ホーム > 障害者事業所制度

2011.10.19 Wed 箕面の社会的雇用制度が読売新聞に紹介されました。

 10月18日の読売新聞夕刊に箕面の社会的雇用制度と豊能障害者労働センターが大きく紹介されました。NHKの「きらっと生きる」と朝日新聞でも大きく取り上げられましたが、一連の報道には自立支援法の廃止に伴う障害者総合福祉法制定のための障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において、同部会の委員である箕面市長の提案により、箕面の社会的雇用制度を国の制度とするかどうかが検討されていることが背景にあります。
 このブログでも書いてきましたが、箕面の社会的雇用制度を国の制度にするべきだという箕面市長の提案はまったく同感です。
豊能障害者労働センターが活動を深めて行くほど、この制度のもとでは生活保護を必要としないか、必要としても保護費が減額され、またリサイクル事業の広がりによる5つの店舗と2つの倉庫の家賃支払い、所得を得た障害者スタッフの消費と、どれをとっても直接もしくは間接的に国の福祉コストの軽減と税金という収入増が実現します。
箕面市が障害者の生活と労働を確立するために投入する資金が国の生活保護費を減らすだけでなく、そこから生まれる経済的な利益までも国に吸い上げられる結果となる矛盾を解決するためには、この制度を国の制度にする以外にはありません。さらに、この制度が国の制度になることにより、一般企業への就労をこばまれてしまう障害者が福祉的就労に押し込められ、経済的自立が進まない積年の課題の解決の一つとしても有意義なことです。

 朝日新聞もそうでしたが、今回の読売新聞の記事はこの制度のことをきっちりととらえていて、わかりやすい内容でした。
 一般就労が困難な障害者が3割以上いることや、中見出しにも大きく書かれていますが、障害者が経営に参加していること、そして労働保険に加入していることなどが制度の対象になります。そして、図で説明されているのですが、一般企業への就労でもなく福祉的就労(作業所、授産施設など、生きがいづくりや訓練的な側面が多い)でもない、中間的就労の場として社会的雇用の場はあり、障害者と健常者が対等な立場で最低賃金を保障する場として紹介されています。
 その具体的な場として、豊能障害者労働センターのことがとてもくわしく書かれていて、ぜひみなさんにも読んでいただきたいと思います。

 このブログでも書きましたが、箕面市長はこの提案が通らなければ、この制度もこれからも箕面市独自に継続することが困難であるとブログに書いていますが、わたしはこの制度が健全者の労働市場にも適用すれば、障害者に限らず就労の困難な人々のための画期的な制度としてとてもすばらしいものになると思っています。
 震災以後、被災地をふくめて雇用政策をどうすすめていくのかが問題となる中、アメリカウール街から世界中に広がる反格差社会デモ、ヨーロッパの経済問題と、グローバル化によりわたしたちの日常にすぐ跳ね返ってくる世界の経済危機の中で、この箕面市の制度の底流に流れ、豊能障害者労働センターが具現化している、「そんなに大きな収益がなくてもみんなで助け合って働き、生きていける社会」へのチャレンジは、いま世界中に散在しているようにわたしは思うのです。

2011年10月18日 読売新聞夕刊
web拍手 by FC2

2011.09.06 Tue 箕面市の社会的雇用は「参加の平等」

 台風12号に被災されたみなさんに、心よりお見舞い申し上げます。

 稲葉振一郎・立岩真也「所有と国家のゆくえ」に関して4つの記事を書きましたが、ここでさらに、この議論と箕面市の社会的雇用制度との関係を付け加えたいと思います。
 二人の議論での「結果の平等」としての、最後のセーフティネットが生活保護だと思います。厚生労働省の福祉行政報告例によると、生活保護所帯数は1980年の746,997世帯から2010年12月には1,435,155世帯と、約2倍になっていて、生活保護受給者数は200万人となっています。支給総額も2009年には3兆円を越えていて、震災以後さらに長期にわたって増えることが予想されています。
 震災の影響もあり、企業がますます海外に生産拠点を移そうとする中で、今後被災地の復興需要に期待されるものの、雇用の確保は短期的にも長期的にもとても大きな問題となっています。雇用が確保されなければ、最終的には生活保護に依存するしかなくなります。一方で国の財政が破たん寸前にまで追い込まれている現実から、支出の削減の先に増税ありきかが政治問題となっています。
 ともあれ、これからの支出は対費用効果がきびしく検討されるべきだということは、わたしたちがかねてより主張してきたことでした。
 わたしたちと箕面市が共同でつくり、育ててきたと言える社会的雇用制度は、「機会の平等」と「結果の平等」の間に、「参加の平等」という理念をかかげ、従来は在宅か収入の伴わない福祉的就労の場に行かざるを得なかった重度といわれる障害者の労働への参加を支援する画期的なものと自負しています。この制度は一般就労と福祉的就労の谷間を埋める制度とされていますが、実際の要綱を見ると、障害者の経営参加が義務付けられ、また障害者の生きる権利を市民に啓発することも義務付けられています。
 この制度をつくるにあたってそのモデルになった豊能障害者労働センターでは障害者スタッフはすべて経営会議に参加する権利をもっているだけでなく、7つあるお店の障害者スタッフはその経営に参加しています。
 立岩さんたちの議論の中ですら、たくさんできるひと、少ししかできないひと、まったくできないひと、という分け方で労働を語っていますが、わたしたちの現場ではそんなわけ方自体がとてもナンセンスで、仕事はもともと助け合ってするもので、だれかとだれかを比較することなどは無意味なのです。
 ですから、これもよく言われる生産性とか経営成果とか対費用効果のとらえかたも、一般企業とはまったくちがいます。たとえば一般企業では人件費はコストで、そのコストに対しての経営成果から対費用効果を計算します。それに対してわたしたちは、人件費とは障害者スタッフが獲得できた経営成果で、たいせつな利益と考えています。
 つまり、まず第一に障害者の人件費を生み出すために豊能障害者労働センターは活動していて、どれだけの障害者スタッフがふえつづけ、どれだけの賃金総額を生み出すかが経営成果をはかる物差しなのです。そのことは、箕面市の社会的雇用制度の根幹にかかわることでもあるのです。ですから、箕面の社会的雇用制度はあきらかに従来の福祉制度、保護・指導・訓練とされる福祉制度からは大きく逸脱していて、だからこそ国の制度にはないのです。
 その結果として、この制度の運用による障害者事業所の障害者スタッフは生活保護を受ける必要がなくなります。障害者年金と障害者事業所からの給料で、自立生活できる所得を獲得することができるのです。
 いま、箕面市がこの制度を国の制度にと提案しているのは、とても意味のあることだと思います。現在は箕面市が助成金を支出していますが、そのおかげで国は生活保護費を支払わなくてもいいというねじれ現象になっていますが、国の制度として整合性をすすめると、この制度は健全者の雇用の確保にも適用できる広がりを持つと思います。
 この本の中で稲葉氏が報告していますが、アメリカ合衆国のスラム住民であれば、絶対的な所得水準において大半の発展途上国住民を上回るが、彼らの平均寿命はしばしば途上国のそれを下回るそうです。その意味では単に経済成長によるパイの増大だけではだめで、日本社会における相対的貧困の問題についても湯浅誠氏の指摘にありました。
 箕面市の社会的雇用制度は、北大阪の小さな町の小さな制度ではありますが、これからの日本経済のあり方、社会保障のあり方を考える意味で、「参加の平等」を保障し、支援することで、社会保障としても雇用政策としてもコストパフォーマンスの高い政策として、国の制度に位置づけられることを切に願います。
web拍手 by FC2

2011.06.22 Wed 箕面市の社会的雇用の記事についての確認と説明

 箕面市の社会的雇用についての記事に関して、誤解が生じないように確認と説明をさせていだきます。

 まず最初にこのブログは運営者の個人ブログで、ここでいう「わたしたち」は、豊能障害者労働センターを意味するものではありません。あくまでも「わたし」の派生語として「わたしたち」と使用していますので、「わたし」と読んでいただいても差支えがありません。
 このブログの文責は運営者にあります。

 つぎに、運営費のところで健全者の給料が低いといいましたが、正確にいうと、社会的雇用の場での障害者の労働、行動を保障するための介護支援は必要で、それが生活支援サービスにくらべてあまりにも少ないのではないかという意味です。制度的には「職務遂行援助者」に対する支援の中に、「介護サービス」がまったく入らず、一般企業と同じ扱いになっていて、社会的雇用の場は一般企業への就労を拒まれるひとたちの就労の場であるなら、当然「介護」をふくめたものとして位置づけられなければならないのではないかと思うのです。

以上です。
web拍手 by FC2

2011.06.21 Tue 箕面の冒険 障害者の社会的雇用

最初の記事に加筆修正しました。(6月23日)

 昨日6月20日(月曜日)の夜、NHK(Eテレ)「福祉ネットワーク」で「障害者の“働く”を支える-大阪・箕面市 社会的雇用の取り組み-」が放送され、豊能障害者労働センターの障害者スタッフの活動もたくさん紹介されました。
 2003年まで豊能障害者労働センターで活動し、現在も非常勤スタッフとてかかわらせてもらっているわたしには、ほとんどすべてがなじみのあるものでしたが、ただひとつとてもびっくりしたのが、運営会議の風景でした。事務所が手狭になったため、近くの障害福祉センターの会議室で行われているのですが、その風景は壮観でした。50人以上はいたでしょうか、障害のある人もない人も参加しているこの映像を見て、これが豊能障害者労働センターの運営を話し合う最高議決機関であると思われた方は数少ないのではないでしょうか。
 福祉施設などではおそらくどんなに人数が多くてもその会議の場には障害者はいないと思います。障害のあるひともないひとも、共に運営を担っていることが一目でわかる風景でした。放送では、箕面市の社会的雇用制度では、障害者の職種開拓、障害者スタッフの運営参加、最低賃金の保障という3つの柱を紹介していて、この会議の場面で障害者の運営参加を説明していました。
 箕面市の社会的雇用制度は一般企業にも福祉的就労の場(いわゆる授産施設、今はB型就労継続支援事業)にも行かない障害者が半分以上にもなる現状を変える第三の就労の場として箕面市が約20年間取り組んできた政策で、国の制度とするように提案しているものです。
 その中心となる賃金保障は、本来は国の障害者就労政策として取り組むべき障害者の所得保障を一市町村が福祉政策として制度化したもので、一般企業より少し賃金が少ないか、場合によっては同等の賃金を保障し、障害者が経営に参加している福祉事業所に賃金補填する全国でもめずらしい画期的な政策です。
 放送ではいろいろなお店でいきいき働く障害者の姿とともに、いままで福祉的就労の場(授産施設)で13000円の工賃をもらっていたひとりの障害者の給料が8万円をこえていることや、もらった給料で買い物をしたり、母親にお茶代を奢るところも映していました。
 豊能障害者労働センターは30年の長い年月をかけてこの制度の設立と充実に力を注いできました。最初は助成金などはまったくないまま、街頭募金などで得たお金をみんなで分け合っていましたが、いまでも7つのお店と通信販売と社会的雇用制度による助成金で入るお金をみんなで分け合っています。
 そして、放送は国の障がい者制度改革推進会議での箕面市長の発言の場面などを映し、この制度が福祉予算の削減につながるという箕面市の提案を紹介しました。
 この制度は豊能障害者労働センターの障害者を中心にした当事者の強い要望に基づいてできたこともあり、近隣の市町村にも波及しないまま箕面市単独で続けてきて、とくに昨今は「国にも大阪府にもない制度にお金をつぎ込むのはおかしい」と市議会や市の財政セクションから責められるのを恐れ、「こっそり」と運営してきた経緯がありました。
 今の市長がガラス張りの市政方針のもと、この制度を正しく市民に明らかにし、国に提案していることはほんとうにすばらしいことだと思います。
 その上で、わたしは箕面市の今回の提案の中で目玉としている「コスト削減」の論理には、大きなまちがいがあると指摘せざるをえません。
 提案書の中で、10万人の非就労の障害者が社会的雇用の場で働くと、年間430億円の社会的コストを削減できるとあります。放送では豊能障害者労働センターの代表・小泉祥一さんを例にあげて、福祉的就労の場合より月12万円福祉コストが削減できると主張しています。国にこの制度を創設させるために、コストが下がることは特に今の時流にあったアピールになるのかも知れません。
 しかしながら、福祉的就労の場合の職員給料などの運営管理費や生活支援のために派遣するヘルパーの人件費などに対して、社会的雇用の場合のサポートに対する保障は著しく少なく、はっきり言えばここでいうコスト削減は運営管理費の尋常ならぬ低さによって実現したものであるとわたしは思います。
 箕面市にそのことを指摘すると、おそらく「事業所と言う以上、運営管理費は事業所でねん出してください」というでしょう。もっともだと思われるかも知れませんが、生活支援なら充分ではないにしても保障されている障害者の介護は社会的雇用の場では保障されていません。その結果、生活支援のヘルパーの人件費や福祉的就労の場の職員の人件費に対する保障など生活支援の場に適用される運営管理費にくらべて、社会的雇用の場に対する運営管理費は著しく少ないのです。
 共に働く健全者スタッフの所得保障もふくめて、運営管理費を福祉的就労の場や生活支援サービスの運営管理費まで引き上げてから、福祉コストの比較をするべきです。箕面市が声高に主張する社会的コストの削減が、実は社会的雇用の場の運営管理費の異常な低さ、たとえば豊能障害者労働センターのスタッフで月12万5000円、厚生年金にも入れない劣悪な待遇による貧困を踏み台にしてしか成り立たないのなら、箕面市の主張には大きなごまかしがあり、胸を張って提案できるものではないはずです。
 むしろ箕面市は、本来国が多くの責任を持つ障害者の就労を市町村行政としては精いっぱいすすめてきたことを自負し、この制度をより安定した国の政策として、そして他の自治体にも波及する政策として、運営管理費の増額をふくむ充実した社会的雇用政策を提案するべきなのではないでしょうか。現にこの提案書には社会的雇用の課題とともに社会的雇用政策がもたらす可能性と、これからの障害者福祉の変革もまた提示されています。
 しかしながら、運営管理費の低さから箕面市の社会的雇用制度は風前のともしびで、この制度のもとで活動してきた2つの事業所がつづけてB型就労継続支援事業(授産施設)への移行を検討しているところです。また今年度で大阪府の作業所制度が終了するのに伴い、障害者の手に少しで多く給料を乗せようとしてきた箕面市独自の作業所もB型就労継続支援事業(授産施設)の方向に進んでいて、かろうじて一か所が社会的雇用の場に移りたいと表明しているのみです。
 もともとこの制度を要求した豊能障害者労働センターは、当時の授産施設で一緒に仕事をしているのに、健全者職員は指導員として給料を得て、障害者はそのころで月1万円にも満たない工賃しか手に乗らないのはおかしいのではないか。障害者も健全者も給料を分けあって、みんなで助け合って暮らしていこうという考えで経営を始めました。その考え方はまっとうだと思うのですが、その当時も今も、障害者を保護訓練指導する健全者の給料やその他の管理費としてしか福祉助成金は出ないだけでなく、そのお金を障害者に配ると違反行為となると知って、豊能障害者労働センターは障害者の人権を侵害しているともいえるそんな福祉の金なんかいらないと、助成金なしで活動をはじめたのでした。
 乱暴な提案をすれば、今の福祉施設でも人件費をすべて障害のあるひともないひともみんなで分け合えば、箕面の社会的雇用の現場によく似た運営形態になるのです。
 それでは、豊能障害者労働センターなど社会的雇用の場の人件費がまっとうになり、少なくとも箕面市の主張するコスト削減効果がなくなれば、社会的雇用制度は無意味なものになるのでしょうか。
 箕面市長はブログで「結果として、今は国の支援なしに箕面市単独で制度を維持し続けている状態。このことは制度維持力の脆弱さ・・・すなわち箕面市財政の逼迫とともに、いずれ同制度が縮小・廃止とならざるを得ない厳しい現実と直結しています。いくら素晴らしい制度であっても、他の福祉制度には国・府の支援が入ってくるため、箕面市単独の税支出額を比較すると、この箕面市独自の制度だけが大幅に不均衡な支出となり突出する状態。これでは、いずれは持続不能となることが目に見えています。」と述べています。
 国から支援がなければ廃止するというなら、結局はこの独自制度を持て余して、国にも負担してほしいというためだけに提案しているという市長の本音が見えます。
 市長もこの提案の実務を担当したひとも、まったくこの制度のことがわかっていないことに失望しました。
さて、それではわたしたちはこの制度をどう評価しているのかを書いてみたいと思いますが、長くなりますので、いったんここまでを掲載したいと思います。
つづけてこの続きを書きたいと思います。

「社会的雇用」による障害者の自立支援(箕面市提案)
国の障害者制度改革にあわせて~箕面市から制度提案 36歳の日誌・倉田哲郎(箕面市長)のブログ
web拍手 by FC2

2011.06.21 Tue 箕面市の冒険 障害者の社会的雇用2

 前回の続きですが、箕面市の社会的雇用におけるコストのとらえ方がちがいます。市長の提案にあるコストは福祉サービスレベルにしかありません。
 社会的雇用は一般企業への就労をこばまれる障害者の働く場と所得を保障する制度のひとつなのですから、わたしたちなら福祉的就労の場の平均工賃と社会的雇用の場の平均賃金を比較し、それぞれのコストに対して障害者の所得がどれだけあるのか費用対効果を比べます。たとえ福祉的就労の場と同じ人件費になったとしても、障害者の手に乗るお金は圧倒的に社会的雇用の場の方が多く、費用対効果は高いのです。さらに、非就労の障害者の場合は所得ゼロなのですから、費用対効果は天文学的といってもいいでしょう。

 第二に、もし国がこの制度を採用しなければ、現在は多少制度が変わったとはいえ、就労政策は国の事業だから、箕面市は本来しなくてよいと市長は思っているのかもしれません。けれどもそれは大間違いなのです。いくら国が負担するとはいえ、箕面市は障害者市民への福祉サービスを担っています。たとえば、現実問題として家族と同居している障害者はたくさんいます。B型就労継続支援事業(授産施設)では生活できるだけのお金は手に入りません。彼女、彼らに在宅サービスや日中活動に対するサービスを提供し続けたとしても、自立へのプロセスとそのサービスを提供しなければ結局は入所施設などに行かざるをえません。それで箕面市民へのサービスを提供したことになるのでしょうか。
 本来どんな福祉サービスも、そのひとの未来へとつながっていくために提供されるべきで、そのひとが結局は箕面と言う街で暮らせなくなるために提供するのは無駄遣いではないでしょうか。
 それでは、自立生活をしている障害者の場合はどうでしょうか。自立生活をしている障害者への福祉サービスは未来へとつながる活きたサービスにちがいありません。しかしながら福祉サービスは社会的雇用をのぞいて所得の保障はしません。ですから、自立生活をすすめるには一般企業で働くか社会的雇用の場で働くか生活保護か、という選択肢になります。ここでは一般企業からの就労をこばまれてしまう障害者の自立生活を保障しようというもので、社会的雇用の場に行かない場合は生活保護をとるしかありません。言い換えれば生活保護を取らなくても箕面市の社会的雇用制度は障害者の自立を保障できるのです。
 放送で審議会の委員が「社会的雇用の場で給料をとるひとが障害者年金ももらうことに反発がないのか」という疑問をなげていましたが、まったく話になりません。その委員は障害者が自立生活を送ることの経済的社会的効果を想像できないのでしょう。
 箕面市長は箕面市独自の制度のおかげで自立障害者への生活保護費が減り、国の福祉コストが削減されている矛盾を強く国に主張しなければならないのではないでしょうか。

 第三に、箕面市の社会的雇用制度の根幹をなすものとして、障害者が運営を担うということです。このことの意義は障害者の働きがいや人権の視点など箕面市の提案の中でもきっちりととらえられているのですが、それに加えて、障害者が運営を担うということの中に、一般企業への就労が拒まれた障害者が、既存の福祉サービスだけにたよるのではなく、自ら業を起こす、つまり「起業家」として一般経済とはちがう「助け合い経済」の担い手として地域経済を支えるということです。一般に生活支援の事業所とはちがい、お店や移動販売の展開によってお店や倉庫の家主、地主の所得が生まれ、仕入れ、運搬、宣伝、販売によるお金の流れと地域経済の活性化の担い手として、障害者が従事する経済的、社会的な波及効果は計りしれないのではないでしょうか。
 実は、社会的雇用制度によって障害者が運営をにない、市民と直接お金と共に心のやり取りをすすめることによる「助け合い経済」の購買層の発掘、障害者市民事業の市場の発掘効果がその事業所の経営を上向かせ、福祉的就労の場では実現しない事業拡大と事業経営を現実のものにする結果、自らの所得を安定させるだけでなく、障害者が健全者の給料もつくりだしているのです。
 さらに、たとえばリサイクル事業においては市民からのリサイクル商品の提供にはじまり、それらを仕分けし、値つけをし、それを各店舗に展示し、販売するプロセスのどの分野においても障害者スタッフがその役割を果たしながら箕面の街をたがやすことでつくりだす売り上げ金は3000万円にせまっています。もしそのお金を助成金として拠出することはできないでしょう。その経営成果はリサイクル事業だけなく、食堂、福祉ショップ、通信販売事業、今年は被災障害者の救援金としましたが、年に一度の大バザーなど、どの事業においても濃淡はありますが、社会的雇用制度がなければ決して成し得ない経営成果がたしかなものとして育っているのです。

 上記にしめしたように、箕面市の社会的雇用制度は、箕面市の提案とは比べられないコストパフォーマンスの高さを持っているとわたしたちは主張していますし、そのことは多くの市民が共有していることでもあるのです。

 結局、この制度の最大の成果は、助成金を「投資」として運営できることだと思います。そうすることで、同じ100万円がただ単に障害者の生活に消費されるだけでなく、その100万円を事業に投資することで市民と出会い、市民が「もうひとつの税金」としてその事業を応援することで、障害者の社会的雇用をさらに進めるスパイラル効果があるのです。
 この問題になるとどうしても心がはやり、冷静に伝えられない自分が情けないのですが、放送では課題があるにしても新しい方向性を持った制度として描かれていますが、実は制度自体がなくなるかも知れない危ない所にあることをなんとしても伝えたいと思いました。そして、箕面市長に強く言いたい。あなたはもしかするとこの制度を発展させて歴史に残る市長になるかもしれないですが、反対に豊能障害者労働センターの設立時の30年前にもどしてしまうことで歴史に残る市長になるかも知れないのです。
 国がしなければやめてしまうというなら、もっとも暮しに近い市町村の首長はなんのために存在するのでしょう。この宝物の制度を実現しない国を相手に一緒にたたかいませんかと、なぜわたしたちに言わないのですか?


「社会的雇用」による障害者の自立支援(箕面市提案)
国の障害者制度改革にあわせて~箕面市から制度提案 36歳の日誌・倉田哲郎(箕面市長)のブログ
web拍手 by FC2