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2012.11.27 Tue 歌を!もっと歌を! 島津亜矢と紅白歌合戦

 昨日、紅白歌合戦出場歌手の発表があり、われらが島津亜矢は今年も出演しないことになりました。関係のサイトをみると島津亜矢のファンのみなさんの怒りが爆発しています。
 今年は名古屋での座長公演や昨年の阿久悠作詞のアルバムなど話題性もあり、集客力も一段と増していることから、わたしもまた少なからず期待していました。
 いつもこの時期に、自分が何かテストをされているような気持ちになることから解放されたいと願っていました。それはもちろん紅白に出場することで、ファンとしてのわたしはやはり特別にうれしいことなのです。
 しかしながらわたしはその一方で、島津亜矢が紅白に出場するのはかなりむずかしいことのように思っていて、今年も「やっぱりね」と思ってしまうのです。
 大手の音楽事務所ではなく、若い時から個人の事務所でマネージもプロデュースもしていること。先日森進一の特集番組を見ていると、彼のようないわゆるトップシンガーですら独立して個人の事務所をつくった当初は数々の妨害を受け、歌を作ってもらうこともままならない日々があったといいます。
 島津亜矢の場合はずっと若いうちに独立し、大きな宣伝力やマネージメントで売り出されることもなく、最初は手づくりに近いプロデュースでCDを手売りするところから始めたと聞きます。長い年月をかけた地道な活動に、大手のマネージでは考えられない深い思いを寄せるたくさんのファンが集まっていますが、紅白や音楽賞、テレビ出演、ネットや携帯などへの発信は暴力的とも思える大手の営業力が物を言うようです。
 そして、当然のこととしていわゆる「ヒット曲」を生み出すのもそのことと無縁ではなく、島津亜矢の場合はかなり難しいと思います。彼女がもし、最初からJポップスのエリアで活動していたなら、もっと「ヒット曲」を生み出せたかもしれないと思います。
 Jポップスの場合は大手の事務所の力が強大である一方で、聴く人たちの幅広い受け皿があり、作り手も聞き手も新しい歌に貪欲であることから、島津亜矢を発見できる可能性はずいぶんあったのではないかと思います。
 演歌のジャンルは閉鎖的で、聞き手が少ないうえに「年功序列」のようなものがありそうで、島津亜矢が生き生きと歌える環境は自分と周りが作り出すステージに限られてしまいます。
 そして、最大の理由はもともと島津亜矢という稀代の歌手の大きな才能は、流行の歌や話題性などで番組をつくらざるを得ないテレビには不向きなのだと思います。
 ですから、わたしの本音を言えば、紅白に出ても出なくても、島津亜矢がいままで積み上げてきたスタイルを曲げることなく、しかも現状に満足せずいつも新しい音楽的冒険をおそれず、体の調子や声の調子が悪い時は悪い時なりに決して観客を裏切らないパフォーマンスを見せてくれていること、他に類を見ない豊かな表現力と無垢で透明で力強くてセクシーな声で歌ってくれているだけで充分なのです。

 島津亜矢が自身のブログに書いています。
「今日紅白歌合戦の発表がありました。みなさんもうご存知だと思いますが、今年も想いかなわず、ごめんなさい。みなさんに、こんなにお力をいただいているのに、その力を最後に結びつけるのは私です、私の力が、想いが及ばなかったことに、悔しくて、悔しくて情けないです。本当にすみません。でも、歌手として、人間として、今年は新しい道、世界を見せていただいて本当に充実した一日、一日を過ごせていただいております。人間として、歌手として、もっともっと努力を重ね、磨き、成長していけるよう頑張ってまいります。みなさんに、毎年悔しい思いをさせていること、本当にごめんなさい。負けません!くじけません!絶対負けません!私を信じてください。これからも心からよろしくお願いします。」

 わたしはこの言葉を読んで、島津亜矢自身、演歌歌手である以上は紅白に出演したいと思うのはあたりまえなのだと思う以上に、ファンの期待に応えられなくて申し訳ないという思いをひしひしと感じてしまいました。とても痛々しく、こちらの方が申し訳ないと心苦しく思いました。そして…、島津亜矢の美しくやさしい心がわたしたちと共にあることがとてもうれしくもあります。
 今でも紅白に出ることで人気が出るという話も聞きますが、島津亜矢の人気はそんなものとはまったくちがいますし、確かに興行的には実入りが多くなり、島津亜矢チームにとって紅白に出る方がいいのでしょうが、ライブから発信する島津亜矢の音楽活動は歌手本来の姿で、歌を必要とするひとにこそ届く歌を歌いつづける彼女のステージは、紅白をはるかにしのぐものだと思います。
 思えばひとは声にならない声を心にひびかせ、もうひとりのひとの心に届けようとして歌うことをおぼえたと言います。島津亜矢は、そのたったひとりひとの心に届けることができる歌を歌える歌手であることは、ファンの方々のみならずたくさんのひとたちが認めるところです。
 ですから島津亜矢さん、そんなにあやまらないでください。あなたをあやまらせるすべてのものとわたしたちは対峙し、たたかうことを喜びとしています。
 余談ですが、村上春樹は芥川賞を受賞しないまま世界に無数の読者を持ち、いまやノーベル賞に何度もノミネートされています。村上春樹の世界が文壇の牙城とも言える芥川賞の枠組みにはまらず、ある意味文学のジャンルにすらはまらないとても刺激的な冒険であるため、当時の選考委員の間ではアメリカ文学をまねた安っぽいものに思えたといいます。このギャップは今でもあり、「あんな薄っぺらいスタイリッシュなだけの小説がなぜ世界の若者に圧倒的に支持されるのか」と論争になっています。
 島津亜矢さん、あなたの歌の世界もそういう運命にあるとわたしは思います。こじんまりしていないあなたの歌を受け入れられない多くのひとびとがいるかもしれませんが、それ以上に多くのひとびとがあなたの歌を必要としていると信じています。
 あなたとまだ出会っていないそのひとたちとともに、わたしもまた共に歩き、共に走り、共に歌いたいと思います。

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