ホーム > 2011年11月

2011.11.29 Tue 島津亜矢はどん欲な「歌の狩人」

 今晩7時半からのNHKチャリティコンサートに島津亜矢が出演し、「元禄名槍譜 俵星玄蕃」を歌いました。
 この放送の収録日は10月17日で、彼女が倒れた2週間前でしたが、やはり少し声の調子が良くないと感じました。声の調子が悪い時は高い声や声を張り上げる時はなんとかなるのですが、低い声や小さな声が出にくくなるといわれますが、彼女の場合は出てはいるのですが、心なしか雑音が入っていたように思います。彼女の声はいつもならもっと透き通った声だと思うのですが…。
 それでも、さすがというか、このむずかしい歌をていねいに、かつドラマティックに歌い上げる彼女はほんとうにすばらしい歌手だと思います。三波春夫がつくり上げた歌謡浪曲の世界をひきつぎ、後世までも残そうとする歌手は島津亜矢以外にはいないでしょう。
 三波春夫が偉大な歌手であったがゆえに、他のカバー曲以上に本家と比較されてしまうこんな割の悪いことに挑戦できるのは、彼女がどん欲な「歌の狩人」で、歌手としての冒険をいとわない人であることと、またそれを支える天賦の声と完璧な歌唱力と、名作歌謡劇場で鍛え上げた演劇性を持ち合わせているからでしょう。
 ですから、わたしは(勘違いかも知れませんが)声の調子が気になって心配で見ていられない気持ちがありましたが、はじめて彼女の歌を聴いたひとはきっと満足してくれたのではないかと思います。「相棒」の杉下右京ではないですが、「こまかいことが気になるのがわたしのわるい癖」で、そんなことを考えず彼女の歌をもっと楽しんだらよかったのにと少し後悔しています。

 再開されたコンサートの感想をファンサイトで読む限り、元気になったみたいで安心しましたが、それでもいままで何人もキラ星のような素晴らしい声を持っていた歌手の声が出なくなっていくのを聴くたびに、ついつい心配になるのです。
 もちろん、デビュー当時はともかく最近はこぶしやうなりをほとんど使わず、ナチュラルな声でみごとに「演歌」を歌いあげる歌手は、彼女以外にいないと思います。ですから、今のような発声であるかぎり、のどに負担をかけないで歌い続けられるのではないかと思います。
 そうですよね。よけいな心配をしないで島津亜矢のファンとして彼女を見守り、応援しつづけたいとあらためて思いました。

 12月28日におあずけになった梅田芸術劇場の舞台はとても楽しみです。なにしろ7月以来のライブですし、彼女はこの半年で一段と大人の女性になったような気がします。まだ彼女のDVDをすべて買いきってないのですが、この半年は彼女がまだ30代でぴちぴちしていた頃の姿を見つづけてきましたので、よけいにそう感じるのかもしれません。
 けれども、もしかすると阿久悠の歌を歌ったことで彼女が変わったような気もするのです。
 阿久悠はいつもその時代の新しい女性像をつくり、彼女たちの新しい恋とその終わりを表現しつづけた作詞家、小説家でした。今回のアルバムに取り上げられた遺作の歌詞にもそれぞれ違った人生を送ってきた女性が登場し、いまをはげしく求める恋、過ぎ去った日々をかみしめる恋が綴られています。
 島津亜矢は彼女たちひとりひとりの恋を物語り、心のひだをみごとに歌いきることで、新しい女性像を自分のものにしたのかもしれません。




web拍手 by FC2
関連記事