歌・歌謡曲ジャンルでもJポップのジャンルでも新しい音楽的冒険が生まれる起爆剤となる番組であってほしいと思います。
 とくに島津亜矢の場合は以前の番組よりは彼女の活躍の機会が増えていくと思います。
演歌というよりは1950年代の歌謡曲の本流を現代によみがえらせる島津演歌はまだ途上とはいえ既成の演歌ファンが再発見、再評価する一方、新しい演歌ファンを引き寄せていますし、ポップスの領域でははじめて聴いたひとがびっくりし、一夜にして大ファンになってしまうという現象がここ何年も前から起きています。わたしもまた、そのうちの一人であることを告白します。
 しかしながら、彼女の自由な音楽活動を表現できる番組が極端に少なく、まだ無数のポップスファンが彼女のずば抜けた歌と出会っていないという問題があり、テレビではかろうじてこの番組がその役目を担ってくれそうなのです。今のところまだ番組構成が未成熟で、様々な試みをしている途上ですが、ライブ以外で彼女のポップスをシッカリと聴く機会はこの番組しかないのではないでしょうか。
 そう思うと、かえすがえすも以前の放送の秦基博とのコラボで「蘇州夜曲」を選曲したのは間違いで、とても残念に思いました。あのコラボでは、たとえば秦基博の「ひまわりの約束」とか、彼がカバーしている井上陽水の「氷の世界」を選曲していたら、島津亜矢のとてつもない大きな才能に観客や視聴者はもちろん、秦基博自身がびっくりし、きっと二人の間にシンパシーが生まれたはずです。彼の歌を作る潜在能力はなかなかのものですから、島津亜矢への楽曲提供への意欲を駆り立てたかも知れません。
 わたしはあえてこの番組では、彼女のポップスの歌唱力を伝えていただきたいと思うのです。そうすれば、かつて船村徹が美空ひばりにしか歌えない歌をつくったように、島津亜矢しか歌えないと思う楽曲を提供したいというJポップのソングライターとの出会いが必ずあると思います。もしかすると彼女のボーカリストとしての無尽蔵の才能に気づくのは、演歌・歌謡曲の作り手よりもポップス畑のソングライターのような気もします。
 今回の放送では「感謝状~母へのメッセージ~」を歌いましたが、せっかくスガシカオが出演していたのですから、カバーではあっても彼女のポップスを彼に聴いてもらいたかったなと思います。フルコーラスではなかったし、ファンとしては新曲の「いのちのバトン」とか鎮魂の心をこめて「千の風になって」とか、あと一曲歌ってくれたらと思いますが、番組構成上、やむをえなかったのかと思います。今回の放送でも批判はたくさんあるものの、スガシカオにして天童よしみにしても福田こうへいにしても、素晴らしい歌唱だったとわたしは思います。
 天童よしみはさすがに竹中労が見出しただけあって、歌に魂を込める歌手として他の歌い手さんたちとどこか肌合いというか気迫の違いを感じていましたが、演歌歌手の中でもっとも島津亜矢とつながっていて、島津亜矢は少し先を行く先輩歌手として天童よしみにすごく助けられていると思います。
 
 さて、肝心の島津亜矢の歌について何も書いていませんが、なによりも彼女がこの番組でやっと居所を見つけたようなリラックスした表情が伝わり、とてもうれしく思います。
 フルコーラスでないのは確かに残念なことではありますが、彼女はたとえワンコーラスでもその歌のもっとも柔らかく深いところにわたしたちを連れて行ってくれたのでした。
 この歌について書いた過去のブログを紹介させてもらって、今回は許してもらいたいと思います。
 「うたコン」については、特に演歌・歌謡曲ファンの方々の中でさまざまな批判があるでしょうが、どうか長い目でこの番組を見てあげてほしいと思います。

過去のブログ 2012.09.09 Sun 島津亜矢「感謝状~母へのメッセージ」

島津亜矢「感謝状~母へのメッセージ~」
この歌もまた若い頃から何度も歌っていますので、彼女の進化がよくわかります。最近の映像を紹介しましたが、若い頃の歌唱と比べる楽しみもあります。
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